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「あらぁ~姉弟かしら?とっても美男美女ね!」
菜摘さんからカメラを受け取った女性が、僕たちを見比べてそう言った。
「……実は私達、姉弟じゃないんです。」
「あら!そうなの!親戚か何か?」
「いえ…。恋人同士です。」
「恋人同士!!」
「はい。今日は、秋らしいデートをしようと思って。」
「あらぁ~そうなの~!」
僕の隣で、菜摘さんがにこやかな表情のまま、スラスラと僕たちの関係について話し始めた。
僕たちの関係を聞いた老夫婦は、初めこそ驚いた顔をしていたが、菜摘さんに釣られたかのように笑顔になっていった。
「……今の思い出を大事にしないとね。あなたたちのように、年が離れている者同士で付き合うことができるのも…今の若いうちだけかもしれないわ。一つ一つ思い出を刻んで、一生の絆にすることは…とってもかけがえのないこと。今日のこの景色と気持ちを…忘れないでいるのよ。」
女性はそう言って、僕たちの写真を撮ってくれた。
彼女の言葉に、僕も菜摘さんも、改めて今の二人の状況がいかに特殊であるかを感じた。
そんな感覚についお互いに目を合わせて微笑んだ後、カメラに向けて笑顔を作った。
「ありがとうございます。」
女性からカメラを受け取った菜摘さんは、そこに咲いてる秋桜よりも……
思わず息が止まってしまうくらいに、儚く美しく微笑んだ。
「お互いを、大事にするのよ。何があっても……味方でいること。それが、円満の秘訣ってものよ。ねえ、あなた?」
「ああ、そうだな。互いを心から嫌いにならない限り…相手を信じて思いやること。それが、一番大事さ。」
「そうは言ってますけどあなた、私を気遣ってくれるのなんて年に数回あるかないかじゃない。」
「何を言ってるんだ。ここに来たのもどうしてもお前が来たいと言ったからだぞ?俺はもう、足が良くないのに……。」
「毎週ゴルフに行ってるんだからまだまだ元気でしょう。………あら、ごめんなさいね~…。みっともないところを見せてしまって。」
微笑ましい二人のやりとりを黙って見ていた僕らに、女性が少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら言う。
「…いえ、みっともなくなんてないですよ。私たちもお二人みたいになりたいなって思いました。」
「僕もです。お二人が、とても幸せそうですから。」
「今日は色々と、ありがとうございました。」
老夫婦に向かって深々とお礼をする菜摘さんの真似をして、僕も二人に頭を下げた。
すると2人は晴れやかに笑って、寄り添い合いながら僕たちの前を歩いて行った。
「……あんな老後を過ごしたいわね…。」
二人の後ろ姿を見て、菜摘さんがそう呟いた。
「そうですね。僕も菜摘さんと…あんな風になりたいです。」
秋風にそよぐ菜摘さんの細く柔らかい髪が、甘いシャンプーの香りを運ぶ。
美しいシルクのようなその髪がふわりと舞って、菜摘さんの横顔はあまり見えなかった。
だけど不意に繋がれた右手に感じる暖かさが、さっきの僕の言葉への菜摘さんの答えを表しているような気がした。
菜摘さんからカメラを受け取った女性が、僕たちを見比べてそう言った。
「……実は私達、姉弟じゃないんです。」
「あら!そうなの!親戚か何か?」
「いえ…。恋人同士です。」
「恋人同士!!」
「はい。今日は、秋らしいデートをしようと思って。」
「あらぁ~そうなの~!」
僕の隣で、菜摘さんがにこやかな表情のまま、スラスラと僕たちの関係について話し始めた。
僕たちの関係を聞いた老夫婦は、初めこそ驚いた顔をしていたが、菜摘さんに釣られたかのように笑顔になっていった。
「……今の思い出を大事にしないとね。あなたたちのように、年が離れている者同士で付き合うことができるのも…今の若いうちだけかもしれないわ。一つ一つ思い出を刻んで、一生の絆にすることは…とってもかけがえのないこと。今日のこの景色と気持ちを…忘れないでいるのよ。」
女性はそう言って、僕たちの写真を撮ってくれた。
彼女の言葉に、僕も菜摘さんも、改めて今の二人の状況がいかに特殊であるかを感じた。
そんな感覚についお互いに目を合わせて微笑んだ後、カメラに向けて笑顔を作った。
「ありがとうございます。」
女性からカメラを受け取った菜摘さんは、そこに咲いてる秋桜よりも……
思わず息が止まってしまうくらいに、儚く美しく微笑んだ。
「お互いを、大事にするのよ。何があっても……味方でいること。それが、円満の秘訣ってものよ。ねえ、あなた?」
「ああ、そうだな。互いを心から嫌いにならない限り…相手を信じて思いやること。それが、一番大事さ。」
「そうは言ってますけどあなた、私を気遣ってくれるのなんて年に数回あるかないかじゃない。」
「何を言ってるんだ。ここに来たのもどうしてもお前が来たいと言ったからだぞ?俺はもう、足が良くないのに……。」
「毎週ゴルフに行ってるんだからまだまだ元気でしょう。………あら、ごめんなさいね~…。みっともないところを見せてしまって。」
微笑ましい二人のやりとりを黙って見ていた僕らに、女性が少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら言う。
「…いえ、みっともなくなんてないですよ。私たちもお二人みたいになりたいなって思いました。」
「僕もです。お二人が、とても幸せそうですから。」
「今日は色々と、ありがとうございました。」
老夫婦に向かって深々とお礼をする菜摘さんの真似をして、僕も二人に頭を下げた。
すると2人は晴れやかに笑って、寄り添い合いながら僕たちの前を歩いて行った。
「……あんな老後を過ごしたいわね…。」
二人の後ろ姿を見て、菜摘さんがそう呟いた。
「そうですね。僕も菜摘さんと…あんな風になりたいです。」
秋風にそよぐ菜摘さんの細く柔らかい髪が、甘いシャンプーの香りを運ぶ。
美しいシルクのようなその髪がふわりと舞って、菜摘さんの横顔はあまり見えなかった。
だけど不意に繋がれた右手に感じる暖かさが、さっきの僕の言葉への菜摘さんの答えを表しているような気がした。
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