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「隼くん……すごくよかったよ……。ありがとね」

僕と菜摘さんは、大体一度ではお互いの体が満足しない。
数回に渡って共に快楽を分け合いながら、愛を感じ合うことになる。

行為が終わると僕と菜摘さんは二人向かい合うような形で体を横にして寝転ぶ。

そして仄かに色づく体の火照りを眺め合いながら、お互いに思ったことなどを囁き合うのだった。

「…僕、ちゃんとできてたかな…?」

「できてたよ!隼くんがあんなに必死になって私のことを気持ちよくさせようとしてくれてるのを見て、それだけで興奮しちゃったもの。」

「……恥ずかしい…」

「可愛いわね隼くんは。ちゃんと私が好きな触り方とか場所とかも分かってたし……それに、挿れる時のタイミングや言葉攻めも……ずるいって…」

「え…言葉攻め…?そんなこと、してた…?」

「してたよ~…まあ、自覚が無いのなら尚更萌えるわね。」

「え?」

「なんでもない!とりあえず、隼くんもやっぱり男の子なんだなーって思ったよ。」

「そりゃあ……そうだよ。」

「そうよね。それを感じられて、なんか余計に私も興奮しちゃった。」


ニコニコと悪戯っぽく笑う菜摘さん。

話の内容や表情は小悪魔のような漆黒の色気を含むのに、その目はどこか純粋な子供のように澄んでいた。

菜摘さんの言っているように、僕も自分の中に初めて認める色んな要素を見つけることができた。

僕は男としてはもちろん、一人の人間としての自信など持てたことはなかった。

だけど目の前で菜摘さんが可愛くなって、好きな気持ちが加速して、ついつい愛欲に塗れて気持ちの昂るままに彼女に触れたことは、これまでの僕には無かったと思われていた行為だった。

そしてまるで獣のように自由かつ奔放に彼女を愛し感じさせまくっている間は、僕がこれまで付き合ってきた自分とはまた別の自分に出会っていたような気がした。

菜摘さんが相談したときに提案してくれた、菜摘さんとの行為を通して自信を付けるということは、当初の期待以上に大きな効果があったように思われる。

僕は菜摘さんに対して素直になっている時の自分は、どうやら比較的好きになれているらしかった。

そして大好きな菜摘さんが僕のせいで顔をしかめ余裕を無くして快楽と愛の海に溺れたという事実は、紛れもなく僕への自信として身につき、そして菜摘さんへの気持ちがまた更に大きくなることにも繋がったのだった。
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