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拝み屋

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 中学3年の頃、【カツアゲ】の話同様に駅前の塾に通っていた頃の話を書きます。



 夏休み塾へ夏期講習に通っていた頃塾に自転車を停め、近くのデパートへ文房具を買いに行った。

 文房具はデパート内の3階売場にあり、1階から店内に入り、エスカレーターで3階に上がり文房具を購入した。

 その後、塾に戻ろうと1階に降り、自動ドアから外に出ると太陽の眩しさで視界が青く見え、しばらくぼやけた景色を目を細めて歩いていた。

 突然ハット帽子を深く被り眼鏡をかけた50代ぐらいの女性が近づき声を掛けてきた。
 「すみません。拝ませて下さい。」と言い断る時間を与えられずに手を合掌し、拝み始めてきた。
 (いやいや、意味わからんし、俺生きてるし、なにを拝んでいるのかもわからんしやばい人だ。やばいやばい)と思った。

 顔をよく見るとゲソゲソにやせ細ったおばさんが目を瞑り合掌している姿を見て、【うげぇ。気持ち悪ぃ!!】と思ったと同時に我慢できずに走って逃げた。

 なぜ自分みたいな子供に大人が頭を下げ、合掌して拝んでいるのか不思議であり、異常を感じながらとにかく走って逃げた。

 するとおばさんは「待って!!まだ、拝み終わっていない」と声を荒げて走って追いかけてきた。

 僕は陸上部に所属しており短距離を得意としていた為、おばさんをぶっちぎりどんどん引き離して逃げた。

 走って塾にたどり着き、入口から入る前におばさんがいないか後ろを振り返ると姿はなく【逃げ切った~】とホッとした。

 塾の先生に今起きた事の話をしたが、他の生徒からも同様の話があったらしく、とにかくデパート付近には一人で行かない事と注意をされただけで、警察に連絡する事はなかった。

 しばらく時間が経過し、季節は冬になり高校受験前、最終追い込み冬休み中の【冬季講習】が始まった。

 塾が始まる前に好きなアーティストのCDが欲しかった為、デパートへ行く事にした。デパートの駐輪場へ自転車を止め、自転車の後輪に付いているリングキーをロックし鍵を抜いた。抜いた鍵をポケットに入れ

前を向いた瞬間、

 「拝ませて下さい。」と聞こえ、下を向きハット帽子を深く被った見覚えのあるおばさんが合掌して立っていた。

 (やばい。夏休みに会ってしまったあのおばさんだ。逃げなきゃ!!)

 すぐに逃げようと思ったが、後ろは駐輪場の柵、左右は自転車で囲まれており、目の前はおばさんが拝み下を向いて立っている為、逃げ場が無く拝まれてしまった。

 おばさんは「拝み終わりました。ありがとうございました。」と笑顔で言い、何かをやり遂げたような顔をして立ち去った。

 立ち去り際に小さな声で「続きが出来てよかった」ボソリと言ったのが聞こえた。



 自分には気持ち悪さしか残らず意味を理解できない事と、また解りたくもなく不愉快さのみ残りこの件は終了してしまった。


 拝んで何がよかったのか今となってはわからないが、駐輪場で逃げ場がなく拝まれた事は今でも思い出すだけで恐怖を感じます。
 何を拝んでいたのかも謎だし、抵抗する事が出来ない子供を狙うのは卑怯だと思う。

 ある意味これはおばさんに痴漢されたのだと思っている。



 

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