27 / 45
第四章 経済支援は領主の務め
27.これを幸せというのでしょう *
しおりを挟む
シルクのガウンはとうに脱がされて、肩上で緩く結んだストラップもたった今解かれた。
ユーインの長い指が、するりと胸元の生地を下げる。
ほろりと、白い乳房がこぼれた。
ユーインの端正な顔が苦し気に歪む。
「すまない」
絞り出すような声がして、ほぼ同時にぎゅうとアンバーの背中は抱きしめられていた。
アンバーの頬は、厚い胸板にぴたりと押しつけられる。
どくんどくんと響くユーインの心臓の音。
「しばらくこのままでいてほしい」
苦し気に懇願する声に、アンバーの背にびりりと甘い感覚が走る。
(欲しがってくれてる)
アンバーの直感は、きっと正しい。
そうあってほしいと思うのは、アンバーも同じだからだ。
あれこれと閨の手順作法を守るより、今はすぐにでもユーインと融け合いたい。
「ユーイン様、来て……」
はしたない誘いがこぼれた。
はっと顔を上げたユーインの、薄い青の目が見開かれている。
「アンバー……」
名を呼んで、ユーインはくしゃりと顔を歪めた。
そろそろと怖れるように伸びてくる指が、すっかり潤んだアンバーの秘所に触れた。
声にならない悲鳴を上げて、アンバーの背がびくんと跳ねる。
その背をもう一度しっかり抱いて、ユーインは滾り切った彼自身をずぶりとアンバーに沈めた。
「――――――――――――!」
熱くて硬くて勝手なユーイン自身を受け止める。
体内奥深くに穿たれて、アンバーの目に涙がにじんでいた。
「痛い……か?」
不安げに見下ろす薄青の瞳に、アンバーはゆっくり首を振った。
「嬉しくて……」
「ああ、俺もだ。俺も嬉しい……」
温かなテノールが優しくて、アンバーの目から涙があふれて頬を伝う。
ユーインはその涙を唇ですくいとる。
そして野性味の勝った飢えた瞳で、アンバーをじっと見下ろした。
「動いてもいいか? さすがにつらい」
こくんと頷くと、アンバーの両脚を両腕に抱え込んで待ちかねたようにユーインは動き出す。
ぱんぱんと乾いた音と湿った水音が入り混じり、見上げるアンバーの顔にはユーインの汗が降り注いだ。
「愛している……。愛している、アンバー」
うわごとのようにアンバーの名を呼んで、繰り返し繰り返しユーインは愛を告げる。
ただ交わるだけの行為だった。
これまで何度もあった夜の方が、よほど技巧を凝らしてくれていた。
けれどどうしてだろう。
このただ交わるだけの、技巧も何もない今が一番幸せで愛おしい。
「私もです。私もあなたを愛しています。ユーイン」
あふれる思いをそのまま口にすると、くっと喉の奥を慣らしてユーインがひときわ深くずくんと腰を沈める。
びゅるんと、温かなものがアンバーの奥深くに吐き出された。
どくんどくんと脈打つユーイン自身から吐き出されるそれは、いつもより長く続いている。
アンバーをぎゅうと抱きしめるユーインの背を、アンバーはただ必死に抱き返していた。
これまで感じたことのない満たされたこの思いが、きっと幸せというものなんだろう。
ふわふわと雲の上に横たわるような、心地良い浮揚感に酔いしれる。
(ああ、このまま眠りそう)
事の後、男の腕の中で眠りにつくなどありえない。
そう思っていたのに。
アンバーの意識には、既に靄がかかっている。
「まさか眠るつもり……か?」
泣きそうな情けない声がしたような気がする。
けれど心地よい幸せな睡魔に、アンバーはすっかり捕まっていた。
「本当に酷い女だよ。君は……」
ムスクの香りに包まれて、唇にそっと柔らかいものが押しあてられたような。
とろとろと睡魔の導くままに、夢の世界へさらに入るアンバーが最後に聞いた声。
「おやすみ、アンバー。また明日……」
ユーインの長い指が、するりと胸元の生地を下げる。
ほろりと、白い乳房がこぼれた。
ユーインの端正な顔が苦し気に歪む。
「すまない」
絞り出すような声がして、ほぼ同時にぎゅうとアンバーの背中は抱きしめられていた。
アンバーの頬は、厚い胸板にぴたりと押しつけられる。
どくんどくんと響くユーインの心臓の音。
「しばらくこのままでいてほしい」
苦し気に懇願する声に、アンバーの背にびりりと甘い感覚が走る。
(欲しがってくれてる)
アンバーの直感は、きっと正しい。
そうあってほしいと思うのは、アンバーも同じだからだ。
あれこれと閨の手順作法を守るより、今はすぐにでもユーインと融け合いたい。
「ユーイン様、来て……」
はしたない誘いがこぼれた。
はっと顔を上げたユーインの、薄い青の目が見開かれている。
「アンバー……」
名を呼んで、ユーインはくしゃりと顔を歪めた。
そろそろと怖れるように伸びてくる指が、すっかり潤んだアンバーの秘所に触れた。
声にならない悲鳴を上げて、アンバーの背がびくんと跳ねる。
