石集め

早乙女純章

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「このきれいな石を見るためには、毎日ちゃんとおじさんの家……えーと、ログインハウスに来なきゃいけないってことだよね」

「そういうことだよ」

 ゆうくんはあらためて家の中を見わたしました。

 ログインハウスにはおもちゃがたくさんあります。人形やロボット、ぬいぐるみ、おもちゃ屋さんに売っていないオリジナルのおもちゃばかりです。

「すごいだろう、どれもみんなわたしが生み出したものなんだ」

「おじさんって何でも作れちゃうんだね。すごいや」

「ほら、あのはちを見てごらん」

 おじさんが指差す日の光にあふれた窓際まどぎわには、銅色にかがやく鉢がいくつも並べてありました。どの鉢からも緑のを出しています。

「あの鉢がすごいんだ。土から芽が出ているだろう」

「うん」

「あの芽が成長すると花を咲かせるんだ。花が開いた瞬間しゅんかんにね、おもちゃが出てくるんだよ。ここにいっぱいあるおもちゃも、みんな花の中から生まれ出てきたんだよ」

「へえ、あの鉢って、おじさんが開発したの?」

「そうだよ。あの鉢からいくつも花を咲かせたから、このハウスにはおもちゃがたくさんあるんだよ。さあ、このハウスにあるおもちゃ、どれで遊んでもいいんだよ」

「じゃあ、どうしようかな」

 ゆうくんはロボットのおもちゃとか、かいじゅうのぬいぐるみを手に取ってみました。

 お店で売られているようなおもちゃではないので、かっこいいと思えるもの、かわいいと思えるものはなかなかありません。そのうえ、似たようなおもちゃがたくさん転がっていて、ほしいと思えるおもちゃがほとんどありません。

 ゆうくんが少し困った顔をしていると、

「まあ残念なことだけど、失敗もよくあってね、同じようなヘンテコなおもちゃがたくさんできてしまうんだよ。まあ、レア度が低いっていうんだけどね」

 おじさんは少しはずかしそうに頭をかきました。白髪しらがまじりのかみがくしゃくしゃと鳴ります。

「発明っていうのは、なんでもうまくいくわけじゃないんだよ」

「むずかしいんだね」とゆうくんは小さくうなずきました。

 探してみると、中にはかっこいいかもと思えるロボットや、かわいいかもと思えるぬいぐるみを発見することができました。

 なんだか、ちょっとした宝探しのような気分になってきました。

「数はあるからね、そんな中から自分のお気に入りを見つけてみれば楽しいよ」

「うん」

「お気に入りを見つけたらね、それを大切にして長く遊ぶんだ。遊べば遊ぶほど、そのおもちゃは成長して進化していくんだ」

「遊ぶと成長して進化するの? おもちゃなのに?」

「そう、そこがわたしの生み出したおもちゃのすごいところなんだよ。ほら、ゲームとかでもキャラクターのレベルが上がっていって強くなっていったりするだろう。それと同じ感じさ。レベルアップというものがあるんだよ」

「じゃあ、最初はそんなにかっこよくなくても、成長して進化すると、かっこよくなってくのかな」

「そう。最初はヘンテコかもしれないけど、進化すると見た目が変わっていくおもちゃだってある。きみが望むように進化させられるかはきみ次第なんだよ」

「そうかぁ。それは楽しみかも」
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