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9月14日。
今日は僕の誕生日。
去年までは、学校の中で祝ってくれる友達もいた。
しかし今年はいじめられている僕にそんなことをしてくれる人なんているはずもない。
そもそも、誰も覚えていないのかもしれない。
でも僕は、今の状況ならそれがむしろ嬉しかった。
下手に思い出されてそれをネタに意地悪されるよりは、まだスルーしてくれた方が良い。
朝、学校に来る前に家族が僕におめでとうと言ってくれた。
母親が、今日の夜は御馳走とケーキを作ってるからねと言ってくれた。
すごく嬉しかった反面、今までは素直に喜んでいたのに対し、今年はどこか恥ずかしかったことから、自分の心の成長を感じた。
僕は今日で11歳。
菜摘さんに、ひとつだけ歳が近づいた。
そのことが、とても嬉しかった。
だけどまだ14歳の差があることが、少しもどかしかった。
「隼くん、今日はお誕生日だったね!おめでとう!」
放課後。
いつもの場所で菜摘さんは僕にそう言ってくれた。
「ありがとうございます!嬉しいです。」
「隼くん、それでもまだ11歳なんだもんね~。大人っぽすぎるから、不思議な感じ。」
「僕も、まだ11歳かーって思います。早く菜摘さんに追いつきたいです。」
「大人になったらなったで、大変なことも多いよ?」
「それでも……いいです。早く大人になって…その…」
「何かしたいことでもあるの?」
「はい。……大人になったら……自由に…恋愛できるかなって……」
自分で言いながら、恥ずかしくなってつい顔を俯けてしまう。
菜摘さんへの気持ちを自覚した今、「恋愛」「恋」「好きな人」といった言葉を菜摘さんの前で出すだけでも変に意識してしまう。
僕の気持ちなんて、菜摘さんには届かないだろう。
そもそも、僕の恋愛のもどかしさの原因の一つは、どうしても埋まらない菜摘さんとの年齢差だ。
菜摘さんは僕のことを、ただの弟的な友達としか思っていないだろうから……。
僕も大人になって、菜摘さんに恋愛対象として見てもらえるようになりたい。
だけど、僕はまだまだ子供だ…
恋愛感情を心の中で抱くのは自由だけど、実際に口に出したり相手に伝えたりすることはできない…。
そういう意味で、早く大人になって自由に恋愛をしたいと言った。
だからすごく恥ずかしくて、菜摘さんを意識してしまうから、顔を上げられない。
「隼くん……」
菜摘さんの優しい声と共に、顔を俯けたままの僕の目の前に、小さな白い箱が差し出された。
今日は僕の誕生日。
去年までは、学校の中で祝ってくれる友達もいた。
しかし今年はいじめられている僕にそんなことをしてくれる人なんているはずもない。
そもそも、誰も覚えていないのかもしれない。
でも僕は、今の状況ならそれがむしろ嬉しかった。
下手に思い出されてそれをネタに意地悪されるよりは、まだスルーしてくれた方が良い。
朝、学校に来る前に家族が僕におめでとうと言ってくれた。
母親が、今日の夜は御馳走とケーキを作ってるからねと言ってくれた。
すごく嬉しかった反面、今までは素直に喜んでいたのに対し、今年はどこか恥ずかしかったことから、自分の心の成長を感じた。
僕は今日で11歳。
菜摘さんに、ひとつだけ歳が近づいた。
そのことが、とても嬉しかった。
だけどまだ14歳の差があることが、少しもどかしかった。
「隼くん、今日はお誕生日だったね!おめでとう!」
放課後。
いつもの場所で菜摘さんは僕にそう言ってくれた。
「ありがとうございます!嬉しいです。」
「隼くん、それでもまだ11歳なんだもんね~。大人っぽすぎるから、不思議な感じ。」
「僕も、まだ11歳かーって思います。早く菜摘さんに追いつきたいです。」
「大人になったらなったで、大変なことも多いよ?」
「それでも……いいです。早く大人になって…その…」
「何かしたいことでもあるの?」
「はい。……大人になったら……自由に…恋愛できるかなって……」
自分で言いながら、恥ずかしくなってつい顔を俯けてしまう。
菜摘さんへの気持ちを自覚した今、「恋愛」「恋」「好きな人」といった言葉を菜摘さんの前で出すだけでも変に意識してしまう。
僕の気持ちなんて、菜摘さんには届かないだろう。
そもそも、僕の恋愛のもどかしさの原因の一つは、どうしても埋まらない菜摘さんとの年齢差だ。
菜摘さんは僕のことを、ただの弟的な友達としか思っていないだろうから……。
僕も大人になって、菜摘さんに恋愛対象として見てもらえるようになりたい。
だけど、僕はまだまだ子供だ…
恋愛感情を心の中で抱くのは自由だけど、実際に口に出したり相手に伝えたりすることはできない…。
そういう意味で、早く大人になって自由に恋愛をしたいと言った。
だからすごく恥ずかしくて、菜摘さんを意識してしまうから、顔を上げられない。
「隼くん……」
菜摘さんの優しい声と共に、顔を俯けたままの僕の目の前に、小さな白い箱が差し出された。
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