上 下
81 / 217
12頁

3

しおりを挟む
「隼くん、人の好みとかちゃんと見てるんだね!さすがだよ」

「菜摘さんのことしか見てないよ?……本当に好きだから、菜摘さんについて何でも知りたくて、ちゃんと見てたんだ」

「……っありがとう…」

感心する菜摘さんに、僕は誤解をされたくなくて説明した。

菜摘さんだから1ヶ月もの間、身につけている全てのものに注意していたし、菜摘さんだからこんなにも受け取ってもらえたときの反応が気になったのだ。

僕の返事に菜摘さんは顔を赤くしてお礼を言ってくれた。

菜摘さんが時々見せるこういう表情は、普段僕が感じ得ない不思議な優越感を与えるのだ。

僕よりもずっと大人で人生経験が豊富なはずの菜摘さんが、僕の言葉や行動で頬を染めてくれる……。

この事実に、僕は菜摘さんをそうさせることで自分がどこか大人に近づいたような気がしていたのだ。

そしてある種の、男としての自信や自覚が芽生えてくるのだった。



「隼くん……私からも、隼くんにプレゼントがあるの。……少し、私の家に来てくれない?」

「うんっ!楽しみ!」

元々今日は菜摘さんが家に呼んでくれるという約束をしていた。

僕は純粋に、菜摘さんからどんなプレゼントがもらえるのだろうかと……

自分が必死になって相手のためのプレゼントを探していたからこそ、余計に菜摘さんが僕のためにどんなことを考え何を選んでくれたのかが、とても気になって仕方なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

私の隣は、心が見えない男の子

舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。 隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。 二人はこの春から、同じクラスの高校生。 一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。 きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

文バレ!②

宇野片み緒
青春
文芸に関するワードを叫びながらバレーをする、 謎の新球技「文芸バレーボール」── 2113年3月、その全国大会が始まった! 全64校が出場する、2日間開催のトーナメント戦。 唄唄い高校は何者なのか? 万葉高校は? 聖コトバ学院や歌仙高校は全国でどう戦うのか? 大会1日目を丁寧に収録した豪華な中巻。 皆の意外な一面が見られるお泊り回も必見! 小題「★」は幕間のまんがコーナーです。 文/絵/デザイン他:宇野片み緒 ※2018年に出した紙本(絶版)の電子版です。

【完結】僕の恋を終わらせるか、君の夢を終わらせるか

雪村
青春
音楽一家に産まれた九音ヒロはある日応援していたアイドルの代表曲を1人で歌う少女、鈴木藍子と出会う。 その日は逃げられてしまうが、次の日ヒロは藍子と同じ高校に通っていることがわかる。ヒロは藍子が歌っていた曲について話したくて藍子を追いかけるけど、藍子はヒロを避けてしまう。 しかしある日、藍子は自らヒロに自分の夢を告げた。 「私、………になりたい」 これは音楽を離れた少年と、人が怖い少女の話。

離した手のひらは空に透かして。

朱宮あめ
青春
高校三年生の羽石ことりは、ずっと憧れていた美術大学への進学も決まり、あとは卒業式を待つのみとなっていた。 幼なじみで恋人同士の奏と高校最後の日常を謳歌していると、女手一つでことりを育ててくれていた母が倒れてしまう。 母はなんとか一命を取り留めたものの、右半身に障害が残ってしまった。 進学か、母か。ことりは進路を迷い始める。 迷いを奏に相談するが、ことりは厳しく批難されてしまい……。 結局、進学か帰郷か決められないまま学校が始まる。奏と会うことに気まずさを感じて登校するが、奏は学校に来なかった。 奏に連絡すると、冬休み中に奏が事故に遭っていたことを知り……。 ねぇ、大人になるってどういうこと?

鐘の音を聞きながら

神在琉葵(かみありるき)
青春
今回もクリスマス・イルミネーション・ダイエット・約束・節電・俺様・猫・裏切り・除夜の鐘・ブログ、お題全使いで書いてみました。 あ…これは私のことじゃありませんよ。 あくまでもフィクションです!

わたしとあなたの夏。

ハコニワ
現代文学
※この作品はフィクションです。実在する人物・地名・事件は一切関係ありません。登場人物が死にます。苦手な方はご遠慮を… 若干、ホラー気味です。 第一部 偶然か必然か…または祟りか―…。寒村で起きた悲劇。 終戦後から約15年の日本。県の中で過疎化が進んでいる「絶法村(ぜつほうむら)」その中で数少ない子どもはおおよそ15人にも満たない。その村に生まれ育った大倉麻耶(おおくらまや)は元気が取り柄の少女でした。 しかし、ある日を堺に血に塗られた村となる。 麻耶の葛藤と苦悩、そして〝大切なもの〟への想いがまじった戦慄を綴った物語。 第二部 舞台は令和。年一回祖母の村へ行くのがしきたりであり、今年も例外なく顔を出す。その年、あの夏、この場所で、初めて出逢った男の子二人に名取美優(なとりみゆ)はこの夏を謳歌する。やがて、三人とも〝大切なもの〟を気付かされる。

虹のした君と手をつないで

megi
恋愛
救命センターの救命医である藍場。救える命と救えない命の狭間で、彼は次第に医師を志した動機を忘れさせ、感情をなくしていく。表情1つ変えない彼の事を周りは「無情Dr(heartolessDr)」と呼ぶ。藍場には、不思議な力がある。人が持つ、感情が色で見える。  この事は、幼馴染みで看護師の赤名 美桜しか知らない。 ある日、意識不明の60代の女性が運ばれてくる。彼女を診た藍場は驚く。余命いくばくもない女性が持つ色は虹色に輝いている。「何故、この女性は虹色の輝きを持つのか?」ベッドの傍らで静かに眠る女性を見る藍場。意識のない女性が、困惑する藍場の手首を掴んだ時、彼は意識を失う。 時は、25年前。ある男が、山間部にある診療所で目覚める。男の名前は、碧 蒼空。彼は記憶がない。蒼空は、ひょんなことから、6人の子供達が暮らす児童養護施設で働く事になる。一緒に働く看護師小川桜、言葉を発する事ができない、お下げ髪の少女、美桜と子供達に囲まれながら、暮らす蒼空。 蒼空が目覚めて3日目。1人の少年が、児童養護施設にやってくる。少年の名前は、藍場 省吾。感情をなくした少年には、人の感情を色で見る事ができる不思議な力がある。蒼空は省吾と出会ってから、少しずつ記憶を取り戻していく中、次第に、小川桜に惹かれていく。また、省吾も施設の人達と暮らす中、次第に感情を取り戻していく。 穏やかな日々、桜と子供達との幸せな時間が永遠に続く事を切に願う蒼空。 しかし、穏やかな日々は続かない。 桜の大病と嵐の日に消えた美桜。記憶を取り戻していく度、消えていく自分の存在だと気付く。 消えゆく空は?蒼空と省吾の関係は? 美桜はどこに消えたのか? 桜との恋の行方はどうなるのか? 蒼空が全てを思い出す時、全てがつながる。

処理中です...