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4人目:彼女の話
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しおりを挟む「…え……優香さん……僕…」
あれから1時間弱。
突然我に帰った隼くんは、顔を赤らめながら私の顔を見ていた。
ベッドの上には、乱暴に脱ぎ捨てられた二人の服。
天井の換気扇が、二人が充満させた香気を懸命に吸い上げている。
体の火照りを微かに残したまま、私と隼くんは向き合っている。
「隼くん……私たちはもう、春馬を経由しなくても……繋がれたのよ」
だんだんと頭の中がはっきりしてきて、徐々に理性を取り戻す。
隼くんはその段階で、自らの大事なものが私によって奪われたことに気づいて焦る。
「隼くん…初めてだったんでしょう?このことは、誰にも秘密にしてね?」
私との言葉に隼くんは顔を赤らめ、取り返しのつかないことをしたかのように動揺する。
「初めてだったんだから、隼くんがそのまんま私の中に全てぶちまけちゃったことも許してあげる。けど、これからはちゃんと女の子を気遣ってあげてね?」
「えっ…!それって……やばいですよね…」
「大丈夫よ。むしろ私が全部自分からしたことだから」
「そうじゃなくてっ!だって、もし…」
「心配いらないよ。私は子供ができない体なの」
焦りまくる隼くんとは対象的に冷静に答える私。
私の体質を知っても知らなくても、男の方から無理矢理してくるクソ野郎なんて、ごまんといたのに。
焦ってくれるだけ、まだまだ良心的…
「そうなんですね……けど…」
私の体質を聞いて安心しきる奴がほとんどだった。
けど、隼くんはまだ何か言いたげだ。
「けど……雰囲気に流されたとはいえ…なんかすごく優香さんに対して最低なことをした気分です…」
さっきまでの野性的で本能的な男の子とは別人のように真面目に落ち込む隼くん。
「私にとって最低って何が?」
「え?だって……その、付き合ってもないのに……」
「それならお互い様じゃない。」
やっぱり中学生は真面目だ。
経験がないからなのだろうけど。
大人になればそんなことに責任感じる奴なんていないのに。
「そう…なんですけど…」
「ほら、『都合のいい関係』ってよく聞くでしょ?あんな感じよ。お互い恋愛感情は無いけど、自分を満たすために定期的に会う。…それと同じだと思えばいいよ」
最低な大人だとは自覚しつつも、こうでも言わないといけない気がした。
だって私は……
「そうですか……」
冷静に項垂れ反省する隼くんに、「都合のいい関係」以上の気持ちを抱いてしまっていることは確かなのだから……
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