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大人と子供
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俺は隼に唇を奪われたまま、しばらく痺れるような時間を過ごした。
「……優、これどうするの……」
長い長いキスの時間を終えた後、隼は自分の鎖骨を指差した。
そこには、二つの真っ赤な跡。
俺が刻んだ、隼への気持ち。
「気にするな。すぐ収まるだろう」
「ほんとに…?」
「ああ。一時的な炎症だ」
「…………俺もやりたい…」
「ん?」
「俺も優に同じことやりたい」
「お前が俺に?……なぜ…」
「すぐに消えるんでしょ?ならやりたいよ」
隼は自ら俺にキスマークを付けたいと言ってきた。
「ちょっと待て隼。お前これが何か分かってるのか?」
「キスマークでしょ?俺にも分かるよ」
「分かってるなら何故俺に……」
「何でだろうね、付けたくなったから」
隼は悪戯な笑みを浮かべて答える。
小悪魔のような優艶なその表情は、わざとなのか無意識なのか……
「いや隼。わかってるのか?キスマークっていうのは、その……」
俺は言葉を途中で辞めた。
キスマークは、相手のことを想う気持ちの証なのではないか……
独占欲や愛情を表すようなもの。
俺はこいつに対してそういった気持ちを持ち合わせているが、こいつは……
「そんなに深く考えるものなの?俺は何となく、優がこれを付けてるのがエロいなって思ったから付けてみたくなっただけだよ。他の人から見えるような見えないような、そんな位置に付けるのってさ。なんかエロいじゃん」
純粋な興味をぶつけてくる子供のように言う。
サラリと言っているが、何気にとんでもないことを言っているぞこいつは……
「何だお前、そんな性癖があったのか」
「性癖なのかは分かんないけど。なんか今ふと思った」
「……動物みたいだな。したいからするって」
「優には言われたくないんですけど?俺に何も言わずにこんなの付けてさ」
再び俺がつけたキスマークを指差す隼に俺は返す言葉がなかった。
「……ああ、そうだな。別に深く考える必要もないのかもしれないな」
俺たちはもう後戻りなどできない。
子供の頃のように、無邪気に笑い合うこともできない。
互いの感情を探り合いながらも互いに気遣い合い、親密な仲ながらも最後の一線を超えないような、他人行儀を残した関係にも戻れない。
欲という本能と本能のぶつかり合い。
俺の気持ちは報われない親友への一途な純愛などとは呼べないものになった。
そしてこいつも……
俺との行為を知る前のこいつには、もう戻れないのだ。
「……優、今度は優が寝て」
隼は体を起こし、俺の腕を引っ張った。
「………お前…」
俺が言葉を発する前に、隼は俺に跨り、俺の首元に口をつけた。
「……優、見て。優にもキスマーク付けちゃった」
隼は再び悪戯な笑みを浮かべながら、満足そうに俺の首元を眺める。
「お揃いだな」
「うん!」
「なんだ、嬉しいのか?」
「嬉しいよ」
ニコニコと笑いながら隼は答える。
確かにこいつの言う通り、こいつはあんまり深く考えずに純粋に俺との行為を楽しんでいるだけなのかもしれないな……
艷やかな色気を出してきたかと思えば、いつもの子供のような無邪気な姿に戻る……
そんな奔放なこいつの性格だからこそ、俺たちは常に心地よく翻弄されてしまうのかもしれない。
「ねえ優………このまま優の服、脱がせていい?」
やはり俺の思った通りだ。
こいつは子供になったり大人になったりする。
そしてそれは突然切り替わるから、俺はただ、驚き恥じらうしかなかった。
「……優、これどうするの……」
長い長いキスの時間を終えた後、隼は自分の鎖骨を指差した。
そこには、二つの真っ赤な跡。
俺が刻んだ、隼への気持ち。
「気にするな。すぐ収まるだろう」
「ほんとに…?」
「ああ。一時的な炎症だ」
「…………俺もやりたい…」
「ん?」
「俺も優に同じことやりたい」
「お前が俺に?……なぜ…」
「すぐに消えるんでしょ?ならやりたいよ」
隼は自ら俺にキスマークを付けたいと言ってきた。
「ちょっと待て隼。お前これが何か分かってるのか?」
「キスマークでしょ?俺にも分かるよ」
「分かってるなら何故俺に……」
「何でだろうね、付けたくなったから」
隼は悪戯な笑みを浮かべて答える。
小悪魔のような優艶なその表情は、わざとなのか無意識なのか……
「いや隼。わかってるのか?キスマークっていうのは、その……」
俺は言葉を途中で辞めた。
キスマークは、相手のことを想う気持ちの証なのではないか……
独占欲や愛情を表すようなもの。
俺はこいつに対してそういった気持ちを持ち合わせているが、こいつは……
「そんなに深く考えるものなの?俺は何となく、優がこれを付けてるのがエロいなって思ったから付けてみたくなっただけだよ。他の人から見えるような見えないような、そんな位置に付けるのってさ。なんかエロいじゃん」
純粋な興味をぶつけてくる子供のように言う。
サラリと言っているが、何気にとんでもないことを言っているぞこいつは……
「何だお前、そんな性癖があったのか」
「性癖なのかは分かんないけど。なんか今ふと思った」
「……動物みたいだな。したいからするって」
「優には言われたくないんですけど?俺に何も言わずにこんなの付けてさ」
再び俺がつけたキスマークを指差す隼に俺は返す言葉がなかった。
「……ああ、そうだな。別に深く考える必要もないのかもしれないな」
俺たちはもう後戻りなどできない。
子供の頃のように、無邪気に笑い合うこともできない。
互いの感情を探り合いながらも互いに気遣い合い、親密な仲ながらも最後の一線を超えないような、他人行儀を残した関係にも戻れない。
欲という本能と本能のぶつかり合い。
俺の気持ちは報われない親友への一途な純愛などとは呼べないものになった。
そしてこいつも……
俺との行為を知る前のこいつには、もう戻れないのだ。
「……優、今度は優が寝て」
隼は体を起こし、俺の腕を引っ張った。
「………お前…」
俺が言葉を発する前に、隼は俺に跨り、俺の首元に口をつけた。
「……優、見て。優にもキスマーク付けちゃった」
隼は再び悪戯な笑みを浮かべながら、満足そうに俺の首元を眺める。
「お揃いだな」
「うん!」
「なんだ、嬉しいのか?」
「嬉しいよ」
ニコニコと笑いながら隼は答える。
確かにこいつの言う通り、こいつはあんまり深く考えずに純粋に俺との行為を楽しんでいるだけなのかもしれないな……
艷やかな色気を出してきたかと思えば、いつもの子供のような無邪気な姿に戻る……
そんな奔放なこいつの性格だからこそ、俺たちは常に心地よく翻弄されてしまうのかもしれない。
「ねえ優………このまま優の服、脱がせていい?」
やはり俺の思った通りだ。
こいつは子供になったり大人になったりする。
そしてそれは突然切り替わるから、俺はただ、驚き恥じらうしかなかった。
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