その背をもう一度しっかり抱いて、ユーインは滾り切った彼自身をずぶりとアンバーに沈めた。
「――――――――――――!」
熱くて硬くて勝手なユーイン自身を受け止める。
体内奥深くに穿たれて、アンバーの目に涙がにじんでいた。
「痛い……か?」
不安げに見下ろす薄青の瞳に、アンバーはゆっくり首を振った。
「嬉しくて……」
「ああ、俺もだ。俺も嬉しい……」
温かなテノールが優しくて、アンバーの目から涙があふれて頬を伝う。
ユーインはその涙を唇ですくいとる。
そして野性味の勝った飢えた瞳で、アンバーをじっと見下ろした。
「動いてもいいか? さすがにつらい」
こくんと頷くと、アンバーの両脚を両腕に抱え込んで待ちかねたようにユーインは動き出す。
ぱんぱんと乾いた音と湿った水音が入り混じり、見上げるアンバーの顔にはユーインの汗が降り注いだ。
「愛している……。愛している、アンバー」
うわごとのようにアンバーの名を呼んで、繰り返し繰り返しユーインは愛を告げる。
ただ交わるだけの行為だった。
これまで何度もあった夜の方が、よほど技巧を凝らしてくれていた。
けれどどうしてだろう。
このただ交わるだけの、技巧も何もない今が一番幸せで愛おしい。
「私もです。私もあなたを愛しています。ユーイン」
あふれる思いをそのまま口にすると、くっと喉の奥を慣らしてユーインがひときわ深くずくんと腰を沈める。
びゅるんと、温かなものがアンバーの奥深くに吐き出された。
どくんどくんと脈打つユーイン自身から吐き出されるそれは、いつもより長く続いている。
アンバーをぎゅうと抱きしめるユーインの背を、アンバーはただ必死に抱き返していた。
これまで感じたことのない満たされたこの思いが、きっと幸せというものなんだろう。
ふわふわと雲の上に横たわるような、心地良い浮揚感に酔いしれる。
(ああ、このまま眠りそう)
事の後、男の腕の中で眠りにつくなどありえない。
そう思っていたのに。
アンバーの意識には、既に靄がかかっている。
「まさか眠るつもり……か?」
泣きそうな情けない声がしたような気がする。
けれど心地よい幸せな睡魔に、アンバーはすっかり捕まっていた。
「本当に酷い女だよ。君は……」
ムスクの香りに包まれて、唇にそっと柔らかいものが押しあてられたような。
とろとろと睡魔の導くままに、夢の世界へさらに入るアンバーが最後に聞いた声。
「おやすみ、アンバー。また明日……」
131
お気に入りに追加
450
あなたにおすすめの小説
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
初めての相手が陛下で良かった
ウサギテイマーTK
恋愛
第二王子から婚約破棄された侯爵令嬢アリミアは、王子の新しい婚約者付の女官として出仕することを命令される。新しい婚約者はアリミアの義妹。それどころか、第二王子と義妹の初夜を見届けるお役をも仰せつかる。それはアリミアをはめる罠でもあった。媚薬を盛られたアリミアは、熱くなった体を持て余す。そんなアリミアを助けたのは、彼女の初恋の相手、現国王であった。アリミアは陛下に懇願する。自分を抱いて欲しいと。
※ダラダラエッチシーンが続きます。苦手な方は無理なさらずに。
つがいの皇帝に溺愛される皇女の至福
ゆきむらさり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
乙女ゲームの期限は過ぎ、気が付いたら三年後になっていました。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
確か【公式】に……。あれ、【公式】って?
え、ナニソレ?
はい、そこで私気が付きました。
ここってもしかして、いやもしかしなくても!
『乙女ゲーム』の世界じゃないのさーっ!
ナンテコッタイ!
しかも私は名前さえ出て来ないし、乙女ゲームの舞台にも上がれないモブ以下。おまけに攻略対象者の一人は実の兄。もっと酷いのは、乙女ゲームの舞台の学園より遙か遠い地で、幼女な私は拉致されて一つ上の姉と共にお貴族様の妾の身分!なんなのこの仕打ちは!
更には気が付いたら乙女ゲームの期限は過ぎていて、ヒロインが誰を攻略したのかわからない!噂にさえ登って来ないわ、遠すぎて。
そんな土地だけど。
乙女ゲームの時期は過ぎてしまったけど。
最オシの聖地で頑張って生きていきます!
『今日も学園はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。【連載版】』の『if』の話となります。キャラクターや舞台はほぼ同じですが、時間と細かい設定が違っております。
*『今日学~』を知らなくても大丈夫なように書いております。*
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる