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第一章 それは終わりから始まった
20. パウラ、祈られる
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立ち上がって、腰を落とした。
反射的に、そうしてしまった。
「ヘルムダールの姫君だよね?」
下げた頭の上から、面白そうな声が降った。
「私が誰だか、わかってるみたいだけど」
それはわかるだろうと、パウラは内心で返した。
オレンジの髪に、青に近い緑の瞳、その明るいくだけた話し方。
間違いようがない。
――――――。
しまった!
今はまだ、出会っていないはずだった。
「ヘルムダール公女パウラでございます。」
沈黙に耐えかねて、名乗ってみた。
大公家の誰かだと思ったと言えば良いと思って、少しだけ視線を上げると濃いグレーのパンツが目に入る。
目の前の背の高い青年は、生成りの重いシルクのシャツに薄い毛織りのパンツという軽装で、前世よく知るオリヴェルらしい姿だったが、大公家の一員がこの姿で街をふらふらするとは思いにくい。
大公家の誰かだったとの言い訳は、かなり苦しいなと冷や汗をかく。
けれど彼は、それ以上つっこむことをしなかった。
「パウラだね。
よろしく。
私はオリヴェル。
少し早く、会うことになってしまったみたいだね」
さらりと、なんでもない風に流して、イェーリクのすすめる上座についた。
「姫君のお尋ねになった件、私よりもオリヴェル様の方がお詳しいと思いまして。
まぁ、お答えいただけるかどうか、そこまでは保証いたしかねますが」
イェーリクが続けて説明するには、オリヴェルは商会を興した訪問者と仲良くしていたらしい。
時々ふらっとやってきては、ここで買い物をするのだとも。
「珍しいものが集まってくるからね、ここには」
細く長い指で銀の取手を持ち上げたオリヴェルは、口元に運んで唇の端を上げる。
「ほら、このお茶だってそうだ。
これ、ヴォーロスの珍しい茶葉だよね」
さわやかな果物のような香りだとはパウラも思ったが、そんなに珍しいものだとは。
10+数千年生きていても、まだまだ知らないことはあるものだと思う。
「姫君には、訪問者についてお知りになりたいようですよ」
世間話に区切りをつけるように、イェーリクが話を切り替える。
そうそう。
よく振ってくれたと、パウラは頷いた。
「訪問者について…というよりも。
帰る方法を、もしあるのなら、お教えいただきたいのですわ」
「帰る方法ねぇ」
後ろに立つナナミに視線を動かした後、パウラをまっすぐに見る。
数秒の間があって、その後口を開いた。
「私の知る限りだけどね。
帰った訪問者は、いない」
オリヴェルのなんの感情ものせない顔が、事実なのだとパウラに伝える。
けれどそれは、質問に対する答えではない。
さらに先を促すように沈黙を守るパウラに、オリヴェルもしばし沈黙を返す。
「戻る方法…。
そんなものがあると、聞いたことはないな」
役に立たなくてごめんと、無表情のままオリヴェルは続けた。
「そう…ですか。
いいえ、貴重なお話をありがとうございます」
背中に控えるナナミの表情は見えないが、きっと落胆しているだろうと、パウラは思う。
故郷に帰る途はない。
聖使にはっきり言われたのだ。
がっかりするなと言うのが、無理というもの。
「街を歩いてみたかい?」
組んでいた長い脚をほどいて、オリヴェルが立ち上がる。
「せっかくここまで来たんだ。
私が案内しよう。
ついておいで」
青に近い緑の瞳に、パウラのよく知る快活な色がある。
辛気臭いのは、なによりの苦手。
オリヴェルらしい転換に、パウラも立ち上がる。
彼の言うとおり、せっかくだ。
用事は済んだのだから、たまには街をぶらりと歩いて見るのも楽しいのかもしれない。
思えば前世のパウラには、こういう余裕がまるでなかったものだった。
行動にはいつも目的があって、それがかなえば速やかにホームポジションに戻る。
遊び心のかけらもない。
前世と違うルートを選ぶには、ここにも努力が必要かも。
腰を落として、頭を下げた。
「お伴いたします」
もの売りの呼び込みに、値切る声。
時々混じる調子の良いあれは、サクラの声か。
荷運びを急かす声に、馬のいななき。
石畳をひっかく蹄の音。
ガラガラと重い、車輪の音がそれに続く。
雑多な音が、心地良い。
生きた人の暮らしと賑わいが、ここにはあった。
甘く温かいバニラの香りが漂って、そんなに空腹ではないはずのパウラの食欲を刺激する。
ほどよく焦がした砂糖の香りが、さらに追い打ちをかける。
これは、クレープ!
「食べるかい?」
見透かしたように、オリヴェルが声をかけた。
振り仰ぐと、側仕えから三角錐の包みを受け取る最中で。
「イチゴとカスタードだって。
好きだと良いんだけど」
はいと差し出された大きなクレープは、薄いピンクの紙でラッピングされていた。
「ありがとうございます!」
イチゴにカスタードと聞けば、気分も上がるというもの。
パクりとやると、甘く、酸っぱく、美味しくて頬が緩む。
イチゴを入れ過ぎていないのも良い。
少し距離をおいて警護するナナミが、何か声をあげたようで、オリヴェルの側仕えがすいと彼女のもとへ近づいた。
ちらりとそちらに視線を投げたオリヴェルが、ふっと口元を緩める。
「君が疑いもしないから。
真面目な騎士だね」
それ、とクレープを指す。
これ?
ああ、毒見のことか。
いや、これは良いだろう。
聖使オリヴェルが、どうしてパウラに毒を盛る。
「大丈夫だと思う時こそ、ご用心を。
一瞬の油断が命取りです」
過剰と思えるほどの毒見に、一度不平を鳴らしたらナナミにぴしゃりとやられた。
もっともだと思う。
ヘルムダールの跡継ぎなら、そのくらいでなければならない。
後で叱られるなと覚悟した。
「大事な人…みたいだね」
寄り添うような声に顔を上げると、青に近い緑の瞳がパウラの瞳を覗き込む。
「ナナミは、いつもわたくしの側にいてくれます。
武術の先生ですし、他にもいろいろと教わることばかり。
とても大切な、姉のような存在です」
「姉…ね」
オリヴェルの瞳が一瞬翳ったように見えたのは、パウラの気のせいか。
「ないこともないんだよ?
さっき私に聞いた、帰る方法だけど」
え?
見上げた先、オリヴェルの瞳は沈んだ深い緑色をしている。
不思議な微笑を浮かべて、彼は続けた。
「限りなくないに近いから、あるとはとても言えないけど。
20歳までに、パウラが黄金竜の泉地に呼ばれたら。
もしもパウラの運命が、そうだったらわかるよ」
数日後、風竜の祭典がとりおこなわれた。
オリヴェルの黄金竜は、華やかで艶やかに美しく、この先長くパウラの記憶に残ることになる。
別れ際の言葉と共に。
「またね。
黄金竜の泉地じゃないとこで、また…があると良い。
そう祈ってるよ」
反射的に、そうしてしまった。
「ヘルムダールの姫君だよね?」
下げた頭の上から、面白そうな声が降った。
「私が誰だか、わかってるみたいだけど」
それはわかるだろうと、パウラは内心で返した。
オレンジの髪に、青に近い緑の瞳、その明るいくだけた話し方。
間違いようがない。
――――――。
しまった!
今はまだ、出会っていないはずだった。
「ヘルムダール公女パウラでございます。」
沈黙に耐えかねて、名乗ってみた。
大公家の誰かだと思ったと言えば良いと思って、少しだけ視線を上げると濃いグレーのパンツが目に入る。
目の前の背の高い青年は、生成りの重いシルクのシャツに薄い毛織りのパンツという軽装で、前世よく知るオリヴェルらしい姿だったが、大公家の一員がこの姿で街をふらふらするとは思いにくい。
大公家の誰かだったとの言い訳は、かなり苦しいなと冷や汗をかく。
けれど彼は、それ以上つっこむことをしなかった。
「パウラだね。
よろしく。
私はオリヴェル。
少し早く、会うことになってしまったみたいだね」
さらりと、なんでもない風に流して、イェーリクのすすめる上座についた。
「姫君のお尋ねになった件、私よりもオリヴェル様の方がお詳しいと思いまして。
まぁ、お答えいただけるかどうか、そこまでは保証いたしかねますが」
イェーリクが続けて説明するには、オリヴェルは商会を興した訪問者と仲良くしていたらしい。
時々ふらっとやってきては、ここで買い物をするのだとも。
「珍しいものが集まってくるからね、ここには」
細く長い指で銀の取手を持ち上げたオリヴェルは、口元に運んで唇の端を上げる。
「ほら、このお茶だってそうだ。
これ、ヴォーロスの珍しい茶葉だよね」
さわやかな果物のような香りだとはパウラも思ったが、そんなに珍しいものだとは。
10+数千年生きていても、まだまだ知らないことはあるものだと思う。
「姫君には、訪問者についてお知りになりたいようですよ」
世間話に区切りをつけるように、イェーリクが話を切り替える。
そうそう。
よく振ってくれたと、パウラは頷いた。
「訪問者について…というよりも。
帰る方法を、もしあるのなら、お教えいただきたいのですわ」
「帰る方法ねぇ」
