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「ねえ隼くん。ちょっといい?」


僕が朧気に目を逸したのを見逃さなかったのだろう。

間髪入れずに昭恵さんたちが僕の席にやって来た。

「……どうしたの……?」

クラスの女子と……それも、夏に大事件に巻き込んでしまった女子と話すということに慣れていなかった僕は、思わず伏し目がちになりながら、若干声を震わせて彼女に答えた。

恐る恐る昭恵さんの顔を見ると、どこか気色ばんたような……

真っ黒な瞳の奥で見えぬ炎が燃えているような

そんな不思議な活力を滾らせながら、僕を睨みつけるようにして見下していた。


「昨日、公園で菜摘さんと話したの。……バレンタインの日、隼くんの靴棚にチョコが入ってたでしょう?あれ、ちゃんと食べた?」

「う、うん。もちろん食べたよ…」

「だけど隼くん、そのチョコをくれた子が誰かなんて全く気にしてなさそうだったね。」

「そんなことないよ…!そりゃあ気になったよ……それで…僕も昨日、菜摘さんから聞いたんだよ…その…」

「私たちの中の誰かがあげたってことを聞いたんでしょう?」

「うん……」

僕が頷くと、昭恵さんたちは苦笑いしながら互いに顔を見合わせていた。

「隼くんは、私たち三人のうち、誰かからチョコをもらって、そして好きって言われたら嬉しいと思う?」

「へ…?」

「あれはね、私たち全員の気持ちなの……。つまり、私たちは3人とも隼くんのことが…好きなの…。」


思いもよらない告白に、僕は口を開けてしばらく閉ざすことができなかった。
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