上 下
143 / 213
元いじめっ子の話

5

しおりを挟む
(はぁーー、なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ……)


小学6年生の夏。

私は、学校で月に一回だけ活動する調理クラブというものに所属していた。

調理クラブは1番人気のクラブで、4~6年生を全部合わせると60人くらいいた。

だからそれぞれ7~8人ずつの班に分かれて班ごとに作るものを決めて調理する。

私たちの班は、明日の活動で冷やし中華を作ることにしていた。

基本的に材料はそれぞれ担当を決め、家の人と買い物に行って持ち寄るするんだけど、私たちの班は家庭の事情的にそれが難しい子が多い。

だから私が毎回前日に全て買って揃えるハメになっていたのだ。



(あー……麺とかめっちゃ重いし、トマトとかキュウリとか野菜系が多いのもしんどいわ…)

そんな文句を心の中で唱えながら、気温30度を超える暑い道のりを1人体を引きずるようにして歩いていた。


私たちのように活動前に物を揃える班は、前日に学校の調理室の冷蔵庫に入れておいてもいいことになっていた。

だから私はこのときも、学校まで向かって歩いていた。


その時……



「……渚さん?」


声の方を振り向くと、そこには隼くんがランドセルを背負って立っていた。


「どうしたの?その荷物…すごい重そうだけど…」

私の両手を塞ぐビニール袋を見て、隼くんが心配そうに近寄ってくる。

「……明日の調理クラブの材料」

ぶっきらぼうに答える私。

「一人じゃこんなに重いの…大変だよね?一緒に学校まで持っていくよ!」

隼くんはそう言って私の手からビニール袋の重い方を持ち上げようとした。


「…いいからっ!やめて!!」


私は隼くんの手を払い除けるようにして拒んた。

驚いて私を見る隼くんを、思いっきり睨みつけてやった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

聖也と千尋の深い事情

フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。 取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

青春日記~禁断の恋だとしても、忘れられない日常を綴ります~

いちごみるく
青春
主人公の隼は、ふと見たニュースで教師と生徒の不適切な関係が明るみになった不祥事を知る。 世間的には厳しくなっていく一方であるそのような関係性。 しかし、隼は15年前に恋していた25歳の国語教師・菜摘のことを思い出す。 小学生と中学の教師という、決して許されざる恋。 二人ともその恋がもたらす苦汁をこれでもかというほど味わいながらも、想いが止むことはなかった。 しかしそんな二人は、ある日、唐突に引き裂かれる…… 抗えない運命に絶望していた時、隼は菜摘の日記の存在を知る。 そこに描かれていたのは……?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...