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4人目:彼女の話
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しおりを挟む「……実はあの日、佐伯先生に自分の家がここだよって教えてもらってたんです。佐伯先生の車に乗せて連れてきてもらってその後すぐ学校に帰してもらいました。……だけど学校から家に帰ろうとしたときに、僕がスマホをなくしたことに気づいたんです。テニスコートとか学校とか部室とか色々探したんですけど、どこにもなくて…他の仲間はみんな帰ってるし、先生も帰ったあとに気づいちゃって…そこでふと、先生の車の中に落としたのかもしれないと思って先生の家に向かいました。そしたら先生の部屋の電気がついてたので、伺って車を見てもらおうと思ってインターホンを鳴らそうとしました。……まさにそのときの出来事だったんです。」
隼くんの説明に、私はまた衝撃を受けた。
春馬は自分の家を教えたりして、本気で隼くんとあそこに住むつもりだったんだということを知ったから……
というか、あの日あんなに隼くんに電話してたのに一向に出なくて泣いてキレてた春馬を思い出すと、今更ながらまた少しゾッとした。
隼くんのスマホは春馬の車の中でずっと春馬からの連絡を受信していただけなのだ。
「…隼くんはさ、春馬が自分に対して普通以上の感情を抱いてることは気づいてなかったの?」
私は気づいたらこんな質問をしていた。
だって、隼くんはかなり人気者らしいから。
他人からの好意に気づいて警戒しないものかと気になってはいた。
「………僕に部屋を教えてくれたとき、ちょっと雰囲気がいつもと違うなとは思いました。………だけど、まさかそういう感情があったということまでは………佐伯先生は、僕が1年生の時からずっと兄みたいに優しく接してくれてたので……」
やっぱり気づかないものらしい。
まあ、絶対的に信頼している顧問が相手だと、お互いそんな風に見るなんてことは普通は考えもしないのかもしれない。
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