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3人目:爽やか熱血顧問の話
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「……先生……あの……」
数分くらい沈黙のまま探し物をしていた隼が、急に手を止めて俺の方へ振り向いた。
「どうした?見つかりそうか?」
「いえ……まだなんですけど……その、俺とここにいても大丈夫なんですか…?」
「ん?どういうこと?」
言い淀む隼の表情は、少し不安なような寂しいようなものだった。
俺は隼の言葉の意図が分からず、呑気な返事をした。
俺の勤務時間のこととかを気にしてくれてるのだろうか……
妙に大人びた気遣いをするこいつなら、あり得るかもな……
「気にすんなよ隼。俺らって、土日4時間以上働けば何時間働いても給料は同じなんだよwだからどーせ部活がある時点で何時間やろうが一緒w」
俺は隼を安心させるために、努めて明るくそう言った。
本当は生徒に残業代の話とかはしない方が良いのだろうが…
「そうなんですね……それは大変ですね…」
「こういう話じゃないのか?…なんだ、俺口滑らせて生徒に言っちゃいけんこと話しただけじゃんw」
「……今の話は聞かなかったことにするので安心してください」
「助かるぅー。てか、そういうことじゃないなら何だよ?」
「え?あ、あの…」
隼はそう言ったきり口を開かない。
俺に対して、察してほしいような目を向けてくる。
「……先生たちって、俺と二人きりになったらダメなんですよね…?」
意を決したように言う隼の言葉を、俺は一瞬理解することができなかった。
「ん?……あれ?お前それ誰かに言われた?」
「いや……まあ、聞いた感じです」
「え?まじで?……いやいやいや…」
俺は、まさか隼の口からその話が出てくるとは思ってもいなかったので、頭が状況に追いついていない。
あの会議の決定事項は、職員室からは一歩も出てはいけないはずだ。
だからもちろん、生徒は当事者含め誰一人として知らないはずの情報なのだ。
それなのに隼は今、自分と先生が二人きりになってはいけないルールを自分の口から言っていた。
それはつまり………
「隼、それ先生から聞いたってことだよな?」
俺は驚きを隠せないまま、完全に手を止め俺の方を向く隼に確かめた。
「………はい…………」
そう頷く隼の声は、聞いたこともないくらい消え入りそうな弱さだった。
俺は焦りなのか驚きなのかよく分からない感情で心臓がバクバクしていた。
なぜ、本人にそれが伝わっているんだ…
俺がどこかで漏らしたか?
……いや、そんな話はいまいままで忘れてしまっていたくらいだから言うはずはない。
あのプリントだって、確認したらすぐにシュレッダーにかけることになっていたはずだ。
だとしたらなんで……
「………先生たちは、俺と二人になると……身を滅ぼすって言われてるんですよね…?俺、佐伯先生にはそうなってほしくないです…」
驚きのあまり何も言えない俺を真っ直ぐ見つめて隼が訴えてくる。
だけどその瞳が、あまりにも悲しそうな色をしていた。
数分くらい沈黙のまま探し物をしていた隼が、急に手を止めて俺の方へ振り向いた。
「どうした?見つかりそうか?」
「いえ……まだなんですけど……その、俺とここにいても大丈夫なんですか…?」
「ん?どういうこと?」
言い淀む隼の表情は、少し不安なような寂しいようなものだった。
俺は隼の言葉の意図が分からず、呑気な返事をした。
俺の勤務時間のこととかを気にしてくれてるのだろうか……
妙に大人びた気遣いをするこいつなら、あり得るかもな……
「気にすんなよ隼。俺らって、土日4時間以上働けば何時間働いても給料は同じなんだよwだからどーせ部活がある時点で何時間やろうが一緒w」
俺は隼を安心させるために、努めて明るくそう言った。
本当は生徒に残業代の話とかはしない方が良いのだろうが…
「そうなんですね……それは大変ですね…」
「こういう話じゃないのか?…なんだ、俺口滑らせて生徒に言っちゃいけんこと話しただけじゃんw」
「……今の話は聞かなかったことにするので安心してください」
「助かるぅー。てか、そういうことじゃないなら何だよ?」
「え?あ、あの…」
隼はそう言ったきり口を開かない。
俺に対して、察してほしいような目を向けてくる。
「……先生たちって、俺と二人きりになったらダメなんですよね…?」
意を決したように言う隼の言葉を、俺は一瞬理解することができなかった。
「ん?……あれ?お前それ誰かに言われた?」
「いや……まあ、聞いた感じです」
「え?まじで?……いやいやいや…」
俺は、まさか隼の口からその話が出てくるとは思ってもいなかったので、頭が状況に追いついていない。
あの会議の決定事項は、職員室からは一歩も出てはいけないはずだ。
だからもちろん、生徒は当事者含め誰一人として知らないはずの情報なのだ。
それなのに隼は今、自分と先生が二人きりになってはいけないルールを自分の口から言っていた。
それはつまり………
「隼、それ先生から聞いたってことだよな?」
俺は驚きを隠せないまま、完全に手を止め俺の方を向く隼に確かめた。
「………はい…………」
そう頷く隼の声は、聞いたこともないくらい消え入りそうな弱さだった。
俺は焦りなのか驚きなのかよく分からない感情で心臓がバクバクしていた。
なぜ、本人にそれが伝わっているんだ…
俺がどこかで漏らしたか?
……いや、そんな話はいまいままで忘れてしまっていたくらいだから言うはずはない。
あのプリントだって、確認したらすぐにシュレッダーにかけることになっていたはずだ。
だとしたらなんで……
「………先生たちは、俺と二人になると……身を滅ぼすって言われてるんですよね…?俺、佐伯先生にはそうなってほしくないです…」
驚きのあまり何も言えない俺を真っ直ぐ見つめて隼が訴えてくる。
だけどその瞳が、あまりにも悲しそうな色をしていた。
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