上 下
104 / 214
14頁

2

しおりを挟む
2月14日。

今日はいつになく学校中が賑やかに盛り上がる。

「○○くんにチョコ渡した?」

「渡せなかった~……最悪だよ…」

「私は渡してきたよ!ちゃんと喜んでくれてたと思う」

「いいなぁ~」

「お前何個もらったの?」

「そういうお前は何個だよ!」

「俺は3つ!お前は?」

「負けたわ……1つだけ。」



こんな会話が朝から放課後にかけて1日中聞こえてきた。

(バレンタイン、かぁ……)

学校の中で孤立している僕にとって無縁のイベントではあるが、それはあくまで学校での話。

今日の放課後、菜摘さんに会う。

そのときは、期待しても良いのだろうか……?

僕にとって、初めてこの人からチョコを貰いたいと思う存在がいるバレンタインだ。


改めてどことなく浮足立つ教室を見渡してみる。

普段想いを素直に告げられない子がこの日にかこつけて気持ちを打ち明けるチャンス。

もしくは友達同士で交換し合うことで、日頃の友情を確かめ合うイベントでもある。

また、正直男の立場として、この日に何人からお菓子を貰えたかということが自分への自信と周りへの優越感に繋がっていくということも理解できる。

僕はこれまで…

いじめられるようになる前まで、特別な意味を持つお菓子は貰ったことがなかった。

クラスメイトや友達として、もしくは本命のお零れとして貰えたことはあった。

だからバレンタインというイベントにそこまで重きを置いていなかったのだが、今年は特別な意味を持ち得る相手がいる以上、普段より格段にこのイベントについて意識せざるを得なかったのだった。
しおりを挟む

処理中です...