17 / 44
第二章 ヴァスキアの王子
17.天国と地獄と
しおりを挟む
ヴァスキアの物見の塔に、こっそり上ったことがある。
その日の昼間、宰相ハーケに星の読み方を教わって、この季節にはとりわけ美しい星の帯が見られると聞かされたからだ。どうしても見たかった。
今にも地上に降りこぼれそうなほどの星々が、豊かに広々と帯を成していた。今でも目を閉じれば鮮やかに蘇ってくる。
(あの銀色の帯のようだ)
目の前の少女は、流れるように美しい銀色の長い髪をしていた。
透き通るような紫の瞳は、母の宝石箱にあった宝石のよう。
今の惨状を忘れて、ルトは彼女から目が逸らせないでいる。
「口、開けて」
少女が花のように微笑んで、細く白い指で赤くキラキラ輝く何かをひょいとルトの口に放りこんだ。
ふわりと拡がったイチゴの甘い香り。口中の飴のせいだけではない。
少女が側にいるだけで、痛みも惨めさも悔しさも、寂しさ哀しさすべてが消えて、ただ幸せな歓びだけが心に拡がってゆく。
「あまい」
爽やかで甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで思わずこぼした言葉に、少女はもう一度ふわりと微笑んでくれた。
「一緒にくる?」
夢かと思った。
ずっと一緒にいたい。離れたくない。この甘い香りが何よりも恋しくて、泣きたいほどだ。
だから即座に頷いた。
どうか側においてほしいと、願いをこめて。
イチゴの香りの姫ラウラがルトたちを連れて行った先は、ノルリアンの王宮だった。いや正確には離宮。そこが彼女の住まいだという。
「ばば様、あなたたちにはヴァスキア太王太后陛下と言った方がいいのかしら。わたくしの大伯母なの。その方が、ここの女主人よ」
一階の西の端、厨房へ続く別棟に使用人の部屋がある。
その一室にテオとルトを通してくれた。
「ここなら小さいけどバスルームがついてるの」
ルトの火傷を気遣ったのだと気づいて、酷い火傷の痛みをルトは忘れた。どきどきと心臓がうるさくて苦しい。けれど切なくてとても嬉しかった。
後はメイドに任せろと傍の女に言われても、ラウラは首を振って手ずから汚れたルトの手当てをしてくれた。
「火傷がよくなるまでお風呂は我慢してね」
ぬるめのお湯に浸したタオルで丁寧に身体を拭ってくれる。すぐに真っ黒になるタオルを三度取り換えて、また新しいタオルで頭を拭いてくれた。
その間、ルトはカチンと固まったままだ。身動き1つできない。呼吸をしていたかもあやしい。
ラウラの小さな手が触れる箇所が次々と熱くなって、頬に血が上る。それは悪夢の夜に蒼い炎で焼かれた熱さとはまるで違う。知らない熱だ。
熱くて胸が苦しくなって、そして泣きたくなるほど幸せで。
いつまでも触れていてほしいと思う。
「じゃ、次はテオね」
ラウラのサクランボのような唇からテオの名がこぼれた時、胸の奥がじりりと焦げついた。
それがテオであったとしても自分以外の男の名を呼んで、まして触れてなど欲しくない。
幼馴染で学友で命の恩人でもあるテオを、恨めしく思ってしまう。
「自分で拭きます。俺はケガしてませんから」
ルトの様子に気づいたらしいテオがそう言わなければ、どうなっていただろう。
これまで感じたことのない気持ちに、ルトは戸惑い混乱した。
ただ本能が告げてくる。
ラウラは特別な姫だ。なにものにも代えがたい、ただ一人の人だと。
「エカルトよ、よう無事でいやった」
ラウラの大伯母、ヴァスキアの太王太后エドラが、ラウラさえ下がらせる厳重な人払いをした後に、ルトを抱きしめて泣いてくれた。
「さぞつらかったであろう。よう耐えたの」
