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隠し事JKの話
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「あれ……麻友?なんでここにいるの?」
海吏くんが自転車に跨ろうとした瞬間、部室棟から出てきた私は彼に見つかった。
「……はぁー……あのさあ……」
冷たい目をして溜息をつきながら、海吏くんが自転車から降りて私に近づいてきた。
「いや……違うんだよこれは……」
「違くないだろ。残念だけど今日は隼先輩はしばらく来ないよ。コーチたちとインドア大会について話してるから、かなり長くなると思う。…早く帰れよ」
私は海吏くんにここまでストーカーとして来ていたことをすぐに察せられ、怒ったように帰れと言われてしまった。
「例のストーカーは?一緒じゃないの?」
若干軽蔑するような目を向けながら聞いてきた。
「なんか、部室にいる2年生の中に知り合いがいるから話してくるって」
「へー。それ、俺に頼んだみたいなことをそいつにも頼むつもりなんじゃないの?」
「私もそう思ったからそれだけはヤメてって約束してきた」
「約束して聞くような奴なら部室まで忍び込んだりしないだろ……」
海吏くんの呆れたような溜息混じりの声が私に届く。
…やっぱり耳が痛いほど正論しか言わない……
「そんなに心配なら見てきたら?」
「はあ?なんで俺が。行くとしたら麻友の方だろ」
「私はもう帰りたいの!数時間もこんな寒いところにいたら流石に風邪ひくわ」
「当たり前だろ。そんなこと言うならその友達止めろよな」
「私だって止めてるんだよ??なのに…」
「てか、なんでわざわざ麻友も同行してんの?同じストーカーだと思われるよ?」
「それは……」
海吏くんの追究に答えることが出来ず、黙ってしまった。
確かに、私は何でわざわざここまでして愛莉に付き合ってるんだっけ…?
「それは……私があの子を止めることで、隼くんや海吏くんに実害が及ばないようにするためだよ」
今まではこの理由で納得できたけど、今日は自分で言いながらも、どこか引っかかるものがあった。
なぜなら……
「1人で背負い込みすぎ。もっと大人とかに頼ったほういいんじゃないの?」
私は、海吏くんの言葉と全く同じ疑問を持っていたからだった。
愛莉を止めるのは、私一人でやるべきことなのか……
だけど周りの大人に相談したら、愛莉との友情が崩れてしまうかもしれない……
そんな葛藤を抱えながらも、見ないふりしてきたのだった。
「……そんなことで崩れる友情なら、俺はいらないけどな。……結局友達より男を取ってるみたいなもんじゃん」
何も言ってないのに、海吏くんがまるで私の心を見透かしたかのように言う。
「…なんで友情崩したくないって思ってることまで分かったの?」
「話聞いてりゃ何となく分かるだろ。」
海吏くんは、昔からそうだ。
他人を見ていないようでよく見ている。
人の気持ちを察するのが得意で、いつも先回りされてしまう。
そして……
「まあ、俺もできるだけ隼先輩のことは守るから。あんまり麻友一人でなんとかしようとか思わないでな」
背が伸びた海吏くんを見上げると、優しい顔で私を見つめていた。
やっぱり海吏くんは、頼りになる……
海吏くんは、中学に入ってから、周りが優秀過ぎて自分がカスにしか思えないとずっと言っていた。
自分よりずっとかっこよくて頭が良くてテニスがうまくて性格も良くてしっかりしてる人たちしかいない、と。
だけど……
私からしたら海吏くんも、十分全部に当てはまっている。
海吏くんの場合、周りのレベルが高すぎて感覚が壊れているだけなんだと思う。
仮に、周りが本当にすごい人たちだらけだとしても……
私に対してたまに見せてくれる優しさは昔と変わらないということが分かっただけで、私は充分嬉しかった。
「ありがとう海吏くん」
私が素直にお礼を言うと、海吏くんは少し照れたように微笑んだ。
海吏くんが自転車に跨ろうとした瞬間、部室棟から出てきた私は彼に見つかった。
「……はぁー……あのさあ……」
冷たい目をして溜息をつきながら、海吏くんが自転車から降りて私に近づいてきた。
「いや……違うんだよこれは……」
「違くないだろ。残念だけど今日は隼先輩はしばらく来ないよ。コーチたちとインドア大会について話してるから、かなり長くなると思う。…早く帰れよ」
私は海吏くんにここまでストーカーとして来ていたことをすぐに察せられ、怒ったように帰れと言われてしまった。
「例のストーカーは?一緒じゃないの?」
若干軽蔑するような目を向けながら聞いてきた。
「なんか、部室にいる2年生の中に知り合いがいるから話してくるって」
「へー。それ、俺に頼んだみたいなことをそいつにも頼むつもりなんじゃないの?」
「私もそう思ったからそれだけはヤメてって約束してきた」
「約束して聞くような奴なら部室まで忍び込んだりしないだろ……」
海吏くんの呆れたような溜息混じりの声が私に届く。
…やっぱり耳が痛いほど正論しか言わない……
「そんなに心配なら見てきたら?」
「はあ?なんで俺が。行くとしたら麻友の方だろ」
「私はもう帰りたいの!数時間もこんな寒いところにいたら流石に風邪ひくわ」
「当たり前だろ。そんなこと言うならその友達止めろよな」
「私だって止めてるんだよ??なのに…」
「てか、なんでわざわざ麻友も同行してんの?同じストーカーだと思われるよ?」
「それは……」
海吏くんの追究に答えることが出来ず、黙ってしまった。
確かに、私は何でわざわざここまでして愛莉に付き合ってるんだっけ…?
「それは……私があの子を止めることで、隼くんや海吏くんに実害が及ばないようにするためだよ」
今まではこの理由で納得できたけど、今日は自分で言いながらも、どこか引っかかるものがあった。
なぜなら……
「1人で背負い込みすぎ。もっと大人とかに頼ったほういいんじゃないの?」
私は、海吏くんの言葉と全く同じ疑問を持っていたからだった。
愛莉を止めるのは、私一人でやるべきことなのか……
だけど周りの大人に相談したら、愛莉との友情が崩れてしまうかもしれない……
そんな葛藤を抱えながらも、見ないふりしてきたのだった。
「……そんなことで崩れる友情なら、俺はいらないけどな。……結局友達より男を取ってるみたいなもんじゃん」
何も言ってないのに、海吏くんがまるで私の心を見透かしたかのように言う。
「…なんで友情崩したくないって思ってることまで分かったの?」
「話聞いてりゃ何となく分かるだろ。」
海吏くんは、昔からそうだ。
他人を見ていないようでよく見ている。
人の気持ちを察するのが得意で、いつも先回りされてしまう。
そして……
「まあ、俺もできるだけ隼先輩のことは守るから。あんまり麻友一人でなんとかしようとか思わないでな」
背が伸びた海吏くんを見上げると、優しい顔で私を見つめていた。
やっぱり海吏くんは、頼りになる……
海吏くんは、中学に入ってから、周りが優秀過ぎて自分がカスにしか思えないとずっと言っていた。
自分よりずっとかっこよくて頭が良くてテニスがうまくて性格も良くてしっかりしてる人たちしかいない、と。
だけど……
私からしたら海吏くんも、十分全部に当てはまっている。
海吏くんの場合、周りのレベルが高すぎて感覚が壊れているだけなんだと思う。
仮に、周りが本当にすごい人たちだらけだとしても……
私に対してたまに見せてくれる優しさは昔と変わらないということが分かっただけで、私は充分嬉しかった。
「ありがとう海吏くん」
私が素直にお礼を言うと、海吏くんは少し照れたように微笑んだ。
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