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「そういえば隼くん。今日、学校の人から何か貰ったりしなかった?」
 
夏休みが明けた月曜日。
 
今日は、いつも通っている塾が急遽休みになったため、特別に平日に菜摘さんと会うことができた。
 
いつもの公園のベンチに座って談笑している時、菜摘さんがそんなことを聞いてきた。
 
「うん、もらったよ。多分僕にくれたんだとは思うけど…確証はないんだよね。でも…どうして分かったの?」
 
実は今日、自分の机の中に、身に覚えのない白いハンカチが入っていたのだった。
 
綺麗にラッピングされている新品だったので、きっと誰かが僕にくれたのだろうとすぐに分かった。
 
だけどそこにくれた人の名前がなく、一瞬間違いかとも思った。
 
しかし今の菜摘さんの言葉で、矢張りあれは僕にくれたものなのだろうと思うことができたのだが…
 
「実はね、それをあげた女の子が、私に昨日相談しに来たのよ。」
 
どうして菜摘さんが分かるのだろう、という顔をした僕の疑問に答えてくれるかのように、菜摘さんはそう話し始めた。
 
「菜摘さんに相談した女の子…?」
 
「そう。昭恵ちゃんじゃないわよ。」
 
「え…じゃあ誰が…」
 
「…それは私の口からは言わない。その子も、『きっと隼くんなら気づいてくれる』って言ってたもの。」
 
「……」
 
菜摘さんの言葉に、僕は一瞬考え込んでしまった。
 
そのまましばらく考えていると、ふとある一人のクラスメイトの存在が浮かび上がってきた。
 
「…なんとなく、わかったかもしれない…」
 
無意識のうちにそう呟いていた。
 
菜摘さんは、口元に微笑を浮かべながら僕の方を見ていた。
 
「…多分、誰がくれたのか分かった気がするよ。僕にくれたものと、同じハンカチを持ってる子がいるんだよね。」
 
「へえ。その子とは何か話したの?」
 
「うん。夏休み前だけどね。」
 
「その子にお礼されるようなことをしたのね。」
 
「うーん…どうなんだろ…あのときはすごく迷惑そうにしてたから、感謝されてるとは思えなかったけどな…」
 
夏休み前の出来事を思い返してみても、その子は終始僕に怒っていたような気がした。
 
だから、今になってハンカチをくれたことにどんな意味があるのかは、正直見当がつかなかった。
 
「隼くんが女の子を怒らせることがあるの?むしろモテモテじゃない。」
 
「…あったね。僕、しばらく皆からいじめられてたから。」
 
「それ、関係あるの?」
 
「うん…関係は大いにあるよ…」
 
不思議そうに僕を見る菜摘さんを横目に、僕はその日のことを思い出していた。
 
そして少し胸が苦しくなっていた。
 
「隼くんとそのこの間に何があったのか、聞きたいな。」
 
悶々とした顔をしている僕に、優しく伺うように菜摘さんがそう言ってきた。
 
確かに僕も、今の菜摘さんの立場だったら色々聞きたいだろうなと思っていたから、僕は彼女に話すことにした。
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