太王太后エドラ、ヴァスキアの往年の隆盛を支えた賢妃であり、実質上の国王であり続けた女性だ。その名は幼いルトでも知っている。
「太王太后陛下に拝謁いたします」
跪こうとするルトを、太王太后エドラの手が止める。
「よい。傷にさわる」
曾祖母にあたる方だというのに、ルトの記憶にある母より若やいで美しい。銀の髪はラウラと同じ。瞳の色は濃い青で、銀の長いまつ毛が重たげにその上を覆う。
ラウラより深みのある瞳の表情が、いまや奴隷でしかなくなった彼を痛ましげに思いやっていた。
「そなた、落ちのびた後のヴァスキアを知っていやるか?」
首を振ると、さもあろうと太王太后エドラは頷いてあらましを話してくれた。
両親はマラークで揃って殺されたという。あらかじめ密かに国境にしのばせて置いたマラーク軍が、マラーク国王の命令一下ヴァスキアに侵入したのだそうだ。
ヴァスキアの盾ドナウアー辺境伯の獅子奮迅の働きをもってしても防ぎえず、ついにヴァスキア王都は陥落した。
王太子の遺体を土産に携えた宰相ハーケがマラークに投降して、戦は終わった。
今やヴァスキアはマラークの属領だという。
「王太子の身体には、始祖ドライグ様への誓紋の墨がある。ハーケめ、そなたと同じ年頃の遺体に罰当たりなことをしたらしいな」
火傷で醜くひきつれた痕を、太王太后エドラはそっと指で撫でる。
「神官に焼かれたか。さぞ痛かったであろうに」
誓紋の墨は神殿で施される。だから消し去るのも、神官、それも最高位の神官でなくては不可能なのだとか。
確かにあの墨が身体にあれば、どんなに姿を変えようと言い逃れはできない。
「ハーケを恨むでないぞ。あの負け戦の元凶は、そなたの父じゃ。うかうかとマラークの罠にはまり、あろうことか夫婦ともども殺されるなど。間抜けという他ない」
正しいと、幼いルトにもわかる。
宰相ハーケは最後まで国王をあしざまに罵ることはしなかった。冷静沈着を絵に描いたような指示を飛ばして、王城の陥落を防ごうとしていたように見えた。
けれどドナウアー辺境伯討ち死にの凶報には、がくりと膝をついて身体を震わせていた。二人は幼い頃からの親友なのだと、テオバルトに聞いたことがある。
その宰相ハーケが、いきなりなんの説明もなくルトの身体を焼いた。わけがわからなくて混乱して、ハーケは裏切ったのだと思った。最後の最後でハーケはルトを捨てたのだと。
けれど太王太后エドラの言うようにハーケがエカルトの身代わりを立てたなら、身体を焼いた理由はたったひとつだ。
王太子の証を消してルトを落とすためだと、今ならわかる。
そしてそこまでハーケを追い込んだのは、父である国王の無能さだとも。
「宰相閣下は我が父におっしゃいました。必ず殿下を落ち延びさせてヴァスキアを再興させてみせるから、だから許せと。父は笑って頷いて戦場へ向かい……、兄ともども還っては来ませんでした」
絞り出すような声だ。ルトの少し後ろで控えたテオ、テオバルトの肩は、小刻みに震えている。
「私は閣下の命で殿下をお守りし、太王太后陛下のご指示どおりこちらへお連れ申し上げました」
ようやくルトにも、おおよそのことと次第がわかる。
太王太后エドラの庇護下に入ったのだと。
「よいか、エカルト。そなたはこれより王太子であることを隠さねばならぬ。そなたを拾うてきた娘、あのラウラの護衛騎士となってもらおう。そこなテオバルトと共にわたくしの騎士団で鍛えさせる」
ラウラの護衛騎士と聞いて、ルトは自分の置かれた状況を一瞬忘れた。
願ってもない役目だと。
けれどその直後、太王太后エドラの一言がルトを地獄に叩き落した。
「ラウラはマラーク国王の婚約者じゃ。そなたらにはマラークへ共に行ってもらう。しっかり励みや」
婚約者。あの姫の。
目の前が真っ暗になった。
