青春日記~禁断の恋だとしても、忘れられない日常を綴ります~

いちごみるく

文字の大きさ
上 下
149 / 217
18頁

6

しおりを挟む
「昭恵さん…!!」

咄嗟に変な声でそう言ったのが耳に響いた。

僕の狼狽え具合に反して、村上くんは冷静な表情のままだ。


「隼くん、菜摘さんと付き合ってたの?いつから?」

「えーと…その…」

「言っちゃえよ隼。なんならこの計画に昭恵も巻き込んじゃえば良いんじゃね?」

「え?いやいやそれは…」

「だいたい話は聞いてたけど、私も隼くんのお家に行けるなら協力してもいいわよ。菜摘さんと隼くんが仲良くしているところを見てみたい気もするし。」

「え!いいの?昭恵さんも来てくれるの?」

「いいよ。」


思ってもみなかった昭恵さんの言葉に、僕はまた驚かされた。

その驚きのあまり、菜摘さんと付き合っていることが昭恵さんに知られてしまったことに対しての不安や焦りは一気に陰と隠れてしまった。

「なんかごめんね二人とも…巻き込んじゃって。」

「本当だよなー。まあ俺は菜摘さんの為にやるけどさ。」

「私も!隼くんと菜摘さんが付き合ってることは、正直少し予想してたのよね。だからショックはショックだけど、それ以上に二人がどんな感じで仲良くしてるのかを見てみたいっていう気持ちもあるの。……それに…ふとしたときに仲睦まじい様子を見せられると、悲しいやら嫉妬やらで自分が大変なことになりそうだけど…隼くんの両親の前だとそんな心配もなく諦めがつきそうだもの。だから話に乗せてもらったのよ。」


昭恵さんが協力してくれたことが意外すぎて不思議だったが、彼女は自らこの計画に協力した動機を話してくれた。

つくづく僕らは、他人を犠牲にしながら二人の幸せを享受しているのだなということを自覚させられた。

世の中に一対の男女のみが存在しているのなら、恐らくこんな苦悩はないのだろう。

むしろ溢れるほどの恋愛対象がいる限りは、僕らのように誰かの気持ちを犠牲にし、誰かの我慢と羨望と諦念と嫉妬の裏で幸せになることなんて、ある意味は避けられない事象なのかもしれない。

恋愛や交際や結婚という行為がある限りは、それはある意味当然のことなのだ。

それなのに、僕はどうもこのことが、友達や級友の気持ちを踏み躙る凄惨たる罪を犯しているように思えてならない。

そしてそれは、僕たちの関係が持つ後ろめたさと非公表性によるものなのかもしれないと思った。

誰にも知られてはいけない関係だからこそ、その関係を知るごく少数の人間には、普通の関係を知っている場合の何倍もの負担がのしかかる。

そしてそんな苦労を進んで引き受けてくれるこの二人の特別な人間性と人格に出会えたことは、僕らがこの関係を隠さずにいられるようになるまでの道のりが、だいぶ楽なものになってくれるのかもしれないという期待をもたらした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

土俵の華〜女子相撲譚〜

葉月空
青春
土俵の華は女子相撲を題材にした青春群像劇です。 相撲が好きな美月が女子大相撲の横綱になるまでの物語 でも美月は体が弱く母親には相撲を辞める様に言われるが美月は母の反対を押し切ってまで相撲を続けてる。何故、彼女は母親の意見を押し切ってまで相撲も続けるのか そして、美月は横綱になれるのか? ご意見や感想もお待ちしております。

処理中です...