上 下
118 / 214
15頁

8

しおりを挟む
次の日。

僕は教室に入るなり、無意識に昭恵さんを見てしまった。

僕の席は窓際の一番後ろで、昭恵さんの席は反対側の廊下に近い所だ。

彼女は本人含め、3人の友達と談笑していた。

(菜摘さんの話を聞くに…あの中の誰かが僕にチョコをくれたっていうことなんだよね…?)

ぼんやりと彼女たちの方を見つめながら、にわかに信じられない事実について考えていた。

(昭恵さんは、僕のせいで……僕が誤解を解かなかったせいで、傷ついていたはずなのに…)


蘇る夏のあの日の出来事。

田中くんや昭恵さん、担任の先生、そしてクラスメイトの女子たちから向けられた軽蔑と憎悪の目。

あんな目を見てしまったからこそ、それらを向けてきた女子の中に僕に好意を持ってくれている子がいるだなんて、やっぱり考えられなかった。

(……あんまり考えなくないけど…もしかしたら凄く手の込んだいたずらかもしれないし…。田中くんたちが絡んでいて、昭恵さんたちにやらせたのかもしれない。僕と菜摘さんが仲良くしていることを知っていて、敢えて菜摘さんを通して僕を揶揄っているだけなのかもしれない……。)


自分でも嫌になるくらい捻くれた発想だったが、不思議とこちらの可能性の方が高く感じてしっくりくる。

きっとそうだ…

僕のことを好きでいてくれる人なんて、このクラスには…この学校にはいる訳がないんだから……。



そう思い込んで、僕は昭恵さんたちから目を逸らした。
しおりを挟む

処理中です...