青春日記~禁断の恋だとしても、忘れられない日常を綴ります~

いちごみるく

文字の大きさ
上 下
133 / 217
17頁

2

しおりを挟む
4月も下旬に入った。

春の街を淡く染めていた桜の木々も、次第に緑の葉が太陽の光を反射するようになる。

徐々に暖かい日が増えてきた。

早くも初夏に突入したかのような眩しい木漏れ日と澄んだ空は、思わず街行く人たちの目を細めさせる。


そんな晴れた春のある日、僕は放課後に日直の仕事をする為に少しだけ居残りをしていた。

学級日誌を書き、窓の戸締まりをし、机の配置を元に戻した。

全て完了し、あとは職員室へ学級日誌を提出しに行くだけだと思い、僕は自分のランドセルを背負って教室から出ようとした。

「……あっ!……隼くん…」

「昭恵さん!」


教室のドアを開けると、そこには昭恵さんがランドセルを背負ったまま立っていた。


「昭恵さん、どうしたの?忘れ物でもした?」

「ううん…そんなんじゃないんだけど…。」


僕の問いかけに辿々しく答え、俯いたまま目を合わせない。

僕は不思議に思い、昭恵さんの言葉を待っていた。


「あの、隼くん…菜摘さんと、彼氏について話した…?」

「え…」

「あの日…隼くんは菜摘さんと公園で話してたでしょ?だから、菜摘さんに何か言ったのかなと思って」


どこかバツが悪そうに途切れ途切れに昭恵さんの口から出てくる言葉に、僕は自分の顔が徐々に熱くなっていくのを感じた。

昭恵さんと噴水の前で話した後、わざわざ公園へ引き返し、そこで菜摘さんと僕が一緒にいるところを見られていたとは…。

それに菜摘さんに彼氏のことを尋ねたというのも事実なので、謎の後ろめたさが背中に這っていった。


「そうだね…菜摘さんに聞いてみたよ。だけど、昭恵さんたちが彼氏だと思ってた人は、菜摘さんの義理のお兄さんなんだって。だから彼氏さんでも何でもないし、ただの親戚だって言ってたよ…。」


僕はまるで自分に改めて言い聞かせるように、菜摘さんと例の義兄の関係性を説明した。

自分でも可笑しくなるくらい、ゆっくりと言葉を繋いだ。


「なんだ…そうだったのね…。」

俯いていた顔をそのまま斜め下に動かし、消え入りそうな声で昭恵さんが呟いた。

「うん…そうみたい。」

僕は昭恵さんが何故意気消沈しているのか、なんと無く察しながらも、敢えてそのような気のない返事をした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

いちごみるく
現代文学
「あいつに関わると、人生が狂わされる」 「密室で二人きりになるのが禁止になった」 「関わった人みんな好きになる…」 こんな伝説を残した男が、ある中学にいた。 見知らぬ小グレ集団、警察官、幼馴染の年上、担任教師、部活の後輩に顧問まで…… 関わる人すべてを夢中にさせ、頭の中を自分のことで支配させてしまう。 無意識に人を惹き込むその少年を、人は魔性の男と呼ぶ。 そんな彼に関わった人たちがどのように人生を壊していくのか…… 地位や年齢、性別は関係ない。 抱える悩みや劣等感を少し刺激されるだけで、人の人生は呆気なく崩れていく。 色んな人物が、ある一人の男によって人生をジワジワと壊していく様子をリアルに描いた物語。 嫉妬、自己顕示欲、愛情不足、孤立、虚言…… 現代に溢れる人間の醜い部分を自覚する者と自覚せずに目を背ける者…。 彼らの運命は、主人公・醍醐隼に翻弄される中で確実に分かれていく。 ※なお、筆者の拙作『あんなに堅物だった俺を、解してくれたお前の腕が』に出てくる人物たちがこの作品でもメインになります。ご興味があれば、そちらも是非! ※長い作品ですが、1話が300〜1500字程度です。少しずつ読んで頂くことも可能です!

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...