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6人目:イマドキJKの話

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「愛莉さんはバド部だよね?愛莉さんも疲労が溜まったりしたらお母さんに解してもらうの?」

隼くんが私の方を真っ直ぐに見て聞いてきた。

隼くんの声は、自分に向かって話しかけられるだけでドキドキしてしまうくらい優しく…聞き心地の良い声だ。


「私の事はぜーんぜん。家でまで仕事はしたくないんだってさ」

私は少しぶっきらぼうに答える。

隼くんに対してではなく、母に対しての感情が声となって出てしまった形だ。


「この子ったら反抗期なのか、そもそも私に近づきすらしないのよ?私だって少しならやってあげようとは思うのに!全く……」


そんなことをブツブツ言う母の私に対する愚痴や不満を隼くんは静かに聞いている。


「隼くんは反抗期とか無さそうね!親と喧嘩することとかないでしょ?」

母の質問には私も同意した。

隼くんが誰かと喧嘩するところや反抗しているところは想像つかない。



「反抗期っていう反抗期はないかもしれないです。けど…喧嘩はごく稀にしますよ?」

「あらぁ!どんなことで喧嘩するの?」

「うちの親、働きすぎなんですよ。ほぼ毎日仕事で長時間働いて疲れてるのに、家に帰ってきても両親二人とも家のことも完璧にやろうとするんです……それで一回、母のほうが少し体調崩しちゃって。それ以降は家のことは親にやらせないようにって俺とか姉とかがしようとするんですけど……それでも親が無理しようとする時もあるんです。…それで、頼むからもう無理はしないでって言ったら、親も親であんたは余計なこと考えなくていいって言って来て……そこから少しヒートアップして、喧嘩になった感じです」


少し恥ずかし気に話す隼くんの話の内容に、私も母も思わず顔を見合わせた。

喧嘩の理由が優しすぎる……


「ちょっと聞いた?愛莉!隼くんすっごくいい子じゃない!!!」

「そーだね。うちじゃありえない喧嘩の理由だね」

「そーよーー隼くん親孝行な子ねぇ…親に無理してほしくなくて喧嘩しちゃうって素晴らしいわ」

「いやいや……妹はまだ小さいですし、俺や姉たちは自分でできることも多いので、家にいるときくらいできるだけ妹に時間を使ってほしいんです。」

「素晴らしすぎるお兄ちゃんね!あーもううちに欲しいくらいよ!!」


隼くんが話せば話すほど母が興奮する。

だけどそれを聞いてる私も、正直隼くんにどんどん惹かれているのが分かった。




(こんな人と結婚したら、絶対家族は幸せだろうな)


思わずそんなことを考えちゃってる自分に恥ずかしくなった。


だけど、目の前にいる隼くんの優しいオーラが、この空間を柔らかく包んでいる。

普段私と母だけの少しギスギスした雰囲気に支配されているこの家が、隼くんがいるだけで全く別物になっている。


母がしきりに隼くんに対して「毎日来てくれてもいいのよ」と冗談めかして言っているのも、あながち気持ちがわからないでもない。




「ほら、愛莉!!せっかくだから隼くんと連絡先交換しなさい!」


母が急かすように私にそう言う。

「ね?隼くんいいわよね?」

有無を言わさない母の圧力に、隼くんは笑って「はい!」と答えてくれた。


「……わかったよ」

隼くんと連絡先が交換できる!そう思うとワクワクしてしまったけど、そんなことは顔に出さずにあくまで冷静を装う。


隼くんは優しい笑顔のまま、私と連絡先を交換してくれた。
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