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隠し事JKの話

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「麻友さん………海吏のこと、好きなんだね」


隼くんが再び私の目を捕らえて言う。


だけどその目の色は、さっきみたいな悲しみに溢れたものではなくて、とても淡くて優しい色をしていた。


私は隼くんの問いに、何も言わずに肯定した。

出会ってからずっと仕舞ってきたこの気持ちを、簡単に口にするのは難しかった。


いくら彼氏を作っても、私の心は決まっていた。

他の男の人に揺らぐことすら一度もなかった。


だけど………



「でも、海吏くんは隼くんのことしか見てなかったからさ」


笑顔を作って言ったつもりだけど、きっと上手く笑えてはいないと思う。


分かりきってはいたことだけど、いざ自分の口から言うとなるとやっぱり辛かった。


「海吏くんとIns○agr○mで繋がってまた話すようになってから、私はすぐに気づいた。……海吏くんは、隼くんに対して普通の先輩以上の気持ちを抱いてるんだ、ってね」


愛莉のストーカー行為に本気で怒ってたこと。

そしてその行為を止められなかった私に対しても怒ってくれたこと。


それだけでも、海吏くんがいかに隼くんを大切に思っているかが伝わってきた。


「海吏くんは、隼くんがいるからこの学校にいられるって言ってた。自分の人生の支えだって。……私は彼にとってそうはなれなかった。だから、隼くんのことが……ずっと羨ましかったんだよ」



隼くんは驚いたような泣きそうな顔をしながら私の話を聞いてくれている。


愛莉繋がりで隼くんと海吏くんの関係を知ってから、私は隼くんを羨んでいた。

「それに海吏くん、あの日……愛莉の罪を被った日、今まで見たこともないくらい生き生きとしてたの。あの顔を見て……海吏くんはきっと、私と愛莉を守りたいというよりも、自分の人生で初めて人のために動いてるっていうことに酔っていたんだなって思った」


海吏くんは、隼くんのおかげでクソみたいな日常が少しずつ楽しくなってきたと言っていた。

そして自分には何も無いと思っていたけど、隼くんがくれる言葉が、海吏くんの自信になっていった、と。


だからあの日も、海吏くんは自分にできることをしてみたかったのかなと思う。


誰かの犠牲になって自分のつまらない人生を終わらせる…

そのことが、海吏くんにとっての最高の自己陶酔のあり方だったんだろう。


少なくとも私は、海吏くんをそこまで動かせなかった。

へし折られたプライドや踏みつぶされた自信を、持ち上げることはできなかった。

海吏くんのために、私の知ってる彼のいいところを素直に伝えてあげられればよかったんだ。

だけど幼馴染という二人の間に流れた長い時間が、互いを素直に褒め合うという行為を難しいものにしていた。


「でも……今、麻友さんは海吏を助けるために勇気を出して話してくれたよね。一番大事なところで俺は海吏を信じきれなかった。だけど麻友さんは海吏のために動いてくれた。俺なんかより、麻友さんの方がずっと海吏の救いになってると思うよ」


隼くんの真っ直ぐな視線を浴びる。

そこから紡ぎ出す言葉は、私の耳にあまりにも優しく響く。


私が、海吏くんのためになってるのか……



でも結局あの日以降、海吏くんの言う通り、私は海吏くんを犯罪者に仕立て上げた。

そこから2年間ずっと、海吏くんは殺人鬼として孤独の中で生きている。


その2年間は、間違いなく私が作り出したもの。

かけがえのない2年という年月を、私のせいで苦しみと孤独の中で過ごさせてしまった。



だから……



「警察に行って本当の事を話そう。私が犯した罪も、正直に話したい。少しでも早く、海吏くんを助けたいから……」


私は今まで躊躇ってきたことを後悔するくらい堅い気持ちになっていた。


私の言葉を聞いた隼くんは、優しく頷いてくれた。

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