その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

いちごみるく

文字の大きさ
上 下
123 / 213
7人目:とある刑事の話

13

しおりを挟む
「僕は、あなたが嫌いです。……人間なので、誰もが失敗したり意図せず罪を犯してしまうこともあると思います。……そこで反省したり、罪を認めたならば許せます。僕も沢山失敗するので。………けど……反省もせずに嘘や罪を重ねながら、人を貶めて懐柔して自分の意のままにし、煙に巻こうとするやり方は……卑怯です。はっきり言って最低です」


醍醐の溢れる涙からは、抑えられない俺への怒りの感情が滲んでいた。


俺を睨みつける目や怒りに震える唇は、これまでどんな聴取の際にも見たことのない激しい感情を表していた。

今まで色んな事件に巻き込まれた際にも、ここまでハッキリとその感情を示していることはなかった。


俺は、これまで醍醐を犯し、苦しめ、傷つけてきたどんな奴らよりも、醍醐に嫌われたのだ。


「……愛莉さんはきっと…道路に飛び込む直前に……自分のしたことを思い出したんだと思います。」


流れる沈黙の中、醍醐が再び口を開く。


「最後に僕の目を見て、『ごめんなさい』と言いました。それしか聞いていないので……あくまで僕の憶測でしかありませんが。きっと僕と菜月さんが体を重ねているのを見て………強いショックを受けて、失くしていた記憶を取り戻したんだと思います」



醍醐の涙は止まることなく、あの日のあの場面へと蘇る。


「愛莉さんも、最後は自分のしたことを認めました。麻友さんもずっと2年間、自分のしてきたことについて悩んで、ちゃんと本当の事を打ち明けてくれました。それなのに、何であなたみたいな大人が……それも、刑事という立場にある人が、最後まで逃げようとするんですか!?」


止まらない醍醐の追及に、俺は耳を塞ぎたくなった。

俺は、どこで間違えたんだろう……


ちゃんと、この件については終わらせたつもりだったのに……




「とりあえず、これを元に我々はこれから動きます。藤井海吏の冤罪に関しては多少の時間がかかりますが……隼くんに対して暴言を吐き人格を貶め精神的苦痛を与えたこと、そして脅迫して相手の嫌がる行為を強いたこと……これらの罪に関しては、すぐに制裁が下ると思いますのでそのおつもりで」

そう言って背を向けて歩き出した弁護士に、醍醐も着いていった。

最後に俺を一瞥した目は、この世で最も穢いものを見るかのような軽蔑の瞳だった。




玄関から出てふとマンションの廊下から外を見ると、既に何台かの車が停まっていた。
恐らく警察に既に連絡が行っていたのだろう。






俺は、これで確実に醍醐のせいで人生が狂わされた……







呆然としながらもそんなことだけを考え、逃げる気にも隠れる気にもならないまま、ただぼんやりと警察が来るのを待っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

健康診断(医療エッセイ)

浅野浩二
現代文学
健康診断をした時のエッセイです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...