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4人目:彼女の話
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「ねえ………君が隼くん?」
私は赤松優香。
25歳で看護師をしている。
5歳年上の彼氏がいて、その人とは年度内には結婚する予定だ。
その彼氏は佐伯春馬。私立中学の先生をしている。
その春馬が最近、私に構ってくれなくなった。
その原因は今、目の前にいる中学生の男の子。
春馬が毎日のように電話をするときに、「隼」という名前を呼んでいるのを聞いていた。
だから私はその「隼」くんと話がしたくて、今日こうして直接会いに来てみたのだった。
「はい。あの…佐伯先生から何か聞いてるんですか?」
隼くんは私の話を春馬からされているみたいで、春馬の彼女だってことを名乗ったらすぐに納得してくれた。
とりあえず人目のあるところを避けたくて、私の車に乗せて2人で話している。
「そんなに詳しくは聞いてないよ。だけど、ちょっと流石に遠慮してほしいかなって言いに来たの」
目の前の隼くんは、びっくりするくらいの美少年だった。
可愛くてあどけない顔立ちをしているのに、身長が高くてちょっと日に焼けている。
それに妙に落ち着いていて肝が座ってるような雰囲気は、まるで大人のようだ。
一瞬、相手が中学生だということを忘れてしまうほどの落ち着きぶりだった。
「…すみませんでした……」
隼くんは項垂れて私に謝ってきた。
私が話そうとしていることを先回りしてくれたみたいだ。
「分かってるなら、もう勤務時間外に春馬に電話しないでね。LI○Nもよ。あいつ、真面目で正義感が強いから、生徒から頼られると断れないだけなの。いくら自分が疲れてても生徒を優先しちゃうところがあるのよ。だから、隼くんも春馬のことを慕ってるなら、少しはその辺気を使ってあげて欲しいな」
隼くんは頷きながら私の話をちゃんと聞いている。
大人気ないとは思いながらも、一言言ってやらないと気が済まなかった。
いくら生徒思いでも、私のような彼女を差し置いてまで最優先されてる子は許せなかったから。
「わかりました…。今までそれに気付なかった自分が恥ずかしいです。先生の言葉についつい甘えちゃってました……本当にごめんなさい」
私の棘のある言い方が刺さったのか、隼くんは案外素直にそう謝ってきた。
「分かったならいいよ。ホントはこんなこと、頼むのも変な話なんだろうけど。」
「いや、話してくれてありがとうございました。じゃないと俺、ずっと気づかずに佐伯先生の負担になってたと思うので…」
「気づいてくれてよかった。じゃ、そういうことだから」
私は謝り続ける隼くんを見て、もうこの子は春馬の邪魔をしないだろうと判断した。
正直、かってなイメージではもっと無神経で自己中心的な子だと思っていた。
だけど、その予想は大きく裏切られたようだ。
反省する隼くんを、私は許すことにした。
「もう降りていいよ。部活の時間なのに邪魔してごめんね」
私は助手席のドアを開け、隼くんに降りるよう促した。
隼くんは言われた通りに車から降り、また謝ってきた。
私が車を出すと、私の姿が見えなくなるまで頭を下げていた。
なんだ、春馬の言う通りすごくいい子じゃない。
私はちょっとだけ過去の自分が恥ずかしくなり、春馬の見る目はやっぱり間違いがないんだと思った。
今なら素直に謝れるわ…
私はそのまま帰宅して、夜8時過ぎに帰ってきた春馬に喧嘩の日のことを謝ったのだった。
私は赤松優香。
25歳で看護師をしている。
5歳年上の彼氏がいて、その人とは年度内には結婚する予定だ。
その彼氏は佐伯春馬。私立中学の先生をしている。
その春馬が最近、私に構ってくれなくなった。
その原因は今、目の前にいる中学生の男の子。
春馬が毎日のように電話をするときに、「隼」という名前を呼んでいるのを聞いていた。
だから私はその「隼」くんと話がしたくて、今日こうして直接会いに来てみたのだった。
「はい。あの…佐伯先生から何か聞いてるんですか?」
隼くんは私の話を春馬からされているみたいで、春馬の彼女だってことを名乗ったらすぐに納得してくれた。
とりあえず人目のあるところを避けたくて、私の車に乗せて2人で話している。
「そんなに詳しくは聞いてないよ。だけど、ちょっと流石に遠慮してほしいかなって言いに来たの」
目の前の隼くんは、びっくりするくらいの美少年だった。
可愛くてあどけない顔立ちをしているのに、身長が高くてちょっと日に焼けている。
それに妙に落ち着いていて肝が座ってるような雰囲気は、まるで大人のようだ。
一瞬、相手が中学生だということを忘れてしまうほどの落ち着きぶりだった。
「…すみませんでした……」
隼くんは項垂れて私に謝ってきた。
私が話そうとしていることを先回りしてくれたみたいだ。
「分かってるなら、もう勤務時間外に春馬に電話しないでね。LI○Nもよ。あいつ、真面目で正義感が強いから、生徒から頼られると断れないだけなの。いくら自分が疲れてても生徒を優先しちゃうところがあるのよ。だから、隼くんも春馬のことを慕ってるなら、少しはその辺気を使ってあげて欲しいな」
隼くんは頷きながら私の話をちゃんと聞いている。
大人気ないとは思いながらも、一言言ってやらないと気が済まなかった。
いくら生徒思いでも、私のような彼女を差し置いてまで最優先されてる子は許せなかったから。
「わかりました…。今までそれに気付なかった自分が恥ずかしいです。先生の言葉についつい甘えちゃってました……本当にごめんなさい」
私の棘のある言い方が刺さったのか、隼くんは案外素直にそう謝ってきた。
「分かったならいいよ。ホントはこんなこと、頼むのも変な話なんだろうけど。」
「いや、話してくれてありがとうございました。じゃないと俺、ずっと気づかずに佐伯先生の負担になってたと思うので…」
「気づいてくれてよかった。じゃ、そういうことだから」
私は謝り続ける隼くんを見て、もうこの子は春馬の邪魔をしないだろうと判断した。
正直、かってなイメージではもっと無神経で自己中心的な子だと思っていた。
だけど、その予想は大きく裏切られたようだ。
反省する隼くんを、私は許すことにした。
「もう降りていいよ。部活の時間なのに邪魔してごめんね」
私は助手席のドアを開け、隼くんに降りるよう促した。
隼くんは言われた通りに車から降り、また謝ってきた。
私が車を出すと、私の姿が見えなくなるまで頭を下げていた。
なんだ、春馬の言う通りすごくいい子じゃない。
私はちょっとだけ過去の自分が恥ずかしくなり、春馬の見る目はやっぱり間違いがないんだと思った。
今なら素直に謝れるわ…
私はそのまま帰宅して、夜8時過ぎに帰ってきた春馬に喧嘩の日のことを謝ったのだった。
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