42 / 213
4人目:彼女の話
20
しおりを挟む「…え……優香さん……僕…」
あれから1時間弱。
突然我に帰った隼くんは、顔を赤らめながら私の顔を見ていた。
ベッドの上には、乱暴に脱ぎ捨てられた二人の服。
天井の換気扇が、二人が充満させた香気を懸命に吸い上げている。
体の火照りを微かに残したまま、私と隼くんは向き合っている。
「隼くん……私たちはもう、春馬を経由しなくても……繋がれたのよ」
だんだんと頭の中がはっきりしてきて、徐々に理性を取り戻す。
隼くんはその段階で、自らの大事なものが私によって奪われたことに気づいて焦る。
「隼くん…初めてだったんでしょう?このことは、誰にも秘密にしてね?」
私との言葉に隼くんは顔を赤らめ、取り返しのつかないことをしたかのように動揺する。
「初めてだったんだから、隼くんがそのまんま私の中に全てぶちまけちゃったことも許してあげる。けど、これからはちゃんと女の子を気遣ってあげてね?」
「えっ…!それって……やばいですよね…」
「大丈夫よ。むしろ私が全部自分からしたことだから」
「そうじゃなくてっ!だって、もし…」
「心配いらないよ。私は子供ができない体なの」
焦りまくる隼くんとは対象的に冷静に答える私。
私の体質を知っても知らなくても、男の方から無理矢理してくるクソ野郎なんて、ごまんといたのに。
焦ってくれるだけ、まだまだ良心的…
「そうなんですね……けど…」
私の体質を聞いて安心しきる奴がほとんどだった。
けど、隼くんはまだ何か言いたげだ。
「けど……雰囲気に流されたとはいえ…なんかすごく優香さんに対して最低なことをした気分です…」
さっきまでの野性的で本能的な男の子とは別人のように真面目に落ち込む隼くん。
「私にとって最低って何が?」
「え?だって……その、付き合ってもないのに……」
「それならお互い様じゃない。」
やっぱり中学生は真面目だ。
経験がないからなのだろうけど。
大人になればそんなことに責任感じる奴なんていないのに。
「そう…なんですけど…」
「ほら、『都合のいい関係』ってよく聞くでしょ?あんな感じよ。お互い恋愛感情は無いけど、自分を満たすために定期的に会う。…それと同じだと思えばいいよ」
最低な大人だとは自覚しつつも、こうでも言わないといけない気がした。
だって私は……
「そうですか……」
冷静に項垂れ反省する隼くんに、「都合のいい関係」以上の気持ちを抱いてしまっていることは確かなのだから……
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
青春日記~禁断の恋だとしても、忘れられない日常を綴ります~
いちごみるく
青春
主人公の隼は、ふと見たニュースで教師と生徒の不適切な関係が明るみになった不祥事を知る。
世間的には厳しくなっていく一方であるそのような関係性。
しかし、隼は15年前に恋していた25歳の国語教師・菜摘のことを思い出す。
小学生と中学の教師という、決して許されざる恋。
二人ともその恋がもたらす苦汁をこれでもかというほど味わいながらも、想いが止むことはなかった。
しかしそんな二人は、ある日、唐突に引き裂かれる……
抗えない運命に絶望していた時、隼は菜摘の日記の存在を知る。
そこに描かれていたのは……?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる