上 下
23 / 79

再び…

しおりを挟む
何とか体の熱を収めた俺は、ユニットバスから出た。


隼は既に雨宮との通話を終えていた。


「もう終わったのか。早いな」

「優こそ、思ったよりも時間かかったね。のぼせたりしてない?大丈夫?」


俺は隼への不純な感情と戦っていたのに、当事者のこいつときたら純粋に俺の体調の心配をしている。


……はやりあの夜のことは何かの間違いでは……

隼のあまりの純真な反応にそう思わずにはいられなかったが、俺は隼に何も悟られまいと努力する。


「大丈夫だ。…少し考え事をしていただけだ」


そう答えながら自分のベッドの上に座り、ペットボトルの水に口をつける。

「あっ優!それ俺の…」


隼が気づいたときには俺はすでに3口ほど水を飲み込んでしまっていた。


「ああ…すまない」


俺は咄嗟に口からペットボトルを離した。

「大丈夫だよ。気にしないで」


いつものようなテンションで隼は言う。

しかし俺は、隼の口づけを飲んでしまったという事実に、先程収めたはずの邪な感情が再び湧いてしまった。



「隼、お前は喉乾かないのか?」

「ちょっとだけ乾いてるよ。けどホント気にしないで」

「じゃあこれ飲ませてやろうか?」

「?うん?自分で飲めるよ?」

「口移ししてみるか」


俺が突然真面目な顔で言ったためか、隼は驚いた顔をしてその後すぐに笑った。


「口移しって……!なんだっけ?なんかそんな動物いたよね?親が子供に口移しで何でもあげる動物」

「色んな動物がやってるんじゃないか?」

「えーそうだっけ?」

「ああ。……人間もな。」


俺はそう言って、隣のベッドに座り楽しそうにしている隼の横に移動し距離を詰めた。


「隼、口開けろ」

「え、まさかホントにする気じゃ…」

「いいから」

「あっ!ちょっと……」


俺は隼の制止を聞かず、自分の指で隼の口を軽く開けた。

そのまま俺は再びペットボトルに口をつけ、口内に水を含んだ。

隼の驚く顔を横目に、俺は自分の口から隼の口へ水を流し込んだ。



そしてそのまますかさず舌を動かす。


隼は初めこそ抵抗しようとしていたが、次第に自ら口を開き、俺の舌の動きに合わせて自分の舌を絡ませてきた。




「……はぁ…」


隼の口から甘い吐息が漏れる。


「なあ隼…前に俺が言ったこと、覚えてるか?」

俺は隼の肉感的な唇に視線を定めたまま、あの日の話をする。


「うん。覚えてるよ…」

「隼、俺は今、とてつもなくお前としたい。お前はどうなんだ?」


隼の大きな瞳が揺らぐ。

こいつの心の動きを動かしているようだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い森の奥深く

N2O
BL
命を助けられた男と、本当の姿を隠した少年の恋の話。 本編/番外編完結しました。 さらりと読めます。 表紙絵 ⇨ 其間 様 X(@sonoma_59)

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

雪は静かに降りつもる

レエ
BL
満は小学生の時、同じクラスの純に恋した。あまり接点がなかったうえに、純の転校で会えなくなったが、高校で戻ってきてくれた。純は同じ小学校の誰かを探しているようだった。

さがしもの

猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員 (山岡 央歌)✕(森 里葉) 〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です 読んでいなくても大丈夫です。 家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々…… そんな中で出会った彼…… 切なさを目指して書きたいです。 予定ではR18要素は少ないです。

[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな
BL
佐藤雪には恋人がいる。だが、その恋人はどうやら周りに女の子がたくさんいるハーレム状態らしい…どうにか、自分だけを見てくれるように頑張る雪。 果たして恋人とはどうなるのか? 主人公 佐藤雪…高校2年生  攻め1 西山慎二…高校2年生 攻め2 七瀬亮…高校2年生 攻め3 西山健斗…中学2年生 初めて書いた作品です!誤字脱字も沢山あるので教えてくれると助かります!

キミの次に愛してる

Motoki
BL
社会人×高校生。 たった1人の家族である姉の由美を亡くした浩次は、姉の結婚相手、裕文と同居を続けている。 裕文の世話になり続ける事に遠慮する浩次は、大学受験を諦めて就職しようとするが……。 姉への愛と義兄への想いに悩む、ちょっぴり切ないほのぼのBL。

処理中です...