その日の昼間、宰相ハーケに星の読み方を教わって、この季節にはとりわけ美しい星の帯が見られると聞かされたからだ。どうしても見たかった。
今にも地上に降りこぼれそうなほどの星々が、豊かに広々と帯を成していた。今でも目を閉じれば鮮やかに蘇ってくる。
(あの銀色の帯のようだ)
目の前の少女は、流れるように美しい銀色の長い髪をしていた。
透き通るような紫の瞳は、母の宝石箱にあった宝石のよう。
今の惨状を忘れて、ルトは彼女から目が逸らせないでいる。
「口、開けて」
少女が花のように微笑んで、細く白い指で赤くキラキラ輝く何かをひょいとルトの口に放りこんだ。
ふわりと拡がったイチゴの甘い香り。口中の飴のせいだけではない。
少女が側にいるだけで、痛みも惨めさも悔しさも、寂しさ哀しさすべてが消えて、ただ幸せな歓びだけが心に拡がってゆく。
「あまい」
爽やかで甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで思わずこぼした言葉に、少女はもう一度ふわりと微笑んでくれた。
「一緒にくる?」
夢かと思った。
ずっと一緒にいたい。離れたくない。この甘い香りが何よりも恋しくて、泣きたいほどだ。
だから即座に頷いた。
どうか側においてほしいと、願いをこめて。
イチゴの香りの姫ラウラがルトたちを連れて行った先は、ノルリアンの王宮だった。いや正確には離宮。そこが彼女の住まいだという。
「ばば様、あなたたちにはヴァスキア太王太后陛下と言った方がいいのかしら。わたくしの大伯母なの。その方が、ここの女主人よ」
一階の西の端、厨房へ続く別棟に使用人の部屋がある。
その一室にテオとルトを通してくれた。
「ここなら小さいけどバスルームがついてるの」
ルトの火傷を気遣ったのだと気づいて、酷い火傷の痛みをルトは忘れた。どきどきと心臓がうるさくて苦しい。けれど切なくてとても嬉しかった。
後はメイドに任せろと傍の女に言われても、ラウラは首を振って手ずから汚れたルトの手当てをしてくれた。
「火傷がよくなるまでお風呂は我慢してね」
ぬるめのお湯に浸したタオルで丁寧に身体を拭ってくれる。すぐに真っ黒になるタオルを三度取り換えて、また新しいタオルで頭を拭いてくれた。
その間、ルトはカチンと固まったままだ。身動き1つできない。呼吸をしていたかもあやしい。
ラウラの小さな手が触れる箇所が次々と熱くなって、頬に血が上る。それは悪夢の夜に蒼い炎で焼かれた熱さとはまるで違う。知らない熱だ。
熱くて胸が苦しくなって、そして泣きたくなるほど幸せで。
いつまでも触れていてほしいと思う。
「じゃ、次はテオね」
ラウラのサクランボのような唇からテオの名がこぼれた時、胸の奥がじりりと焦げついた。
それがテオであったとしても自分以外の男の名を呼んで、まして触れてなど欲しくない。
幼馴染で学友で命の恩人でもあるテオを、恨めしく思ってしまう。
「自分で拭きます。俺はケガしてませんから」
ルトの様子に気づいたらしいテオがそう言わなければ、どうなっていただろう。
これまで感じたことのない気持ちに、ルトは戸惑い混乱した。
ただ本能が告げてくる。
ラウラは特別な姫だ。なにものにも代えがたい、ただ一人の人だと。
「エカルトよ、よう無事でいやった」
ラウラの大伯母、ヴァスキアの太王太后エドラが、ラウラさえ下がらせる厳重な人払いをした後に、ルトを抱きしめて泣いてくれた。
「さぞつらかったであろう。よう耐えたの」
太王太后エドラ、ヴァスキアの往年の隆盛を支えた賢妃であり、実質上の国王であり続けた女性だ。その名は幼いルトでも知っている。
「太王太后陛下に拝謁いたします」
