あんなに堅物だった俺を、解してくれたお前の腕が

いちごみるく

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前向きに、それぞれに4

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「おー?優クン、もしかして傷心中?」

「なんだ優。俺達と離れることがそんなに寂しいのか」

「煩いバカどもめ。そんなわけあるか」


顔に出ていたのだろうか。

妙に人の心の変化に鋭い瑠千亜と五郎に突っ込まれ、俺は咄嗟にぶっきらぼうに返す。


いくら鋭いこいつらでも、結局最後まで俺と隼の関係性に触れてくることはなかった。

それは気づいていないからなのか、それとも気づいているが敢えて触れてこないだけなのか…

それは分からないが、大学生になったら俺と隼の関係すらも終わるかもしれないのだ。

俺はそんな事実に対しても、半ば寂しさと哀しさを感じていた。


「まあでも、本当に寂しくなるね……もうこうやってみんなでご飯食べたりすることも少なくなるんだろうなー……」

ふと隣で隼が寂しそうな声を出す。

「まあなあ……合宿とか大会のときとか、ご飯どころか風呂とか寝るのとかも一緒だったもんな」

「最早兄弟みたいな感じだよね。」

「そうだなー……」

「何を暗くなっておる隼に瑠千亜。俺たちは大学生になるのだぞ。大学生といえば人生の夏休み……そう、夏休みなのだからいくらでも時間はある!従って、会ってまた泊まりでも旅行でもすれば良いではないか!」

「なにいって……ってそうだな!今回ばかりは五郎の言うとおりだな!!」

「今回ばかりとはなんだ!俺は常に正論しか言わぬぞ」

「夏休みとかにさ、時間作ってみんなで五郎のいるところに行きたいね!京都旅行とかも兼ねて」

「ああ!いいね隼!それ賛成!!」

「いつでも来い。しかとお前らの寝床も確保しておこう」

「なんだよ五郎~あんだけ前向きなこと言っといてお前も俺らと離れるのが寂しいんじゃねえかよ~」

「黙れ瑠千亜。」


五郎は最後にそう言ってから、しばらく言葉を発せないでいた。


やはりみんな表には出さないようにしているが、長年続いたこの関係が薄れていくのが怖いようだ。
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