その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

いちごみるく

文字の大きさ
上 下
48 / 213
5人目:平凡後輩の話

1

しおりを挟む
「隼先輩、修学旅行先でもストーカーに遭ったらしいよ」

「マジ?それはやばい」

「ずっとストーカーされてるって噂あったもんな。……てか常に誰かしらに追われてね?」

「まー隼先輩だからな。仕方ないっしょ」



12月のある平日。

俺たち男子ソフトテニス部は、練習後に部室でそんな話をしていた。


「なあ?海吏かいりもそう思わねえ?」

「ん?……ああ、そうだね。やばいね」


突然話を振られた俺は、咄嗟にそう返す。

「って海吏さー、お前話聞いてたのかよ?」

「聞いてたよ!隼先輩の話だろ?」

「そうそう。あれだけのイケメンって羨ましいとは思うけど……人生大変なこともいっぱいあるんだろうなあ」


そいつの言葉に周りの同輩たちも頷く。


「ま、梨々先輩と付き合えてるって時点でそんな苦労も全部チャラだろーけどなーー」


他の部員がそう言い、そこから話の中心は梨々先輩へと移った。



俺は、一応このテニスの名門校である旭堂中学校の男子ソフトテニス部員で、藤井海吏ふじい かいりという。

「一応」とつけたのは、同じ2年生だけでも40人前後いる部員の中で、俺はほぼ最下位の実力だからだ。


俺らの代も強いが、一個上の先輩たちは伝説的に色々と最強だ。

キャプテンの隼先輩に、副キャプテンの優先輩。

それに2番手コンビの瑠千亜先輩と五郎先輩もかなり強い。


その四人はいつも一緒にいて、テニスが強い上に全員成績もトップクラス、おまけに顔面偏差も高い。

4人で並んでると、まるでアイドルグループを見ているようだ。



しかも、その中でも一番人気な隼先輩には、とても可愛くてテニスも強くて性格も優しい梨々先輩という彼女がいる。

一個上の女子部員は梨々先輩以外の人たちも、実力・成績・見た目共に史上最強だと言われている。

つまり、うちの学校のうちの部は、単にテニスの実力が全国トップクラスなだけでなく、ハイスペックな集団の集まりなのだ。


そんな中で、実力も成績も見た目も普通の俺は、常に居心地の悪さを感じていた。

俺と同学年の2年生や後輩たちは普通に話してくれるけど……



「海吏、お前また今日優先輩に怒られてなかった?」

「またかよww今日はなにやらかしたんw」

「いや、コート整備のときちょっとラインの上の砂が残ってただけだぞ?それなのにめっちゃキレられたわ」

「やっぱり海吏には先輩たち厳しいなあ」

「まーその分俺らの優しさが光るじゃん?w」

「なんだそれ。わけわかんねーw」



そう言って笑ってくれる同輩たちが救いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

瞬間、青く燃ゆ

葛城騰成
ライト文芸
 ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。  時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。    どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?  狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。 春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。  やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。 第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

処理中です...