ゆうれいのぼく

早乙女純章

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 ぼくたちは丘の上にあるおはかを見つけた。

 お墓の前には女の人が一人、たおれていた。

「あれはわたしかもしれない」

「そうなの?」

「あのお墓をわたし、知っているの。お参りしていたのよ」

「じゃあ、たおれているあの体に同時に宿ってみよう」

「そんなことできるの?」

「できるよ、ぼくといっしょなら」

 これまでもたくさんのものに宿ってきたぼくだもの。

 ぼくたちは手をつないで、たおれている女の人に近づいていく。

 女の人のおなかは大きくなっていた。ぼくはすぐに分かった。おなかの中にあたらしい命を宿しているんだ。

「ぼくと手をつないでいればできるんだ」

「分かったわ」

 ぼくの体はどんどん小さくなっていってる。これがたぶん他の何かに宿れるさいごなんだ。さいごの力をふりしぼって。

 ぼくたちが宿ると、たおれていた女の人が起き上がった。

「わたし、思い出したわ。もう少しでゆうれいにされそうになっていたのね」

 ここがきみの居場所なんだね。よかった、見つけられて。

 女の人はお墓に向きなおって、「あなた……」とつぶやいた。



 そのお墓は、ぼくのお墓だった。
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