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オレンジの海月
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「やだ……お兄ちゃんと一緒に住めなくなるなんて、絶対嫌だ!」
「ごめんな…お兄ちゃんだって嫌だよ」
「嘘つき!嫌じゃないから遠くに行くんでしょ!?私のことなんて、もうどうでもいいんだ!」
「んなわけないだろ。俺だってかなり悩んだよ。梨々を一人にするのが心配だから」
「だったら置いていかないでよ……」
私は大声で泣いた。
お兄ちゃんのばか!!
何度もそう言った。
私のことを置いて、遠くに行くなんて…
お兄ちゃんなんて大嫌い!
こう言って泣きじゃくる私に、お兄ちゃんはずっと困った顔をしていた。
「梨々、泣き止めよ……俺が高校に入るまではその分いっぱい遊ぶ……」
ピコン
お兄ちゃんの言葉を遮るように、大きな音の通知音が鳴る。
お兄ちゃんはちらりとスマホを見たけど、特に何もせずまた視線を私に戻した。
「……返さなくていいの?」
「いいよ。」
短くそう答えてお兄ちゃんはスマホを置く。
だけどそこには……女の人と写ったプリクラが貼られていた。
「お兄ちゃん……この人だれ?」
私が見たことのない人だった。
「この人は…お兄ちゃんの彼女だよ」
少し照れたようにお兄ちゃんが答える。
彼女……………
その言葉に、私の頭は真っ白になった。
ドンっ!!!
「ちょっ……梨々!何すんだよ…」
私は堪らず横にいるお兄ちゃんを押してから玄関へと駆けた。
イテテ、と言いながらお兄ちゃんはズレた眼鏡を直し、私を追いかけてくる。
「来ないで!!ほんとにお兄ちゃんは私のことなんてどうでもいいんでしょ!」
振り返ってお兄ちゃんに向かって言う。
二人が揉めていることを家族にバレたくなかったのか、お兄ちゃんは私に向かって小声で話した。
「梨々、俺は本当に何があっても梨々のことが大事だよ。それは遠くに行っても、彼女ができても変わらない。」
このときの私には、お兄ちゃんの言葉は全く響かなかった。
それよりも全身を刺すような強いショックが痛くて苦しくて息ができなくなりそうだった。
「……もういいよ。お兄ちゃんのことなんか信じないから!明日も海に行かない!」
私はそう言ってお母さんのところに行き、抱きついて泣いた。
お兄ちゃんは気まずそうに、だけどどこか悲しそうにして寝室に向かう。
あんな悲しい顔をするなんてずるい。
悲しいのは私なのに。
普段は大好きなお兄ちゃんのことが、この日はどうしても許せなかった。
「ごめんな…お兄ちゃんだって嫌だよ」
「嘘つき!嫌じゃないから遠くに行くんでしょ!?私のことなんて、もうどうでもいいんだ!」
「んなわけないだろ。俺だってかなり悩んだよ。梨々を一人にするのが心配だから」
「だったら置いていかないでよ……」
私は大声で泣いた。
お兄ちゃんのばか!!
何度もそう言った。
私のことを置いて、遠くに行くなんて…
お兄ちゃんなんて大嫌い!
こう言って泣きじゃくる私に、お兄ちゃんはずっと困った顔をしていた。
「梨々、泣き止めよ……俺が高校に入るまではその分いっぱい遊ぶ……」
ピコン
お兄ちゃんの言葉を遮るように、大きな音の通知音が鳴る。
お兄ちゃんはちらりとスマホを見たけど、特に何もせずまた視線を私に戻した。
「……返さなくていいの?」
「いいよ。」
短くそう答えてお兄ちゃんはスマホを置く。
だけどそこには……女の人と写ったプリクラが貼られていた。
「お兄ちゃん……この人だれ?」
私が見たことのない人だった。
「この人は…お兄ちゃんの彼女だよ」
少し照れたようにお兄ちゃんが答える。
彼女……………
その言葉に、私の頭は真っ白になった。
ドンっ!!!
「ちょっ……梨々!何すんだよ…」
私は堪らず横にいるお兄ちゃんを押してから玄関へと駆けた。
イテテ、と言いながらお兄ちゃんはズレた眼鏡を直し、私を追いかけてくる。
「来ないで!!ほんとにお兄ちゃんは私のことなんてどうでもいいんでしょ!」
振り返ってお兄ちゃんに向かって言う。
二人が揉めていることを家族にバレたくなかったのか、お兄ちゃんは私に向かって小声で話した。
「梨々、俺は本当に何があっても梨々のことが大事だよ。それは遠くに行っても、彼女ができても変わらない。」
このときの私には、お兄ちゃんの言葉は全く響かなかった。
それよりも全身を刺すような強いショックが痛くて苦しくて息ができなくなりそうだった。
「……もういいよ。お兄ちゃんのことなんか信じないから!明日も海に行かない!」
私はそう言ってお母さんのところに行き、抱きついて泣いた。
お兄ちゃんは気まずそうに、だけどどこか悲しそうにして寝室に向かう。
あんな悲しい顔をするなんてずるい。
悲しいのは私なのに。
普段は大好きなお兄ちゃんのことが、この日はどうしても許せなかった。
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