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頭でいくら考えても、経験の少ない僕には埒が明かないので、明日思い切って菜摘さんに聞いてみることにした。
僕が真っ先に思い浮かんだのがたまたま義兄なだけであって、本当に菜摘さんには僕の他に彼氏がいるのかもしれない……。
仮にそうだとしても、そんな信じたくもないことを彼女は正直に僕に話してくれるだろうか。
それとも、そもそも昭恵さんたちの話自体が作り話なのだろうか…
そうであって欲しい。
強くそう願わずにはいられないまま、僕は混沌とした頭を無理矢理休ませるように眠りについた。
「ああ、腕を組んでた男性?あれは隼くんの予想通り、姉の旦那さんよ。確かに角度によっては腕を組んでたように見えたのかもしれないけど、あの時、私が具合を悪くしてお義兄さんが支えてくれてたのよ。誤解されるようなことをした私が悪いわ。ごめんね。」
翌日。
僕たちはいつものように、菜摘さんが他の児童たちと遊び終わってから彼女の家へ行った。
昨日昭恵さんから聞いたことについて尋ねてみると、菜摘さんはこう答えた。
「そうだったんだ……。僕の方こそ疑うような聞き方をしてごめんなさい」
「いいのよ。疑われて当然だもの。…確かに私たち義兄妹は少し距離感が近すぎたから…。これからは誤解されないようにするわね。」
僕がこのことについて尋ねた時、菜摘さんはいつか僕から聞かれることを想定していたかのような反応をした。
そんな反応もあって、僕は菜摘さんの言葉を信じても良いと判断した。
「…昨日菜摘さんが僕に不安にさせないでって言ってたけど…僕だってかなり不安になったんだからね。」
「うん…そうよね、ごめんね隼くん。私も隼くんの事を言えないわね。」
「ううん…。誤解を解いてくれたから大丈夫。」
「それでも不安がらせたのは事実よ。…これからももし何か不安になったり疑いたくなったりしたら、すぐに私に言ってね。私は隼くんを不安にさせたくないから…。」
菜摘さんの暖かい胸の中でそんなことを言われると、僕は素直に頷くしかなくなってしまう。
彼女が持つ柔らかい感触と暖かい声は、僕の尖った不安の先を少しずつ丸く削っていくように、ゆっくりと心に染み込んでいった。
菜摘さんの男性人気が高いことについて、付き合った当初は散々悩んだのに、僕たちの関係があまりにも順調すぎたから、つい忘れてしまっていたのだ。
だけど菜摘さんはいくら男性から好かれていても、いくら仲の良い男性がいても、僕のことだけを好きでいてくれる…。
不安にさせまいと努力しようとしてくれている…。
その事を再確認できたということは、これからは逆に安心しても良いのかもしれない……。
まだまだ子供な僕は、こんなことを考えて、いつものように菜摘さんとの甘い時を過ごしたのである。
僕が真っ先に思い浮かんだのがたまたま義兄なだけであって、本当に菜摘さんには僕の他に彼氏がいるのかもしれない……。
仮にそうだとしても、そんな信じたくもないことを彼女は正直に僕に話してくれるだろうか。
それとも、そもそも昭恵さんたちの話自体が作り話なのだろうか…
そうであって欲しい。
強くそう願わずにはいられないまま、僕は混沌とした頭を無理矢理休ませるように眠りについた。
「ああ、腕を組んでた男性?あれは隼くんの予想通り、姉の旦那さんよ。確かに角度によっては腕を組んでたように見えたのかもしれないけど、あの時、私が具合を悪くしてお義兄さんが支えてくれてたのよ。誤解されるようなことをした私が悪いわ。ごめんね。」
翌日。
僕たちはいつものように、菜摘さんが他の児童たちと遊び終わってから彼女の家へ行った。
昨日昭恵さんから聞いたことについて尋ねてみると、菜摘さんはこう答えた。
「そうだったんだ……。僕の方こそ疑うような聞き方をしてごめんなさい」
「いいのよ。疑われて当然だもの。…確かに私たち義兄妹は少し距離感が近すぎたから…。これからは誤解されないようにするわね。」
僕がこのことについて尋ねた時、菜摘さんはいつか僕から聞かれることを想定していたかのような反応をした。
そんな反応もあって、僕は菜摘さんの言葉を信じても良いと判断した。
「…昨日菜摘さんが僕に不安にさせないでって言ってたけど…僕だってかなり不安になったんだからね。」
「うん…そうよね、ごめんね隼くん。私も隼くんの事を言えないわね。」
「ううん…。誤解を解いてくれたから大丈夫。」
「それでも不安がらせたのは事実よ。…これからももし何か不安になったり疑いたくなったりしたら、すぐに私に言ってね。私は隼くんを不安にさせたくないから…。」
菜摘さんの暖かい胸の中でそんなことを言われると、僕は素直に頷くしかなくなってしまう。
彼女が持つ柔らかい感触と暖かい声は、僕の尖った不安の先を少しずつ丸く削っていくように、ゆっくりと心に染み込んでいった。
菜摘さんの男性人気が高いことについて、付き合った当初は散々悩んだのに、僕たちの関係があまりにも順調すぎたから、つい忘れてしまっていたのだ。
だけど菜摘さんはいくら男性から好かれていても、いくら仲の良い男性がいても、僕のことだけを好きでいてくれる…。
不安にさせまいと努力しようとしてくれている…。
その事を再確認できたということは、これからは逆に安心しても良いのかもしれない……。
まだまだ子供な僕は、こんなことを考えて、いつものように菜摘さんとの甘い時を過ごしたのである。
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