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元いじめっ子の話

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「私と話さないで……」

私は隼くんをにらみつけながらそう言った。


私は当時、クラスの中でも目立たない方だった。

隼くんが男子からイジメられていることは知ってたけど、いつも遠くから見て見ぬふりするだけだった。

もし、地味で目立たない私が隼くんと一緒にいるところを見られたら…

私も確実にイジメっ子たちに目をつけられてしまうだろう。

それだけは、避けたかった。


「ごめん……」


そんな私の意図を汲んでくれたのか、隼くんは少し申し訳なさそうに手を引いた。


「でも……ここから学校までの間、急な上り坂もあるし…最近は日暮れも早いから暗くなってきてるし、一人だと危ないよ…」


隼くんは食い下がらずに私の方を心配そうに見てくる。

「……いいから。あんたに関係ないでしょ」

「関係はないかもしれないけど…色々と危ないよ」


隼くんが何度も言う「危ない」という発言。

それは、最近ホームルームの時間に、毎日先生が「ここら辺でガラの悪い人たちが出没するから気をつけなさい」と言っていたからなのだろう。

実際、私の友達や4年生の幼馴染の女の子が、ガラの悪い中高生に絡まれたという話も聞いたことはあった。



「大丈夫だから。じゃ」

それでも私は隼くんを押しのけて学校の方へ向かった。

「ちょっと…渚さん!」

隼くんはまだ私を追いかけてくる。


「あのさぁ、ついてこないでって言ってるのが分からないの??!」

私は足を止めて隼くんの方を振り向き、感じていたイライラをぶつけた。


「あんたと一緒にいるところを誰かに見られるのが一番迷惑。そもそも……あんたに何ができるの?私のこと守れるの?」

私はこのとき、本当に最低なことを言った。




「教室では、一番弱いくせに……!」


隼くんの目が、一瞬だけ動いていた。
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