177 / 217
21頁
2
しおりを挟む
「ほら隼くん!ここにも建物があるのよ!」
僕の前をひらひらと舞うように歩く菜摘さんは、太陽の陽に当たって明るくなったロングヘアーを靡かせながら、向日葵のような弾んだ声で僕を呼ぶ。
真っ白なワンピースが翻る度に、甘いシャボンの香りが風と共に弾ける。
真っ青な空と深緑の木々が向かい合う大自然の中、僕らはまるで昔の絵本に出てくるような浮世的な遊びをしていた。
「ほら!ここ、すごいでしょう?こっちは主にお風呂よ。洗濯機もある。」
「本当だ……ここが全部菜摘さんの家で所有してるなんてすごいや…」
僕は改めて周りを見渡しながら、心底驚いて言う。
僕と菜摘さんは今、菜摘さんの実家が所有しているという別荘に来ていた。
別荘と言っても大きな建物が一つある訳ではなく、小さな木製のコテージのようなものがいくつか疎らに建ってるようなものだった。
砂浜が続く海岸から少し離れた場所に孤島のようにぽつんと浮かぶ森があり、そこが全て菜摘さんの実家の土地なのだそうだ。
鬱蒼と茂る木々の隙間から、青く輝く夏の海が見える。
真っ白な砂浜は、強い日差しを反射して朧気な陽炎を作る。
僕は夏休みの中の一週間、ここで菜摘さんと過ごすことができるのだ。
「それにしても、まさか隼くんのご両親が認めてくれるとは思わなかったわ。ここに一週間も隼くんを連れ込むこと。」
「僕も、正直ダメ元で交渉したんだけどね…。たまには息抜きも必要だろう、ってさ。」
「まあ、隼くんは普段心配になるくらい勉強してるからね。それに、模試の成績だってどんどん上がってきてるんでしょう?毎回A判定を出してるなら、そりゃあ親としても安心するものね。」
「うん…夏休みまでの間、頑張っててよかったよ。」
「本当そうよ。隼くんは偉いわ。」
僕の頭を優しく撫でる菜摘さんの手の柔らかさに、僕は安心した気持ちになった。
普段過ごしている場所とは似ても似つかない小さな森の中にいると、そのあまりの非日常的な雰囲気に、つい心細くなることもあるからだ。
だけど菜摘さんと触れ合っていると、それだけで一気に「日常」ぽさが取り戻される。
世俗を離れた不思議な空間にいながら、菜摘さんといつものような会話や触れ合いをするという矛盾が、とても新鮮でワクワクする。
僕はここで、これから一週間菜摘さんとたっぷり思い出を作るのだ。
僕の前をひらひらと舞うように歩く菜摘さんは、太陽の陽に当たって明るくなったロングヘアーを靡かせながら、向日葵のような弾んだ声で僕を呼ぶ。
真っ白なワンピースが翻る度に、甘いシャボンの香りが風と共に弾ける。
真っ青な空と深緑の木々が向かい合う大自然の中、僕らはまるで昔の絵本に出てくるような浮世的な遊びをしていた。
「ほら!ここ、すごいでしょう?こっちは主にお風呂よ。洗濯機もある。」
「本当だ……ここが全部菜摘さんの家で所有してるなんてすごいや…」
僕は改めて周りを見渡しながら、心底驚いて言う。
僕と菜摘さんは今、菜摘さんの実家が所有しているという別荘に来ていた。
別荘と言っても大きな建物が一つある訳ではなく、小さな木製のコテージのようなものがいくつか疎らに建ってるようなものだった。
砂浜が続く海岸から少し離れた場所に孤島のようにぽつんと浮かぶ森があり、そこが全て菜摘さんの実家の土地なのだそうだ。
鬱蒼と茂る木々の隙間から、青く輝く夏の海が見える。
真っ白な砂浜は、強い日差しを反射して朧気な陽炎を作る。
僕は夏休みの中の一週間、ここで菜摘さんと過ごすことができるのだ。
「それにしても、まさか隼くんのご両親が認めてくれるとは思わなかったわ。ここに一週間も隼くんを連れ込むこと。」
「僕も、正直ダメ元で交渉したんだけどね…。たまには息抜きも必要だろう、ってさ。」
「まあ、隼くんは普段心配になるくらい勉強してるからね。それに、模試の成績だってどんどん上がってきてるんでしょう?毎回A判定を出してるなら、そりゃあ親としても安心するものね。」
「うん…夏休みまでの間、頑張っててよかったよ。」
「本当そうよ。隼くんは偉いわ。」
僕の頭を優しく撫でる菜摘さんの手の柔らかさに、僕は安心した気持ちになった。
普段過ごしている場所とは似ても似つかない小さな森の中にいると、そのあまりの非日常的な雰囲気に、つい心細くなることもあるからだ。
だけど菜摘さんと触れ合っていると、それだけで一気に「日常」ぽさが取り戻される。
世俗を離れた不思議な空間にいながら、菜摘さんといつものような会話や触れ合いをするという矛盾が、とても新鮮でワクワクする。
僕はここで、これから一週間菜摘さんとたっぷり思い出を作るのだ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
その男、人の人生を狂わせるので注意が必要
いちごみるく
現代文学
「あいつに関わると、人生が狂わされる」
「密室で二人きりになるのが禁止になった」
「関わった人みんな好きになる…」
こんな伝説を残した男が、ある中学にいた。
見知らぬ小グレ集団、警察官、幼馴染の年上、担任教師、部活の後輩に顧問まで……
関わる人すべてを夢中にさせ、頭の中を自分のことで支配させてしまう。
無意識に人を惹き込むその少年を、人は魔性の男と呼ぶ。
そんな彼に関わった人たちがどのように人生を壊していくのか……
地位や年齢、性別は関係ない。
抱える悩みや劣等感を少し刺激されるだけで、人の人生は呆気なく崩れていく。
色んな人物が、ある一人の男によって人生をジワジワと壊していく様子をリアルに描いた物語。
嫉妬、自己顕示欲、愛情不足、孤立、虚言……
現代に溢れる人間の醜い部分を自覚する者と自覚せずに目を背ける者…。
彼らの運命は、主人公・醍醐隼に翻弄される中で確実に分かれていく。
※なお、筆者の拙作『あんなに堅物だった俺を、解してくれたお前の腕が』に出てくる人物たちがこの作品でもメインになります。ご興味があれば、そちらも是非!
※長い作品ですが、1話が300〜1500字程度です。少しずつ読んで頂くことも可能です!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる