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7人目:とある刑事の話

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醍醐隼を藤井海吏の誤認逮捕に関する捜査から遠ざけるには、醍醐を徹底的に壊すしかなかった。


こいつは元々他人の人生を狂わせ、壊しまくってきた男だ。


本人を狂わせてしまったほうが、周りへの影響を考えても、手っ取り早い。


俺の大事な娘まで奪ったこいつを、俺は許せなかった。



「なあ醍醐……」

ベッドの上でグッタリと倒れている醍醐に声をかける。


「お前があの日、菜摘と遊ぶ約束をしなければ、菜摘は死なずに済んだんだよな?」

醍醐の眉間が少し動く。

反応できないだけで、俺の声は届いているのだ。


「お前が菜摘を殺したんだよ?分かるか?」

再び喘鳴が酷くなる。


「愛莉に関しても……あの日、菜月から話を聞いたとき、お前が欲を抑えきれなかったからあんな結末になったんだぞ?」


激しい喘鳴に混じり、時々喘ぐような声が出る。


「今思えば藤井海吏の話だって…何故罪を被ったのか、考えれば分からないか?……藤井はお前に憧れていたと言っている。お前を傷つけるくらいに狂信的にお前を愛していた。つまり……お前のせいで、あいつは罪を被ったんだよ」


再び醍醐の目から涙が零れ落ちる。

軽く首を振ることでしか、俺への意思表示ができない。


「愛莉のためでも佐々木麻友の為でもない……お前に憧れた藤井が、『お前ならああする』と思ったからやったことなんだぞ?」


言っていながらも目の前の醍醐が憎たらしくて仕方ない。

こいつのせいで愛莉は……


「あの日、愛莉はお前の後輩3人がお前の悪口を言っていたのを聞いた。そしてその三人を殺した。愛莉はお前のせいで殺人犯になった。……そしてお前のせいで藤井海吏は自分に酔い、愛莉の罪を着た。その結果、愛莉は罪を免れた。それなのに……!!」


内に溜めてきた感情は爆発寸前。

いつ醍醐に手を出してもおかしくない。

そんな自分の手を、俺は必死に抑えていた。



「それなのに、お前とまた出会ったせいで、結局愛莉は16年で人生を閉じた……。そのくせ今更藤井だけを救えだと……?ふざけるのも大概にしろ……っ!!」



あの日、藤井海吏が殺人を犯していないということはすぐに分かった。

凶器となったノコギリや部室棟に付いていた指紋や落ちていた髪の毛が、藤井のDNAと一致しなかったからだ。

あの日愛莉は、殺された3人を隣の卓球部部屋に呼び出して、油断させた隙に犯行に至ったのだろう。



だけど俺は、藤井の供述のままに捜査を進めさせた。


色んなものを欺き、嘘を重ね、娘の無罪を作り上げた。


それなのに………



全部こいつのせいで台無しだ。


しかも愛莉を自殺へ追い込んだ上に、俺の不正を見抜いたかのように生意気なことを言う。



愛莉が手にかけたのがあの三人ではなく、こいつだったらよかったのに……



そんなことを思ってしまうくらい、俺は醍醐が許せない。


こんな男……


もう二度と、誰にも恋をさせないように、俺がぶち壊してやりたい。
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