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5人目:平凡後輩の話
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「………分かった…………」
長い沈黙の後、隼先輩は小さな声でそう言った。
「え!本当にいいんですか!?」
「うん……でもあの、内緒にしてね?」
「もちろんですよっ!!」
口に人差し指を当てて秘密にしてくれと頼む隼先輩の仕草と表情が、とても可愛らしくて思わずキュンとした。
隼先輩に許可をもらえた俺は、嬉しすぎて声が思わず上ずった。
「隼先輩と定期的にできるとか……俺、生きてて良かったです!」
「流石に大袈裟だよー…海吏のその特技が知られれば、すぐにでもできそうだけどね」
「それってつまり俺の体目当ての奴が現れるってことですか?先輩、意外とクズっぽい発言しますねw」
「ええっ!クズだった!?いや、そんなつもりはないんだけど……」
「いやいや梨々先輩という完璧な彼女がいながらも俺や優先輩とこんなことしてるんだから、隼先輩もなかなか既にクズですよww」
「……………そうだね…」
「そんな落ち込まないで下さいって!!先輩くらいのイケメンで純情なほうが逆に不自然ですから!ね?」
「…うーん…」
「安心して下さい。俺はどんな先輩も大好きですから」
先輩をクズ扱いして落ち込ませてから、俺の本当の気持ちを伝える。
隼先輩は俺の言葉にいちいち反応してくれる。
「え……好きって…」
「さっきも言いましたよね?」
「言ってたけど……あれは雰囲気を良くするために言ってくれたとかじゃないの…?」
「何言ってるんですか!俺の本心ですよ?」
俺の言葉に隼先輩はまた大きな黒目を動かす。
この人は、不思議なくらいに「もしかしたら誠実に気持ちを伝えれば自分でも手に入るんじゃないか」と思わせてくれる。
「本気で俺のこと好きなの?」
「はい。大好きですよ」
「先輩として憧れてくれてるとかじゃなくて?」
「それもありますけど、恋愛対象としても大好きです」
「そんな…」
「嫌ですか?こんなダサい後輩に好かれるのは」
「嫌なわけないよ!海吏はダサくないし。かっこいいし頼れる後輩だと思ってるよ」
「先輩、そういうところですよ……どんどん好きになっちゃうじゃないですか……」
そう言って俺は隼先輩の顔に自分の顔を近づける。
咄嗟に目をつぶった隼先輩の唇を、俺の唇で優しく覆う。
「……っ海吏……」
「……先輩………本当に好きです」
俺はまた先輩に唇を重ねる。
至近距離での告白に、隼先輩は顔を赤くして息を呑んだ。
互いの鼓動が重なり合うのが分かるくらい、二人の気持ちは高まっている。
隼先輩は俺を好きな訳ではないと思う。
だけど、俺が作り出す雰囲気と真面目な告白は、隼先輩にきちんと響いているのだろう。
一瞬だけ…
今この瞬間だけでもいいから、隼先輩は俺の気持ちに向き合ってドキドキしてくれればそれでいい。
「………先輩。俺、隼先輩の幸せだけを願ってますから。」
微かに動く隼先輩の柔らかい唇を眺めながら言う。
俺は自分の口からそんな言葉が出てきていることに驚いていた。
今まで、自分のことしか考えていなかった。
他人に興味がなくて、自分がいかに怒られないで済むか、いかに仲間に入れてもらえるか、そんなことしか考えてこなかった。
人を好きになることはあれど、その時ですら自分のことばかり。
どうやったら好かれるのか?どうやったら相手に気に入られるのか?
相手の気持ちや幸せなんて、考えていなかった。
だけど……
隼先輩に関しては、ちがう。
隼先輩のことは、心から幸せになってほしいと思う。
自然とどうやったら隼先輩がより幸せになれるのか、つい考えてしまう。
これは、俺の中では大きな大きな変化であり成長であった。
そして、そんな風に変われる自分のことは好きになれた。
隼先輩は、自分に恋させることで、その相手の自信や気持ちまで変えちゃうすごい人だ。
「…ありがとう海吏。俺も、海吏には幸せになってほしいと思ってるよ」
俺の言葉に頬を赤らめながら優しく微笑む隼先輩。
その柔らかな眼差しは、俺の心の奥にある汚さをすべて浄化してくれる。
長い沈黙の後、隼先輩は小さな声でそう言った。
「え!本当にいいんですか!?」
「うん……でもあの、内緒にしてね?」
「もちろんですよっ!!」
口に人差し指を当てて秘密にしてくれと頼む隼先輩の仕草と表情が、とても可愛らしくて思わずキュンとした。
隼先輩に許可をもらえた俺は、嬉しすぎて声が思わず上ずった。
「隼先輩と定期的にできるとか……俺、生きてて良かったです!」
「流石に大袈裟だよー…海吏のその特技が知られれば、すぐにでもできそうだけどね」
「それってつまり俺の体目当ての奴が現れるってことですか?先輩、意外とクズっぽい発言しますねw」
「ええっ!クズだった!?いや、そんなつもりはないんだけど……」
「いやいや梨々先輩という完璧な彼女がいながらも俺や優先輩とこんなことしてるんだから、隼先輩もなかなか既にクズですよww」
「……………そうだね…」
「そんな落ち込まないで下さいって!!先輩くらいのイケメンで純情なほうが逆に不自然ですから!ね?」
「…うーん…」
「安心して下さい。俺はどんな先輩も大好きですから」
先輩をクズ扱いして落ち込ませてから、俺の本当の気持ちを伝える。
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「え……好きって…」
「さっきも言いましたよね?」
「言ってたけど……あれは雰囲気を良くするために言ってくれたとかじゃないの…?」
「何言ってるんですか!俺の本心ですよ?」
俺の言葉に隼先輩はまた大きな黒目を動かす。
この人は、不思議なくらいに「もしかしたら誠実に気持ちを伝えれば自分でも手に入るんじゃないか」と思わせてくれる。
「本気で俺のこと好きなの?」
「はい。大好きですよ」
「先輩として憧れてくれてるとかじゃなくて?」
「それもありますけど、恋愛対象としても大好きです」
「そんな…」
「嫌ですか?こんなダサい後輩に好かれるのは」
「嫌なわけないよ!海吏はダサくないし。かっこいいし頼れる後輩だと思ってるよ」
「先輩、そういうところですよ……どんどん好きになっちゃうじゃないですか……」
そう言って俺は隼先輩の顔に自分の顔を近づける。
咄嗟に目をつぶった隼先輩の唇を、俺の唇で優しく覆う。
「……っ海吏……」
「……先輩………本当に好きです」
俺はまた先輩に唇を重ねる。
至近距離での告白に、隼先輩は顔を赤くして息を呑んだ。
互いの鼓動が重なり合うのが分かるくらい、二人の気持ちは高まっている。
隼先輩は俺を好きな訳ではないと思う。
だけど、俺が作り出す雰囲気と真面目な告白は、隼先輩にきちんと響いているのだろう。
一瞬だけ…
今この瞬間だけでもいいから、隼先輩は俺の気持ちに向き合ってドキドキしてくれればそれでいい。
「………先輩。俺、隼先輩の幸せだけを願ってますから。」
微かに動く隼先輩の柔らかい唇を眺めながら言う。
俺は自分の口からそんな言葉が出てきていることに驚いていた。
今まで、自分のことしか考えていなかった。
他人に興味がなくて、自分がいかに怒られないで済むか、いかに仲間に入れてもらえるか、そんなことしか考えてこなかった。
人を好きになることはあれど、その時ですら自分のことばかり。
どうやったら好かれるのか?どうやったら相手に気に入られるのか?
相手の気持ちや幸せなんて、考えていなかった。
だけど……
隼先輩に関しては、ちがう。
隼先輩のことは、心から幸せになってほしいと思う。
自然とどうやったら隼先輩がより幸せになれるのか、つい考えてしまう。
これは、俺の中では大きな大きな変化であり成長であった。
そして、そんな風に変われる自分のことは好きになれた。
隼先輩は、自分に恋させることで、その相手の自信や気持ちまで変えちゃうすごい人だ。
「…ありがとう海吏。俺も、海吏には幸せになってほしいと思ってるよ」
俺の言葉に頬を赤らめながら優しく微笑む隼先輩。
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