青春日記~禁断の恋だとしても、忘れられない日常を綴ります~

いちごみるく

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僕の誕生日から約1週間が経った土曜日。

この日は特別に親に許可を貰って、塾を休んで1日中菜摘さんと会えることになった。

「わぁ~…人が沢山。わたし、人酔いしないかしら…」

誕生日に村上くんがチケットをくれた遊園地のエントランスで、菜摘さんは少し不安そうな声を出した。

「隼くんも、あんまりこういうところには来ないでしょう?」

「うん、そうだね。小さい頃は、何度か家族で来たような気がするけど……。」

「そうなのね。……わたしたちも、きっと外からは姉弟に見えるわよね。」

「確かに…そうだね。」

そんな会話をしながら、ふと互いの顔を見て笑い合った。

僕たちの横を通り過ぎていく雑踏は、賑やかな音を立てて遊園地へと吸い込まれていく。

風船を片手にはしゃいでいる子供や手を繋いで楽しそうにしているカップルたちに囲まれて、僕と菜摘さんは遊園地のエントランスの前で二人して突っ立っていた。

「菜摘さん…人酔い大丈夫?無理しないでね。」

「大丈夫よ。久しぶりに人が多いところに来たからびっくりしただけ。せっかく村上くんがチケットをくれたんだもの。ちゃんと中に入って思いっきり楽しむわよ!」

「うん…!そうだね。遊園地は元々、人が楽しむためにつくられた施設なんだから…楽しくないはずがないよ!」

バリバリのインドア派の僕たちは、いつものデートでも菜摘さんの家で二人でこもるか、外出しても人気のない場所だったり、映画館や美術館や博物館、図書館にばかり出かけていた。

テーマパークや遊園地、流行りの人気観光スポットやお祭りなど、人の多い場所は自然と避けていたのだった。

それほどまでに人混みや賑やかな場所に慣れない僕らは、そんなことを言い合いながら、ゆっくりと1歩を踏み出したのだった。
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