石集め

早乙女純章

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 毎日毎日ログインハウスに通って、ビンの中を石でいっぱいにすると、新しいビンをもらいました。またその中にためていきました。

「こんなに集まっちゃったんだなぁ」

 ゆうくんはじょうきげんで石がいっぱいまったビンをながめました。

「これだけあるんだから、こっちのビンの石、そろそろ使ってもいいかな」

 ゆうくんはレア度の高いおもちゃがほしくてたまらなくなったのです。自分の家でも、新しいおもちゃが欲しいと思っても、お父さんやお母さんはなかなか買ってはくれません。買ってくれるのは、せいぜい二百円とか三百円とかのおかしのオマケ程度ていどのおもちゃです。

 でも、この石があれば出せるかもしれません。

 他のみんなに負け続けてきたけれど、レア度の高い強いおもちゃを手に入れることができるかもしれません。そうしたらきっとみんなと対戦たいせんさせるのが楽しくなってくるはずです。

 ゆうくんは石のたくさん入ったビンを持って、おじさんのところへ行きました。

「やあ、きみかい。どうしたんだい」

 ゆうくんは、おじさんに持ってきたビンの石を見せました。

「ぼく、これだけたまったから、この中の半分の石を使いたいと思います」

「おや、君もついに石を使うのかい。新しいおもちゃがほしくなったのかい」

「はい」

「ようし、じゃあ、やってみな」

 ゆうくんは、ビンの中に集めた石をはちに入れていきました。水のようにどぼどぼと石が入っていきます。

 あれだけ必死にためてきた石が消えていきます。胸がずきんといたみましたが、新しいおもちゃが出せるというワクワク感の方が勝りました。

「さあて、ほしいものが出るかな、出るかな」

 鉢が銀色ぎんいろに光りました。

 次は金色になってくれるんだ、とゆうくんは強く願いました。金色になればその次のにじにもなれるんだから。

 けれど、鉢は銀のままで大人しくなってしまいました。

「銀で止まっちゃった……」

 思い切ってビンの半分の石を使ったというのに銀色止まりでした。

 出てきたおもちゃも全部持っているものばかりでした。

「うそでしょ……」

 せっかく集めた石を思い切って使ったのに。

 すごくがっかりして、くやしさがわいてきました。このままだと、またみんなからお前のおもちゃは弱いとあきれられてしまいます。対戦で勝てなければ、石を集めるのにも時間がかかってしまいます。使ってしまった分の石もまた集めなおさなければならないのです。

「ま、まだこのビンには使える石があるんだ」

 ゆうくんはビンを顔の前に上げました。

 この石を使えば、今度こそすごいレアのおもちゃが出せるかもしれません。
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