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「それじゃあ、隼との交際を知っているのはこの二人だけってことなんですか?」


ある5月の日曜日。

僕の家には菜摘さん、村上くん、昭恵さんが集まっていた。


事前にこの三人と軽い打ち合わせをしたり、両親に三人のことをざっと説明したりしていたため、思いの外スムーズに事が運んだ。

僕の家に三人が来てから30分ほどが経過した今、来てくれた三人も僕の家族も、来た当初のような緊張感が少しずつ解れているように見えた。

僕の父親はあまり話さないタイプであるが、母親は初対面の人とも割と簡単に打ち解けることができる人であるため、菜摘さんとも既に色んな話をしていた。


「そうですね。この子たちなら隼くんのことも大切にしてくれているし、信頼できるかなと思いまして。」

「そうなんですねぇ。いや実はね、隼が学校で友達を作れていないんじゃないかと心配でしたから…安心しましたよ。昭恵ちゃんに村上くん。隼と仲良くしてくれてありがとうね。」

「……はい…」

「こちらこそ、隼くんには大変お世話になってます。」


母の言葉に緊張気味に答える村上くんと、対象的に大人のようにシャンとして答える昭恵さん。

そんな二人を見守る母親と菜摘さんの目がとても優しくて、僕は今日が来るまで何度も頭の中で妄想していた、所謂『修羅場』にならなさそうで本当によかったと安心していた。


「でもね、僕がこの二人と仲良くなれたきっかけを作ってくれたのは菜摘さんなんだよ。菜摘さんのお陰で、僕は村上くんや昭恵さんと友達になれたんだ。」

「あらそうなの?」

「そんな…。私は特に何もしていませんよ。村上くんも昭恵ちゃんも私と親しかったから、自然と隼くんも二人と仲良くなったんですから。ね?二人とも」

「……まあでも…菜摘さんと隼が付き合ってるって知ってから隼と喋ることが増えたかも。」

「私も菜摘さんには色んな相談を聞いてもらってたなぁ…。だからこそ、菜摘さんとお付き合いしている隼くんにも話を聞いてもらう機会も増えたんですよ。」

僕の言葉に、村上くんと昭恵さんが乗ってくれた。

『菜摘さんのお陰でいじめられがちな僕に友達が出来た』

こう話すことで、僕の両親の菜摘さんへの評価を上げようという気づかいなのだと僕はすぐに気づいた。


「本当に…この子たちはいい子たちです。」

菜摘さんもそんな二人の気遣いに気付いたのか、優しい笑顔でそんなことを言っていた。
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