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冷たい空

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時は経て、俺と隼は高校三年生になっていた。

今は12月。

高校受験のなかった俺達ではあるが、流石に大学受験を控えているこの時期は、学校全体が受験モードに突入していた。


「隼。お前今日も補習出るだろ?」

8月のインターハイで優勝して部活を引退した俺と隼は、二人でまた同じ大学を受けて一緒にテニスを続けるつもりでいる。

「出るよ。今日もまた終わると外は真っ暗なんだろうなー……」

隼は冷たく澄んだ冬空を眺めながら、そう答えた。

「そうだな。……まあそれでも、予備校に行かずに学校の補習だけで受験に挑もうとしているのもよく考えたらなかなか勇者だよな」

「学校で勉強してその他に更に予備校とか俺は絶対無理だーー。通ってる人、すごい尊敬するよ」

「それはお前だからできることだろ。毎回模試の成績が校内トップだからな」

「校内でトップだからって本当は安心しちゃいけないんだけどね……はぁ、ほんとに受かるかな……」

「お前で受からんかったら誰も受からん。判定だって常にA判だろ?大丈夫だよ。」

不安になっている隼に俺は呆れ気味に返す。

隼は中学での入学以来、模試でも校内テストでも成績が不動の1位なのだ。

俺も成績には自信がある方だが、どうしたことか隼とその彼女……雨宮にだけは、どうしても勝てない。


「そういえば隼。雨宮も同じ大学を受けるんだよな?」

「うん、そうだよ。なんで?」

「いや……まあお前と雨宮なら絶対受かるだろうなとは思ってさ」

「優だって!俺、今までたまたま運が良かっただけで本当は優の方がずっと頭いいと思ってるよ?」

「なわけあるか」

「ほんとだって!優は俺の知らないこともいっぱい知ってるしさ」

「まあ確かにお前は世間知らずなところはあるが……」

「でしょ?だから俺、優がいなくなったら生きていけないかも」


無邪気に笑い俺の方を指差してそう言う隼。

「………お前には雨宮がいるだろう」

隼の言葉に嬉しくなりながら、それを悟られないように咄嗟に隼の彼女の名前を出す。

「まあ確かに梨々もすごいしっかりしてるからね」

「ああ。お前よりしっかりしてるだろ?」

「うん!」

「そんな満面の笑みで言うなよ……ところでお前ら、もし合格したら同棲とか始めるのか?」

「えっ!なんでわかったの!?」

「別に分かったわけではない。ただの憶測だ」

「すごいなあ…さすが優」


隼は真っ直ぐに俺を見つめ素直に感心している。

しかし俺は、高3になった今でも隼への気持ちは消えていない。

正直、隼が雨宮と同棲する予定であることを知ってしまって、自分から聞いたくせに少しショックを受けている。

俺は最近、隼と行為をする時に「これが最後かもしれない」と思いながらしている。

何故なら、前に隼は雨宮とはお互いが18歳を過ぎたらセックスをしようと決めていると言っていた。

雨宮の誕生日は4月で隼は9月。

つまり、2人はもう18歳になっているのだ。


いつ隼から「雨宮としたからもう俺とはできない」と言われてもおかしくはないのだ。

まあ今は受験シーズンだから、そんなことをしている場合ではないのかもしれない。


しかし…………

合格して大学も同じで、しかも同棲するとなると、2人は確実にするだろう。

そうなってしまうと……

俺はもう、大学生になった途端に隼との関係も隼への想いも断ち切らなければいけないのだろうか……

正直、そのどちらも断ち切らないまま隼と雨宮が同棲をしているという状況は俺にとってつらすぎる。

俺が一人で過ごしているとき、隼と雨宮はひとつ屋根の下で仲睦まじく過ごしているのだから……


俺はそんな未来へのどうしようもない不安と悲しさに、ただただ隼と同じ空を見上げるしかなかった。
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