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3人目:爽やか熱血顧問の話

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「佐伯先生、ありがとうございます…。」


俺の気持ちが届いたのか、隼はさっきまでの悲しそうな顔ではなく、少し安心したような表情で俺に礼を言った。


「……俺、最近ずっとそのことで悩んでたんです。どうするのがいいんだろうって…。だけどこんなこと、友達には相談できなくて…かと言って、大人に相談するとまるで責めてるみたいになりそうだったので…。だから……先生が俺の話を聞いてくれて、ずっと慰めてくれて……ほんとに安心したし、嬉しかったです。ありがとうございました」


時々悲しそうに口を緩めつつ、だけど真っ直ぐな瞳で俺に向かってそう言ってペコリと頭を下げた。


隼はまだ、完全に大人に対しての不信感を募らせてしまった訳ではないようだ。

まだまだ純粋で無垢な心を汚されないまま持っているんだ。


俺はそのことに大きく安心し、目の前のいじらしい隼をどうにかして救ってやりたいという気持ちでいっぱいだった。


「なあ隼。これからも何かあったら、真っ先に俺に相談してほしい。もちろん先生相手に言いにくいこともあるだろうが……」

「確かに先生方には言いにくい話もあります…けど、佐伯先生はあまりそういうのを意識しないまま話しやすいなって思ってます。もちろん先生として尊敬してますけど、一番何でも話せるのは佐伯先生です。」

「そうかそうかーそれはよかった!」

「はい。ずっと前から、佐伯先生は俺達生徒の気持ちも分かってくれるじゃないですか…だから、俺も今こうして先生と話せたおかげでかなり安心しました。」


俺は普段から「話しやすい」とか「いい意味で先生感がない」とか「近所の兄貴みたい」とか言われていた。

ぶっちゃけ、それって教師として適切なのかな?とたまに悩むこともあった。

だけど、俺の纏うそういう雰囲気が、こんなにも功を奏したことはなかったと思う。

隼の言葉を聞けば聞くほど、俺のやってきたことや意識してきた生徒への接し方は、決して間違いではなかったのかもしれないと思うことができた。


「お前にそう言ってもらえるのが一番嬉しいかも。………間違いなく、この学校でお前が先生たちとの距離が開いてるじゃん?物理的にも心理的にも。そんな中でも俺のことは変わらず思ってくれてるなら嬉しいわ」

「俺としては他の先生たちとも距離を縮めたいんですけどね…俺のことだけ腫れ物みたいに扱われちゃうのが少し寂しいです…」

「それはまあ、俺からも言っておくよ。特に奥山先生の代わりに来た担任とかはお前とこれからも沢山関わるだろうからな。あとは主任とかも」

「ありがとうございます…。」

「まあ、そんなに気負うなって。何でも俺を頼ってな」


ポン、と隼の頭を優しく叩いて俺は言う。


不思議と隼の為になることをしていると、正義感がいつも以上に溢れてくる。

まるでヒーローにでもなれるかのような錯覚に陥ってしまうのだ。

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