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「私は今まで、人に興味を持てなかった。最初のうちは人が寄ってきてくれても、結局私は変人扱いされてみんな離れていくの。私自身も、それが楽だったんだけどね。……けど…」

「ホントは、寂しかった…ですか?」




鳴美さんの息が止まるような音がした。

俺の言葉が相当予想外だったのだろう。

俺自身も、何故こんなことをしたのかは分からなかったが、どうしても鳴美さんの言葉の続きを紡ぎたい衝動に駆られたのだった。


「分かりますよ…俺も、結局はそうなので。ぼっちには慣れてますし、楽だなとも思います。けど……」

言葉を待つ鳴美さんの瞳が揺れる。

そこに映るのは、彼女が見てきた宇宙の星屑のような細やかな光。

俺の瞳とぶつかった時、それは小さく揺らいだ気がした。


「けどホントは、誰か繋がってみたかった……。心と心を繋いでみたかった……違いますか?」



俺の言葉が終わったと同時に、鳴美さんの瞳から星屑たちが透明な光となって溢れだした。

その儚くも哀しい輝きは、俺の身体に小さなガラスとなって突き刺さった。

初日に感じたのとは違う…

もっと細かくて小さくて軽微で柔らかな、そんな痛み。




俺は気づいたら、鳴美さんの頬を指で拭っていた。

それはこれ以上泣かれてしまうと、自分の身体に突き刺さる硝子の粒子が痛いからなのか。

それとも単純に、鳴美さんの涙を見て俺も泣きたくなったからなのか、わからない。

だけど一つわかること。

指に触れた雫は、あの日中庭で昼寝していた俺の頬に突然落ちてきた透明な液体に、とても似ていたということだった。

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