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4人目:彼女の話
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私はゆっくりとドアを開け、廊下に立つ春馬の後ろ姿を見た。
「………クソッ!なんで出ないんだよ…っ!」
春馬はそう言いながら何度も何度も同じ相手に電話をかけていた。
その度に春馬の耳元から響く電子音は、相手が春馬の電話に出ないことを示していた。
「くそっ………今日あれだけ話したのに…!くそ!出ろよっ!!」
なかなか出ない相手にイライラしてスマホを強く握りしめ、何度もかけ直す春馬は、私が近づいていたことに気づいていない。
「誰にそんなに電話してるの」
私は春馬の真後ろから耳元でそう声かけた。
「うわっ!!お前……廊下には来んなって言っただろ!!」
春馬は驚きながら私を睨みつけた。
だけどその一瞬で、私は春馬のスマホに表示されている相手の名前を見た……。
「出て行けって言われたから出ていこうとしただけよ。春馬、そんな趣味があったんだね。」
私の言葉に驚いた春馬は一瞬目を大きく見開いて、咄嗟にスマホの画面を隠していた。
だけど私は春馬の持つスマホに写る事実に、色んなものがサーッと引いていく感覚がしていた。
「もういいよ今更。……あの子にそんなに肩入れしてたのは、やっぱりそういう感情があったからなんだね」
私は何故か驚くくらい冷静だった。
「そういう感情ってなんだよ……俺はただ、あいつが心配だから……」
「心配だからって出ない相手に何回も電話かけるの?それこそ迷惑でしょ」
「……うるさいっ!お前なんかに俺と隼の何がわかるんだよ!」
「なーんにも分からないね。ただの先生と生徒でしょ。」
「違うっ!!!」
そう叫んだ春馬は今までにないくらい鋭い目で私を睨みつけてきた。
こんなに叫んだのは、見たことがない。
ここまで必死なのも怒ってるのも初めて見る。
だけどやっぱり私は冷静で、そんな春馬をただ不思議に思うだけだった。
「………まあ、どうでもいいけど。私、あんたがそんな人だとは思わなかった」
「うるさい……何も知らないくせに適当なこと言うな」
「適当なことじゃないよ。私の気持ちを言ってるだけだもの。……春馬はもっと、現実が見えている人だと思ってた。私との結婚を引き延ばしたのも、現実的な考えがあってのことだと思ってた。……だけど、違ったんだね」
「俺が現実を見てないとでも言いたいのか?」
「そうだよ。だってそうじゃない。あなたは先生で隼くんは生徒。……それ以外に……何があるって言うの?」
私の冷静な声と冷めた眼差しに、春馬は言葉を詰まらせた。
春馬が持つスマホの画面には、隼くんとのLI○Nのトーク画面が写っていた。
そこに写るのはスクロールしても足りないくらいの春馬からの着信履歴。
相手からの既読すらついていない。
春馬の顔に目線を戻すと、春馬は目を真っ赤にして泣きながら肩で息をしてフーフー言っていた。
「………可哀想。あなたにとって隼くんが唯一無二の存在でも、彼にとってはそうじゃなかったみたいね。」
私はそれだけ言い残して、春馬を押しのけて寝室に私物を取りに行った。
春馬は何も言わずに、ただ自分のスマホを睨みつけて泣いているだけ。
私は再び廊下に立つ春馬を押しのけて玄関へと向かう。
「さようなら春馬。元気でね」
振り向くこともなくそう告げて、私は玄関のドアを開けようとドアノブに手をかける。
するとその瞬間、後ろから何か呟く春馬の声が聞こえた気がした。
「………クソッ!なんで出ないんだよ…っ!」
春馬はそう言いながら何度も何度も同じ相手に電話をかけていた。
その度に春馬の耳元から響く電子音は、相手が春馬の電話に出ないことを示していた。
「くそっ………今日あれだけ話したのに…!くそ!出ろよっ!!」
なかなか出ない相手にイライラしてスマホを強く握りしめ、何度もかけ直す春馬は、私が近づいていたことに気づいていない。
「誰にそんなに電話してるの」
私は春馬の真後ろから耳元でそう声かけた。
「うわっ!!お前……廊下には来んなって言っただろ!!」
春馬は驚きながら私を睨みつけた。
だけどその一瞬で、私は春馬のスマホに表示されている相手の名前を見た……。
「出て行けって言われたから出ていこうとしただけよ。春馬、そんな趣味があったんだね。」
私の言葉に驚いた春馬は一瞬目を大きく見開いて、咄嗟にスマホの画面を隠していた。
だけど私は春馬の持つスマホに写る事実に、色んなものがサーッと引いていく感覚がしていた。
「もういいよ今更。……あの子にそんなに肩入れしてたのは、やっぱりそういう感情があったからなんだね」
私は何故か驚くくらい冷静だった。
「そういう感情ってなんだよ……俺はただ、あいつが心配だから……」
「心配だからって出ない相手に何回も電話かけるの?それこそ迷惑でしょ」
「……うるさいっ!お前なんかに俺と隼の何がわかるんだよ!」
「なーんにも分からないね。ただの先生と生徒でしょ。」
「違うっ!!!」
そう叫んだ春馬は今までにないくらい鋭い目で私を睨みつけてきた。
こんなに叫んだのは、見たことがない。
ここまで必死なのも怒ってるのも初めて見る。
だけどやっぱり私は冷静で、そんな春馬をただ不思議に思うだけだった。
「………まあ、どうでもいいけど。私、あんたがそんな人だとは思わなかった」
「うるさい……何も知らないくせに適当なこと言うな」
「適当なことじゃないよ。私の気持ちを言ってるだけだもの。……春馬はもっと、現実が見えている人だと思ってた。私との結婚を引き延ばしたのも、現実的な考えがあってのことだと思ってた。……だけど、違ったんだね」
「俺が現実を見てないとでも言いたいのか?」
「そうだよ。だってそうじゃない。あなたは先生で隼くんは生徒。……それ以外に……何があるって言うの?」
私の冷静な声と冷めた眼差しに、春馬は言葉を詰まらせた。
春馬が持つスマホの画面には、隼くんとのLI○Nのトーク画面が写っていた。
そこに写るのはスクロールしても足りないくらいの春馬からの着信履歴。
相手からの既読すらついていない。
春馬の顔に目線を戻すと、春馬は目を真っ赤にして泣きながら肩で息をしてフーフー言っていた。
「………可哀想。あなたにとって隼くんが唯一無二の存在でも、彼にとってはそうじゃなかったみたいね。」
私はそれだけ言い残して、春馬を押しのけて寝室に私物を取りに行った。
春馬は何も言わずに、ただ自分のスマホを睨みつけて泣いているだけ。
私は再び廊下に立つ春馬を押しのけて玄関へと向かう。
「さようなら春馬。元気でね」
振り向くこともなくそう告げて、私は玄関のドアを開けようとドアノブに手をかける。
するとその瞬間、後ろから何か呟く春馬の声が聞こえた気がした。
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