その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

？？？ とある刑事の話

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やはり妙だ……





令和X年、日本中を震撼させ、恐怖に陥れた男子中学生による部室でのバラバラ殺人事件。


その舞台は都内の有名私立中学。



この中学では、ここ数年全国区レベルのニュースが増えてきている。


それもこれも……あの生徒が入学してからだ。




「畠山はたけやまさん、何か考え事ですか？」

「ああ。例の旭堂中きょくどうちゅうの事件についてだ。妙だと思わないか？」



刑事として勤めて19年目の俺、畠山登はたけやま　のぼるは、休憩室に入ってきた部下の声かけに反応しながらも、頭の中を休めることができなかった。


事件の舞台となった私立旭堂中学校は、全国から選手を集めた部活動の強豪校だ。
中高一貫校であり、偏差値も70を軽く超えていて、そこら辺のお受験学校とはレベルが違う。

そして経済的にもかなり余裕が無いと入れないという、超名門校なのだ。


そんな有名私立中学で、ここ数年立て続けに教員の不祥事、逮捕、ストーカー被害、そしてついに生徒による重大殺人事件が起きている。


今回のバラバラ殺人事件に関しては、ここに通う2年の男子ソフトテニス部員藤井海吏14歳が単独で行った犯行だ。

様々な調査の結果、彼に計画性は無く、突発的なものであると判断された。

事件に至る背景や藤井海吏の部活内における立場、そして事件直前の事情を考慮し、弁護側は量刑の軽化を求めている。

一方で、三人もの部活仲間を猟奇的な方法で殺めているという事実や、本人の事件当時の責任能力が認められていること、そして三人の遺体の前で醍醐隼と性行為に及んでいた事などを考えて、検察官側は死刑を求刑している。

只今裁判真っ最中だ。



そして、この事件には、もう一人鍵を握る重要人物がいる。


それこそ……


「ああ、醍醐隼についてですか？」


部下の察しの良さにホッとしながらも、俺は表情を変えずに頷く。


「最寄り駅での集団暴行事件、教員Aの殺人未遂事件、その元彼女による空港でのストーカー被害、そして今回のバラバラ殺人事件……すべてにそいつが関わっている。」



最も本人が犯罪をそそのかしたり計画したりしているということでなく、あくまで被害者としてなのだが、毎回醍醐隼が絡んでいる。

今回の藤井海吏の事件に関しても、遺体の第一発見者は醍醐隼であるが、そこから2人はすぐに動かず、少なくとも数十分間は部室にいたという事実が取調べで分かっている。

午後9時近くなり、学校を最後に出る教員が戸締まりをしている時にたまたま2人と部室の遺体を発見して初めて、警察に連絡が行った。


その時、藤井海吏と醍醐隼は男性同士の性行為を終え、二人で泣きながら手を握り合っていたという。