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5人目:平凡後輩の話

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「……海吏……何してんの?」


中にいた一人が、驚きのあまり消え入りそうな声で聞いてくる。

「……忘れ物したから取りに来た。」

ドアが開いたことでハッキリとした意識を取り戻した俺は、立ち上がりそう答えて部室の中に入った。


他の部員たちは、気まずそうに互いの顔を見合わせていた。


「……俺のことはなんて言ってもいいけどさ」


微妙な沈黙を破る俺の言葉が大きく響いた。


「先輩たちのことは悪く言うなよな。確かにみんな苦労してないように見えるかもしれないけど……それぞれ悩んでることだってあるんだぞ。同じ中学生なんだから。」


俺は、さっき先輩たちを罵倒されたことの方に腹が立っていた。

特に隼先輩は…

あんなに恵まれているように見えても、俺と同じような苦しみを経験しているのだから。



「…………キッモ……」



俺の言葉にみんなが黙っていたと思ったら、一人がそう呟いた。


「お前が先輩の何を知ってるんだよ。知ったかぶって正論めいたこと言ってんじゃねーよ。キモいんだよ!」


俺に一番話しかけてくれてた部員が、嘲笑うような顔で俺に詰め寄る。


「『自分のことはいいから~』とかさ、今更いい子ちゃんぶること言うんだもんな」

「つか聞いてたんだろ?話。こっそり聞き耳立ててたくせに後から文句言ってくるとかキモすぎんだろww陰湿すぎて笑えねえ」

「そのくせ自分だけは人の悩みを知ってますアピールして強がるとか…必死過ぎ」


全員が俺を嘲り、大きなで笑う。

部室に響くその笑い声は、耳をナイフで刺されるような音だった。



俺は、何を言われてるんだ…?


なんでこんなこと言われてるんだろう。


俺は、こいつらに何かしたというのか?


どうしてここまで、理不尽なことを言われなきゃいけないんだ……?
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