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5人目:平凡後輩の話

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「隼先輩、修学旅行先でもストーカーに遭ったらしいよ」

「マジ?それはやばい」

「ずっとストーカーされてるって噂あったもんな。……てか常に誰かしらに追われてね?」

「まー隼先輩だからな。仕方ないっしょ」



12月のある平日。

俺たち男子ソフトテニス部は、練習後に部室でそんな話をしていた。


「なあ?海吏かいりもそう思わねえ?」

「ん?……ああ、そうだね。やばいね」


突然話を振られた俺は、咄嗟にそう返す。

「って海吏さー、お前話聞いてたのかよ?」

「聞いてたよ!隼先輩の話だろ?」

「そうそう。あれだけのイケメンって羨ましいとは思うけど……人生大変なこともいっぱいあるんだろうなあ」


そいつの言葉に周りの同輩たちも頷く。


「ま、梨々先輩と付き合えてるって時点でそんな苦労も全部チャラだろーけどなーー」


他の部員がそう言い、そこから話の中心は梨々先輩へと移った。



俺は、一応このテニスの名門校である旭堂中学校の男子ソフトテニス部員で、藤井海吏ふじい かいりという。

「一応」とつけたのは、同じ2年生だけでも40人前後いる部員の中で、俺はほぼ最下位の実力だからだ。


俺らの代も強いが、一個上の先輩たちは伝説的に色々と最強だ。

キャプテンの隼先輩に、副キャプテンの優先輩。

それに2番手コンビの瑠千亜先輩と五郎先輩もかなり強い。


その四人はいつも一緒にいて、テニスが強い上に全員成績もトップクラス、おまけに顔面偏差も高い。

4人で並んでると、まるでアイドルグループを見ているようだ。



しかも、その中でも一番人気な隼先輩には、とても可愛くてテニスも強くて性格も優しい梨々先輩という彼女がいる。

一個上の女子部員は梨々先輩以外の人たちも、実力・成績・見た目共に史上最強だと言われている。

つまり、うちの学校のうちの部は、単にテニスの実力が全国トップクラスなだけでなく、ハイスペックな集団の集まりなのだ。


そんな中で、実力も成績も見た目も普通の俺は、常に居心地の悪さを感じていた。

俺と同学年の2年生や後輩たちは普通に話してくれるけど……



「海吏、お前また今日優先輩に怒られてなかった?」

「またかよww今日はなにやらかしたんw」

「いや、コート整備のときちょっとラインの上の砂が残ってただけだぞ?それなのにめっちゃキレられたわ」

「やっぱり海吏には先輩たち厳しいなあ」

「まーその分俺らの優しさが光るじゃん?w」

「なんだそれ。わけわかんねーw」



そう言って笑ってくれる同輩たちが救いだ。
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