跪こうとするルトを、太王太后エドラの手が止める。
「よい。傷にさわる」
曾祖母にあたる方だというのに、ルトの記憶にある母より若やいで美しい。銀の髪はラウラと同じ。瞳の色は濃い青で、銀の長いまつ毛が重たげにその上を覆う。
ラウラより深みのある瞳の表情が、いまや奴隷でしかなくなった彼を痛ましげに思いやっていた。
「そなた、落ちのびた後のヴァスキアを知っていやるか?」
首を振ると、さもあろうと太王太后エドラは頷いてあらましを話してくれた。
両親はマラークで揃って殺されたという。あらかじめ密かに国境にしのばせて置いたマラーク軍が、マラーク国王の命令一下ヴァスキアに侵入したのだそうだ。
ヴァスキアの盾ドナウアー辺境伯の獅子奮迅の働きをもってしても防ぎえず、ついにヴァスキア王都は陥落した。
王太子の遺体を土産に携えた宰相ハーケがマラークに投降して、戦は終わった。
今やヴァスキアはマラークの属領だという。
「王太子の身体には、始祖ドライグ様への誓紋の墨がある。ハーケめ、そなたと同じ年頃の遺体に罰当たりなことをしたらしいな」
火傷で醜くひきつれた痕を、太王太后エドラはそっと指で撫でる。
「神官に焼かれたか。さぞ痛かったであろうに」
誓紋の墨は神殿で施される。だから消し去るのも、神官、それも最高位の神官でなくては不可能なのだとか。
確かにあの墨が身体にあれば、どんなに姿を変えようと言い逃れはできない。
「ハーケを恨むでないぞ。あの負け戦の元凶は、そなたの父じゃ。うかうかとマラークの罠にはまり、あろうことか夫婦ともども殺されるなど。間抜けという他ない」
正しいと、幼いルトにもわかる。
宰相ハーケは最後まで国王をあしざまに罵ることはしなかった。冷静沈着を絵に描いたような指示を飛ばして、王城の陥落を防ごうとしていたように見えた。
けれどドナウアー辺境伯討ち死にの凶報には、がくりと膝をついて身体を震わせていた。二人は幼い頃からの親友なのだと、テオバルトに聞いたことがある。
その宰相ハーケが、いきなりなんの説明もなくルトの身体を焼いた。わけがわからなくて混乱して、ハーケは裏切ったのだと思った。最後の最後でハーケはルトを捨てたのだと。
けれど太王太后エドラの言うようにハーケがエカルトの身代わりを立てたなら、身体を焼いた理由はたったひとつだ。
王太子の証を消してルトを落とすためだと、今ならわかる。
そしてそこまでハーケを追い込んだのは、父である国王の無能さだとも。
「宰相閣下は我が父におっしゃいました。必ず殿下を落ち延びさせてヴァスキアを再興させてみせるから、だから許せと。父は笑って頷いて戦場へ向かい……、兄ともども還っては来ませんでした」
絞り出すような声だ。ルトの少し後ろで控えたテオ、テオバルトの肩は、小刻みに震えている。
「私は閣下の命で殿下をお守りし、太王太后陛下のご指示どおりこちらへお連れ申し上げました」
ようやくルトにも、おおよそのことと次第がわかる。
太王太后エドラの庇護下に入ったのだと。
「よいか、エカルト。そなたはこれより王太子であることを隠さねばならぬ。そなたを拾うてきた娘、あのラウラの護衛騎士となってもらおう。そこなテオバルトと共にわたくしの騎士団で鍛えさせる」
ラウラの護衛騎士と聞いて、ルトは自分の置かれた状況を一瞬忘れた。
願ってもない役目だと。
けれどその直後、太王太后エドラの一言がルトを地獄に叩き落した。
「ラウラはマラーク国王の婚約者じゃ。そなたらにはマラークへ共に行ってもらう。しっかり励みや」
婚約者。あの姫の。
目の前が真っ暗になった。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる