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4人目:彼女の話
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「……優香さん!?」
慌てたように私の名前を呼ぶ隼くんの声で気がつく。
私はいつの間にか、涙を流していた。
「どうしたんですか…?!」
心配そうに顔をのぞき込んでくる隼くんの表情は、涙でぼやけて見えない。
ついさっき隼くんに感じ始めた気持ちと、春馬に関する不思議な感情が意外な形で結びついたような気がした。
きっと私は、それに安心してしまったんだ…
「ごめんねいきなり……気にしないで」
私は涙を拭って笑顔を作った。
やっと見えた隼くんの顔は、やっぱり心配そうで少し驚いているようだった。
「気になりますよ……優香さん、なんか辛いことがあったなら僕に話してください。佐伯先生のことでも、事件のことでもその他のことでも……あの時からずっと、一人で抱えてきたのなら泣きたくもなると思います。だけどそれは、僕も同じだから……僕たちにしか分からないことも、あると思うんです」
涙目の私を優しく宥めるように、だけど同時に密かにお願いするように隼くんはそう言った。
隼くんも、やっぱり共有したかったんだ。
春馬への複雑な心境や悩んできたことを。
私は隼くんと同じことを抱えていたという事実に、とても嬉しくなった。
「ありがとう隼くん。隼くんも私にしか話せないことがあると思うから、何でも話してね」
「はい、ありがとうございます!」
そう言って笑い合う私たちは、やっとあの日から足を進めることができるような気がした。
(やっぱりここまで来てよかったな…)
心の底からそう思わずにはいられなかった。
慌てたように私の名前を呼ぶ隼くんの声で気がつく。
私はいつの間にか、涙を流していた。
「どうしたんですか…?!」
心配そうに顔をのぞき込んでくる隼くんの表情は、涙でぼやけて見えない。
ついさっき隼くんに感じ始めた気持ちと、春馬に関する不思議な感情が意外な形で結びついたような気がした。
きっと私は、それに安心してしまったんだ…
「ごめんねいきなり……気にしないで」
私は涙を拭って笑顔を作った。
やっと見えた隼くんの顔は、やっぱり心配そうで少し驚いているようだった。
「気になりますよ……優香さん、なんか辛いことがあったなら僕に話してください。佐伯先生のことでも、事件のことでもその他のことでも……あの時からずっと、一人で抱えてきたのなら泣きたくもなると思います。だけどそれは、僕も同じだから……僕たちにしか分からないことも、あると思うんです」
涙目の私を優しく宥めるように、だけど同時に密かにお願いするように隼くんはそう言った。
隼くんも、やっぱり共有したかったんだ。
春馬への複雑な心境や悩んできたことを。
私は隼くんと同じことを抱えていたという事実に、とても嬉しくなった。
「ありがとう隼くん。隼くんも私にしか話せないことがあると思うから、何でも話してね」
「はい、ありがとうございます!」
そう言って笑い合う私たちは、やっとあの日から足を進めることができるような気がした。
(やっぱりここまで来てよかったな…)
心の底からそう思わずにはいられなかった。
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