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「ねえ隼くん!私もお菓子、少し食べたいな。」
向かい合って座っていた菜摘さんが、そう言いながら突然僕の隣に移動してきた。
僕は菜摘さんに貰ったお菓子の残りを机の上に置き、箱を開けた。
「私ね、これ食べたい!」
そう言って指を差した先にあったのは、輪切りのオレンジがトッピングされたブラウニーだった。
「いいよ。一緒に食べよう。」
僕はそのブラウニーを箱から取り出し、菜摘さんに渡そうとした。
「待って!……隼くん、それ食べさせてくれない?」
「えっ?」
僕の手を制するように菜摘さんも自分の手をかざし、もう一方の手を口元に持って来てそんなことを言う。
「あーんして食べさせて?ほら。」
急かすような口調と共に、菜摘さんは真っ直ぐ僕を見つめて口を開ける。
「……は、はい……」
初めてする行為に恥ずかしさと戸惑いを隠せないまま、僕は恐る恐る菜摘さんの口元にブラウニーを運んだ。
すると菜摘さんはブラウニーの先の部分だけを軽く口に咥え、残りの部分を僕に突き出すようにしてきた。
「えっ……な、菜摘さん……?」
「……んっ!」
僕が戸惑っていると、菜摘さんは早くしてと言わんばかりに何度も僕の方へと口を突き出す。
「………っ」
僕はドキドキしながら、ゆっくりと自分の口をブラウニーへと近づける。
そして菜摘さんが咥えているのとは反対側を軽く口に入れる。
「……んふふっ」
菜摘さんはそんな僕の様子を見て、楽しそうに笑いながら口を僕の方へと近づけてくる。
僕がその様子を見ていると、菜摘さんは僕の背中に手を回して、グイッと菜摘さん側へと引き寄せた。
少しずつ近づいていく唇は、普段のキスとは違う。
二人で一つのブラウニーを食べながらも、キスをするような雰囲気が漂っている。
いつものキスとは違う、どこか甘美な接近は、無意識にも僕の体を火照らせた。
「……んっ……」
唇の距離が0センチになったとき、菜摘さんは僕の口に舌を入れてきた。
僕はそれを自然に受け入れ、二人で口の中のブラウニーを溶かし合った。
口に広がるのは、チョコの甘みとオレンジの酸味、そして菜摘さんの味だった。
冷えた体がどんどん熱くなり溶けていくような感覚に、僕の頭も溶かされてしまいそうになる。
そんな二人にとって"初めて"のバレンタインは、この上ないくらい甘酸っぱい日になったのだった。
向かい合って座っていた菜摘さんが、そう言いながら突然僕の隣に移動してきた。
僕は菜摘さんに貰ったお菓子の残りを机の上に置き、箱を開けた。
「私ね、これ食べたい!」
そう言って指を差した先にあったのは、輪切りのオレンジがトッピングされたブラウニーだった。
「いいよ。一緒に食べよう。」
僕はそのブラウニーを箱から取り出し、菜摘さんに渡そうとした。
「待って!……隼くん、それ食べさせてくれない?」
「えっ?」
僕の手を制するように菜摘さんも自分の手をかざし、もう一方の手を口元に持って来てそんなことを言う。
「あーんして食べさせて?ほら。」
急かすような口調と共に、菜摘さんは真っ直ぐ僕を見つめて口を開ける。
「……は、はい……」
初めてする行為に恥ずかしさと戸惑いを隠せないまま、僕は恐る恐る菜摘さんの口元にブラウニーを運んだ。
すると菜摘さんはブラウニーの先の部分だけを軽く口に咥え、残りの部分を僕に突き出すようにしてきた。
「えっ……な、菜摘さん……?」
「……んっ!」
僕が戸惑っていると、菜摘さんは早くしてと言わんばかりに何度も僕の方へと口を突き出す。
「………っ」
僕はドキドキしながら、ゆっくりと自分の口をブラウニーへと近づける。
そして菜摘さんが咥えているのとは反対側を軽く口に入れる。
「……んふふっ」
菜摘さんはそんな僕の様子を見て、楽しそうに笑いながら口を僕の方へと近づけてくる。
僕がその様子を見ていると、菜摘さんは僕の背中に手を回して、グイッと菜摘さん側へと引き寄せた。
少しずつ近づいていく唇は、普段のキスとは違う。
二人で一つのブラウニーを食べながらも、キスをするような雰囲気が漂っている。
いつものキスとは違う、どこか甘美な接近は、無意識にも僕の体を火照らせた。
「……んっ……」
唇の距離が0センチになったとき、菜摘さんは僕の口に舌を入れてきた。
僕はそれを自然に受け入れ、二人で口の中のブラウニーを溶かし合った。
口に広がるのは、チョコの甘みとオレンジの酸味、そして菜摘さんの味だった。
冷えた体がどんどん熱くなり溶けていくような感覚に、僕の頭も溶かされてしまいそうになる。
そんな二人にとって"初めて"のバレンタインは、この上ないくらい甘酸っぱい日になったのだった。
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