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昼食を食べたあと、僕たちは売店に移動した。

さっき手を振ってきた子どもたちが遊園地のキャラクターの被り物をし、顔にペイントをしているのを見て、菜摘さんが自分たちもそれをやりたいと言い出したからだ。

確かに午前中、そういった仮装をしている人たちは沢山見てきた。

僕は正直自分がそれをやるのは少し恥ずかしくて抵抗があったが、菜摘さんがどうしてもと言うので、まあ思い出作りにはいいかもしれないと思い、菜摘さんの言う通り、売店までやって来たのだった。

「隼くん、お揃いにしましょ!隼くんは何がいい?」

「僕は…なんでもいいよ。」

「……隼くんってば精神的に大人過ぎて、本当はコスプレとかも嫌なんでしょ?……でも、いくら嫌でも、私がやりたいって言えばやってくれるでしょう?」

「その通りだよ…さすが菜摘さん。」

「ふふふー。嫌々つけてる隼も可愛いもんね!よし!これにしちゃえ!私と色違いのクマさんの耳!」

「…」

僕ははしゃぎまくる菜摘さんに言われるがまま、男が付けるには可愛すぎるフワフワの熊のカチューシャのようなものを頭に着けられた。

「隼くんかっわいい~!!さすが美少年!こういうのも似合うわ!そして少し不服そうにしてるのも余計に可愛い!」

「何いってんの……恥ずかしいよ…」

「よし!次はペイントしてもらうわよ!」

菜摘さんにグイグイと手を引っ張られて、僕はそのまま顔にも可愛らしいペイントを施された。

ペイント屋さんのおじさんは、ポップでカラフルなシールのようなものを僕たちの顔にペタペタと貼り、派手な色をした特殊なペンでスルスルとキャラクターを描いていった。

「隼くんったら……本当に可愛いわぁ~…」

「こんなことしたの初めてだよ…」

「ふふ。隼くんの初めてをまたまたゲット!」

「菜摘さんも……可愛いよ。すごく似合ってる。」

「さすが隼くん!多少不服でも私へのフォローは忘れないのね!そういうところも大好きよ!」

「あっ……」

菜摘さんはこれまで見たことないくらいの高いテンションのまま、僕に思いっきり抱き着いてきた。

僕は一瞬よろけそうになったが、それを察した菜摘さんが軽く僕の体を支えるようにしてくれた。

子供のようにはしゃぎながらも、こういうところはやっぱり大人なんだなと思うと、僕も菜摘さんへの愛しさが増していった。

「さぁ~午後も遊ぶわよ!まだまだ半分くらいしか回ってないもの。ほとんど全部を乗り尽くす勢いで回るのよ!」

改めて気合を入れ直した菜摘さんは、キラキラの笑顔を僕に向けて歩き出した。

僕は彼女の手の引く方に、体を委ねながら歩いていった。
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