後ろに立つナナミに視線を動かした後、パウラをまっすぐに見る。
数秒の間があって、その後口を開いた。
「私の知る限りだけどね。
帰った訪問者は、いない」
オリヴェルのなんの感情ものせない顔が、事実なのだとパウラに伝える。
けれどそれは、質問に対する答えではない。
さらに先を促すように沈黙を守るパウラに、オリヴェルもしばし沈黙を返す。
「戻る方法…。
そんなものがあると、聞いたことはないな」
役に立たなくてごめんと、無表情のままオリヴェルは続けた。
「そう…ですか。
いいえ、貴重なお話をありがとうございます」
背中に控えるナナミの表情は見えないが、きっと落胆しているだろうと、パウラは思う。
故郷に帰る途はない。
聖使にはっきり言われたのだ。
がっかりするなと言うのが、無理というもの。
「街を歩いてみたかい?」
組んでいた長い脚をほどいて、オリヴェルが立ち上がる。
「せっかくここまで来たんだ。
私が案内しよう。
ついておいで」
青に近い緑の瞳に、パウラのよく知る快活な色がある。
辛気臭いのは、なによりの苦手。
オリヴェルらしい転換に、パウラも立ち上がる。
彼の言うとおり、せっかくだ。
用事は済んだのだから、たまには街をぶらりと歩いて見るのも楽しいのかもしれない。
思えば前世のパウラには、こういう余裕がまるでなかったものだった。
行動にはいつも目的があって、それがかなえば速やかにホームポジションに戻る。
遊び心のかけらもない。
前世と違うルートを選ぶには、ここにも努力が必要かも。
腰を落として、頭を下げた。
「お伴いたします」
もの売りの呼び込みに、値切る声。
時々混じる調子の良いあれは、サクラの声か。
荷運びを急かす声に、馬のいななき。
石畳をひっかく蹄の音。
ガラガラと重い、車輪の音がそれに続く。
雑多な音が、心地良い。
生きた人の暮らしと賑わいが、ここにはあった。
甘く温かいバニラの香りが漂って、そんなに空腹ではないはずのパウラの食欲を刺激する。
ほどよく焦がした砂糖の香りが、さらに追い打ちをかける。
これは、クレープ!
「食べるかい?」
見透かしたように、オリヴェルが声をかけた。
振り仰ぐと、側仕えから三角錐の包みを受け取る最中で。
「イチゴとカスタードだって。
好きだと良いんだけど」
はいと差し出された大きなクレープは、薄いピンクの紙でラッピングされていた。
「ありがとうございます!」
イチゴにカスタードと聞けば、気分も上がるというもの。
パクりとやると、甘く、酸っぱく、美味しくて頬が緩む。
イチゴを入れ過ぎていないのも良い。
少し距離をおいて警護するナナミが、何か声をあげたようで、オリヴェルの側仕えがすいと彼女のもとへ近づいた。
ちらりとそちらに視線を投げたオリヴェルが、ふっと口元を緩める。
「君が疑いもしないから。
真面目な騎士だね」
それ、とクレープを指す。
これ?
ああ、毒見のことか。
いや、これは良いだろう。
聖使オリヴェルが、どうしてパウラに毒を盛る。
「大丈夫だと思う時こそ、ご用心を。
一瞬の油断が命取りです」
過剰と思えるほどの毒見に、一度不平を鳴らしたらナナミにぴしゃりとやられた。
もっともだと思う。
ヘルムダールの跡継ぎなら、そのくらいでなければならない。
後で叱られるなと覚悟した。
「大事な人…みたいだね」
寄り添うような声に顔を上げると、青に近い緑の瞳がパウラの瞳を覗き込む。
「ナナミは、いつもわたくしの側にいてくれます。
武術の先生ですし、他にもいろいろと教わることばかり。
とても大切な、姉のような存在です」
「姉…ね」
オリヴェルの瞳が一瞬翳ったように見えたのは、パウラの気のせいか。
「ないこともないんだよ?
さっき私に聞いた、帰る方法だけど」
え?
見上げた先、オリヴェルの瞳は沈んだ深い緑色をしている。
不思議な微笑を浮かべて、彼は続けた。
「限りなくないに近いから、あるとはとても言えないけど。
20歳までに、パウラが黄金竜の泉地に呼ばれたら。
もしもパウラの運命が、そうだったらわかるよ」
数日後、風竜の祭典がとりおこなわれた。
オリヴェルの黄金竜は、華やかで艶やかに美しく、この先長くパウラの記憶に残ることになる。
別れ際の言葉と共に。
「またね。
黄金竜の泉地じゃないとこで、また…があると良い。
そう祈ってるよ」
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