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5人目:平凡後輩の話

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「……うっ…………」

「あ、やっと目覚めましたね」



俺は隼先輩をトンカチで殴った後、気を失った隼先輩を部室にあったロープでグルグルに縛り付けた。


「……!?海吏!なに?このロープ」

「あー、解かないで下さいよ?ちゃんとあとで解いてあげるんで。」


自分が縛られていることに驚く隼先輩に、俺は釘を差すように言う。



「海吏、どうしたんだよ…何かあったんだよな?なんでこんなことするの?」


「隼先輩、本当は俺のことバカにしてたんですよね?あんだけ俺のこと褒めといて、俺がまんまと調子に乗って張り切ってるのを見てバカみたいって思ってたんでしょ?」

「え…?どういうこと?そんなこと思ってないよ…」

「けど俺、さっき2年の奴らに思いっきりバカにされたんですよ。俺は隼先輩の言う通りに行動しただけですよ?それなのにめちゃくちゃボロカスに言われました。………先輩、ここまで読んでたんですよね?俺が必死こいて頑張ってるところを見て、皆で馬鹿にしようとしてたんですよね?」


「違うよ!何言ってんだよ海吏。そんなことするわけないだろ。俺は最近、海吏が頑張ってるのを見てすごい嬉しかったよ?みんなもそれを分かってくれてて、海吏のこと褒めてたじゃん!」

「だからそれが表面上だけなんだってば。……もしかしてシラを切るつもりですか?」

「シラを切るとかじゃなくて…」

「もういいですよ。俺、隼先輩に勝手に憧れて勝手に真似して…相当キモがられてたんですもんね」



必死に俺の言葉を否定する隼先輩を横目に、俺はこれまでの自分の馬鹿さ加減を恥じた。


「所詮俺みたいな平凡な後輩なんて、隼先輩になれるわけなかったんですから」


俺の言葉の意味をわかっていないのか、隼先輩は口を開けて何も言えないでいる。


「さっき言われたんすよね、あいつらに。俺が頑張れば頑張るほど、隼先輩にとって迷惑だって。隼先輩はただ、俺が必死こいてるところを見て笑いたかっただけなのに、って」

「ちょっと待てよ…!そんなこと誰が言ったの?海吏に憧れられて迷惑だなんて思ったこともないし、海吏を馬鹿にして笑おうなんて考えたこともないよ」

「へー、じゃああいつらが嘘ついたんですか……まあ、もうどうでもいいです。」

「どうでもよくないよ!俺は海吏に誤解してほしくない。ちゃんとみんなで話し合ってさ…」

「もうそんなの…無理ですよ今更。そんなことよりも俺は、隼先輩に確実に近づける方法を見つけたんですから…」



俺はそう言って隼先輩の顔に自分の顔を近づける。


「……っ!!?」


俺はそのまま、隼先輩の目を舐めた。
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