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3人目:爽やか熱血顧問の話

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「隼…俺は、そんなことにはならない。だって今まで部活動で何度も二人になったじゃないか…」

「そうですよね……なら、いいんですけど……」



そうだ。

俺はこれまで、何度も似たような状況になっていたのだ。

それなのに何も起こってない。


だから、大丈夫………


それよりも……



「……隼。お前、それ聞いたときショックだったよな?」

隼はこの話をしている間ずっと、悔しいような泣きたいような悲しいような顔をしていた。


それもそうだ。


自分が悪いわけではないのに、まるで自分のせいで大人たちが壊れていくと言われているようなものなのだから。


隼は何もしていないのに、勝手に壊れ消えていく大人たちの責任を、隼に押し付けているも同然なんだから……



「………はい………俺って、そんなに迷惑な存在なのかなって思って………先生たちに迷惑はかけたくないから、俺の方からも二人にならないようにはしてたんですけど……」

「迷惑なわけあるか!お前は何も悪くないよ隼。気を遣わせたりしてごめんな。悪いのは俺たち大人だよ!」


誰が隼にそんなこと言ったのだろうか。

俺だって生徒に対して軽率な発言をして、それを後から反省することはある。

だけど、こういう生徒を傷つけるような発言は絶対に許せない。


「隼。お前は何にも気にするな。お前と二人になったからって身を滅ぼすような大人はその程度なんだよ。お前のせいじゃない。大人としての制御ができてないだけなんだ。な?だから隼は、決して自分を責めるな。」

「ありがとうございます……」


今にも泣きそうな声で目を伏せる隼を見ると、あの決定をした会議も文書もそれを受け入れる大人たちも、何もかもに腹が立ってきた。


大人の都合で子供を傷つけるなんて……





俺は泣きそうな隼を抱きしめ、安心させようとした。



「大丈夫だからな隼。おまえは悪くない。絶対に悪くないんだよ」



一瞬は驚いて身を固めた隼だったが、俺が強く抱きしめそう声をかけると、小さく嗚咽する声が聞こえた。


「ごめん隼。傷ついたよな。ごめんな」


俺は何度もそういう言葉を言いながら、泣きじゃくる隼の背中を撫でる。

普段は人前で涙を流さず笑顔を絶やさない隼が、俺の腕の中では子供のように泣いている。


こいつが抱えてきた色んな苦しみや悲しみを、今ここで少しでも流してほしいと思った。


俺ならこいつのすべてを、喜んで受け止めたいと思えたし、受け止められると思った。








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