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隠し事JKの話

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「あ!海吏くんだよ!」


しばらくぼーっとしながら隼くんの登場を待っていると、卓球部の部室のドアの隙間から廊下を覗いていた愛莉が私の方を振り返って言った。


「海吏くん、帰るところだ!…てことは隼くんを待ってたわけではなさそうだね……」


愛莉は相変わらずドアの隙間を覗きながら言う。


「……ん?あれ?戻ってきたよ??」


数秒も経たないうちに、1度部室棟から出た海吏くんが隣の部室に戻ってきたらしかった。


「……海吏くん動いてない」


愛莉は静かにドアを閉め、私に小声でそう伝えた。

「どゆこと?」

「分かんないけど、部室のドアの前で突っ立ってる」

「え……?」

「なんだろ……あ!」


キョロキョロと周りを見渡した愛莉は、部室の窓を開けて突然ベランダへ出て行った。


「ちょっと!愛莉!!」

「多分中での会話が海吏くんにとって入りにくいんだよ!ちょっと聞いてみるね。」


愛莉曰く、テニス部はいつも部活後に窓を開けて換気しているらしい。

ベランダを通じてここの部屋と隣のテニス部の部室は繋がっているから、ベランダに出てしまえば窓を開けたままの隣の部室の会話も聞こえるのだ。

愛莉はたまに、部室に隼くんがいるときはその方法で隣の部室の会話を盗み聞きしていた。


「はぁーったく。ガチのストーカーになってきてるよ……」


今更ながらため息を付いて愛莉の行動を見守っていた。


その時……


「許さない……」


ベランダで、愛莉が小さくそう呟いたのが聞こえた。


「なに?どしたの?」

私の問いかけに愛莉はハッとした表情をして、「なんでもない!」と笑顔になって答えた。



私はよくわからないまま、ベランダから帰ってきた愛莉にもうそろそろ帰ろうと促した。


すると愛莉は、私に先に帰ってくれと言ってきた。

隼くんは今日はここには来ないだろうけど、さっき部室にいた2年の子たちの中に友達がいたから話したいということらしかった。


私はその子から隼くんの情報を聞き出そうとしないということを約束させ、正直そろそろ寒くなってきて風邪を引きそうだったので愛莉の言葉通り先に帰ることにした。


愛莉は堂々とテニス部の部室に入っていった。


私はそれを見届けて部室棟を出た。


その時、自転車に乗って帰ろうとしている海吏くんとバッタリ会ったのだった。
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